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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ⑤
243/316

243話 王都観光 四

わたし達が中央広場に着いた頃、ちょうど、神官や聖騎士が広場に入ってくる所だった。

やっぱり多くの見物人が集まっている。

大勢の人達が静かに神官や聖騎士を見守っている。

信仰目的なのか、ただの神官や聖騎士のファンなのかはよくわからない。

フィーナは特定の聖騎士のファンだったけど。

両方なのかもしれない。

本日、ここに来るのは二度目だ。

午前中に来た時はこんなに人はいなかった。

神官や聖騎士の行列に近づく。

というより、カールがエヴァンを抜き、前に行こうとするからだ。

わたしは、遠くから見ているだけでもいいように思う。

わたしはつい、きょろきょろと今日もいるんじゃないかと、フィーナを探してしまう。

さすがにフィーナはいないようだ。

まあ、ジェロームもあの行列の中にはいない。わたし達の側にいるから当然だけど。

人を押し分けて前に行く訳にはいかないのか、他の見物人よりは少し後ろから眺めていた。

まるで、テーマパークのパレードを見ているようだ。娯楽の一種なのかもしれない。

今のわたしは聖騎士とかより、この後の事の方が重要だ。

コーディにどう話せばいいのか。

返事は決まっている。でも、どう伝えればいいんだろう。

どうしよう……

ただ、絶対に今日、コーディと話をする。そうしないと、ズルズルと時間が過ぎて、言えなくなりそうだ。明日でいいかと考えてしまう。

頑張れ、わたし!

やればできる!

自分を鼓舞している間に、神官や聖騎士の行列はわたし達の前を通り過ぎていた。

全然、見ていなかった。

まあ、わたしにはどうでもいいから、いいか。

そう考えていると、大きな音がした。何かが崩れるような。

音が反響してどこから聞こえたのかよくわからなかったけど、わたしは何となく聖堂の方を見る。

聖堂の残っていた壁が完全に倒壊していた。

修復中だったようだから、脆くなっていたのかもしれない。

巻き込まれた人がいるのかはここからではわからない。

神官や聖騎士の行列も止まっている。

ただの事故だろうか。そうであってほしい。

何だか、わたしのせいみたいに思えてくる。

何か起こるかもしれないとは思ったけど、本当に起こることを期待していたわけじゃない。

獣のような鳴き声が広場に響き渡った。

風の音というにはちょっと無理がある。

さすがに気のせいとは思えない。

やっぱり獣の声だ。

街の真ん中で。

動物園から逃げたということは、やっぱり、ないんだろう。

セイフォードでの魔獣の事件を思い出す。

そう言えば、少し前に魔獣が増えてることを聞いたところだ。

周りも少しざわざわとし出している。

転移魔法を使えば、魔獣を街の中に出現させることもできる。

聖堂倒壊がただの事故という可能性はかなり低くなった。

「これって……」

「おそらく魔獣でしょう。ここ最近、僕は魔獣退治を行っておりましたから」

コーディはそう言うと、黒い剣を2本、どこからともなく取り出した。闇魔法で作り出されたものだと思う。

「兄様」

コーディは黒い剣の1本をジェロームに渡す。

「魔獣退治なんて、していたのか」

ジェロームは剣を受け取る。

「はい。魔獣は僕が食い止めます。兄様は他の方々をあの聖堂から遠ざけて下さい。ただ、他にも魔獣がいないとは限りません」

「聖騎士に協力させる。コーディ、後で加勢にいく。持ちこたえてくれ」

「わかりました。メイ、僕は魔獣の対処に行きます。ミア、リーナ、メイを頼む」

「いや、私達が行く。国民を護るのも、王国騎士の仕事だ」

エヴァンがコーディに詰め寄る。

「最近の魔獣と戦ったことはないでしょう。これまでのものとは違います。はっきり言って、邪魔です。彼女達の側にいて下さい」

コーディはエヴァンに本当にはっきりと言い放った。

「……わかった。魔獣退治は頼む」

「ですが……私達も戦った方が」

カールはエヴァンに意見する。

「止めておけ。魔獣退治を仕事にしている者の意見が正しいだろう。私はもう何年も魔獣退治はしていない」

「承知致しました」

カールが渋々納得したのを見届け、コーディとジェロームは顔を見合わせ、目的の場所へ向かおうとする。

「コーディ、ジェローム、待って」

わたしは二人を引き留め、身体強化の魔法を掛けた。

すると、二人の持つ黒い剣が光に包まれた。

確かに真っ黒の剣って、どうなんだろうとは思ったけど。

どうしてそうなったかは、わたしにはわからない。

「さすがは聖女様だ」

ジェロームが光に包まれた剣を掲げた。

聖騎士というからには、黒い剣よりは似合うだろう。

「ありがとうございます、メイ」

コーディとジェロームは駆け出した。

今まで、声だけで、姿が見えていなかった魔獣がはっきりと見えた。

見えたと思った矢先、魔獣が魔法を放ってきた。

そう認識したが、何もできない。

魔獣の放った魔法は何かにぶつかり、わたしや周りの人達まで届かなかった。

魔獣はすぐに魔法を使わないんじゃなかったんだろうか。

広場はもちろん騒然となった。

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