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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ⑤
242/316

242話 王都観光 三

わたしは二人の騎士の後をついていくだけだ。

今来た道を辿るように言われても、多分わからない。

大聖堂の前には出ないで、回り込んで中央広場に向かっているんだろう。

割と大きな通りを歩いている。

というより見覚えがある。周りの店とか。

この先で馬車から降りた。迎えが来るのもそこだ。

まだ、迎えが来る時間には早いはずだ。

時間を潰すために、神官と聖騎士を見ているのもいいかもしれない。

迎えが来る場所には馬車はなかった。当然だ。

ただ、代わりに怪しい二人の男がいるだけだ。

寒くもなく、雨も降ってないのに、ベージュのローブを着て、ローブに付いているフードを目深に被っている。

警官に職質されても文句は言えないと思う。

目立ちたいのか目立ちたくないのかよくわからない。

前を行く騎士はどうするつもりなんだろう?

騎士は警察のようなこともするんだろうか?

いや、実は神官の外出着とかだったりするんだろうか?

この国では普通なのかもしれない。

決めつけるのはよくないよね。

そんなことを考えていると、

「メイ!」と名前を呼ばれた。

ローブを着た一人が走って来る。

「コーディ!?」

声でコーディだとすぐにわかる。

どうしてこんな所にいるのかがわからない。

もしかして、もう一人はグレンだろうか。

「メイ、どうして騎士と?」

「道に迷って、案内してもらっていただけです」

隠すことなんて何もない。

道に迷うことは偶にある。

ちゃんと地図があれば、わたしは迷わない。地図がないからだ。

「すみません、コーディ様、ボクがついていたのに」

ミアがぺこりと頭を下げる。

「否、それだけなら構わない。人通りのない裏道には行かないでほしいが」

図星を言われたけど、わたしは顔色を変えない。

「コーディ、浮気じゃなくてよかったな」

もう一人のローブの男がコーディに声を掛ける。

グレンじゃなかった。

「ジェローム、仕事はいいんですか?」

微妙に冷たい声が出る。

「今日は休暇を取った。サボった訳じゃない。ちゃんと任せて来た」

ジェロームはどこか言い訳がましく言う。

「メイ、その、ずっと会えず、申し訳ありません……本日、王都に戻りました。メイに会えるかと思い、ここへは来たのです。兄は勝手についてきました」

「コーディ……」

わたしは何て言えばいいかわからない。急だし。今日、会うと思っていなかったし。

こんな人前であの時の返事なんてできるわけがない。

でも、返事は決まってる。

わたしはコーディと一緒にいたい。

早く帰って、コーディを連れ込んで、二人きりになろう。

馬車が来ないと帰れないけど。

「せっかくなので、中央広場までは案内してもらえますか」

わたしは二人の騎士にお願いした。

案内を頼まなくても、ここからなら行き方はわかるけど。

「勿論です」

カール・ブラウンは即答した。

余程、聖騎士が見たいんだろう。

「中央広場まで何をしに行くのですか?」

コーディが聞いてくる。

「迎えの馬車が来るまで時間があるので、聖騎士を見ようかと思ったんです」

「メイも聖騎士に興味があるのですか?」

コーディはフィーナやメルヴァイナのことを考えているんだろう。

「そう言うわけではないんです。単に暇つぶしです」

「念の為ですが、お知り合いの方々で間違いありませんか? 顔は隠れておりますし、しっかり確認を」

エヴァン・レノルズに言われて、はっとする。少し前にコーディの偽物と会っている。

でも、さっきの会話も偽物のコーディとは全然違う。

「間違いありません。コーディとそのお兄さんのジェロームです」

「あなたはカール・ブラウンですね」

コーディがカールに話しかける。コーディはカールを知っているらしい。

「あれ? どうして、私の名を?」

「騎士学校の同期ですから」

「騎士学校にいたのか? 同期? コーディ? うーん、いや、そんな名前の奴がいたかな? すまない、思い出せない」

「ハハハハ」

ジェロームが笑い声を上げる。

「笑わないで下さい、兄様。友人はおりました。多少、遠巻きにされていた自覚はありましたが……」

「いや、本当にすまない。思い出せなくて、コーディ」

カールは本当に申し訳なさそうな顔をしている。

「まあ、構いません」

「騎士学校でいい友人になれたかもしれないな。私もジェロームと呼び捨てでいい」

「それじゃあ、ジェローム、コーディ、二人は聖騎士に興味がないのか? 私は子供の頃に見て、憧れていたから。聖騎士にはなれなかったが」

カールがジェローム、コーディに向かって言う。ジェロームはそもそも、聖騎士だけど。

「聖騎士って、騎士学校を卒業すれば、誰でもなれるわけじゃないんですか?」

わたしはつい口を挟んでしまった。

「聖騎士の方が募集人数が少ないんだ。成績が上位の者から決まって行くから、人数が埋まってしまえば、募集も終わる」

ジェロームが答えてくれる。

騎士学校を卒業すれば、どちらか好きな方を選んで騎士になるわけでは必ずしもないらしい。

しかも学校の成績でなれるかなれないか決まってしまうのは厳しい。

「私ももう少し頑張れば聖騎士になれたかもしれない。なぜ、あの時、頑張ってなかったんだ……頑張っていれば、今頃……」

「ブラウン、諦めろ。もう少しの頑張りではどうにもならなかった。卒業できただけ、立派だ。では、職務をやり遂げて、素早く戻る」

後悔するカールにエヴァンがぴしゃりと言う。

「ブラウンが申し訳なかった。中央広場へ急ぐ」

エヴァンを先頭に広場へ向かう。

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