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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ⑤
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241話 王都観光 二

「これ以上、来るな! こいつがどうなってもいいのか!?」

ミアにナイフを向ける男はお決まりの台詞を言う。

別で迫っていた足音が止まる。

振り向いて確認すると、立派な装備の男達だった。

王都の警備隊とかだろうか。

わたしが視線をミアに戻した時、ミアがナイフを持つ男の腕を掴んで、投げ飛ばした。

ミアの被っていた帽子が落ちて、犬じゃなくて狼の耳が見える。

「大丈夫。刺されても死なないから」

ミアが笑顔で言う。

確かにわたし達は三人とも刺された程度では死なない。でも、痛い。

ミアにも、リーナにもそんな目に遭ってほしくない。

「行け」

警備隊の一人が掛け声を合図に、警備隊の人達が後の二人も捕らえ、拘束した。

手際が良くて、結構、優秀そうだ。

「怪我はないか?」

掛け声を上げた人がわたし達に話しかけて来た。

わたしは首を横に振る。

「この辺りは残念だが、治安が良くない。女性だけで来るのはおすすめしない」

「すみません。初めて来たので、迷ってしまったんです。あの、大聖堂までどう行けばいいか教えてもらえませんか?」

警備隊なら大聖堂までの行き方を絶対に知っているだろう。

「この辺りは入り組んでいる。レノルズ、ブラウン、彼らが案内する」

「私は第三騎士団所属、エヴァン・レノルズです」

「同じく、カール・ブラウンです」

警備隊じゃなくて、騎士だったらしい。

ウィリアムやアーロと同じく王国騎士だ。

騎士に道を聞いてよかったんだろうか……

「あの、忙しいようでしたら、そこまでしてもらわなくても」

「あの逃げた三人を捕らえれば、私達の役目は終了です。気にされる必要はございません。さあ、早く参りましょう」

カール・ブラウンという騎士が私達を促す。

気にする必要がないという割に急いでいる気がしないでもない。やっぱり忙しいのだろうか。

道がわからないのは事実なので、大人しく二人の騎士の後について行った。

歩幅は合わせてくれているのか、速く感じない。

「メイ、ボク、もっと頼りになるように頑張るよ。今日もちょっと失敗しちゃったんだけど……コーディ様にも頼まれていたのに」

ミアの帽子の中の耳までしゅんとしていそうだ。

「わたしが適当に歩きすぎたから。完全に悪いのはわたしだから」

ここは日本じゃないし、誘拐も起きる。

気を付けないといけない。次こそは絶対に。あらかじめ、予定を立てておくことにしよう。

久しぶりに街を自由に歩けたから、調子に乗ってしまった。

「それより、コーディに会ったの? わたしは何日も会ってないんだけど」

「ボクも何日も会ってないよ。頼まれたのはもっと前だから」

「そうなんだ……ちょっとくらい顔を出してくれてもいいよね。仕事なのはわかるけど」

「ボクもそう思うよ。帰れるはずなのに。コーディ様はメイから逃げてるだけだよ。本当に意気地なし」

「確かに! ヘタレ! 結婚を申し込んでいなくなるってどういうこと?」

答えを言ってないわたしも悪いとは思うけど。

何日も放置って……それはないと思う。

コーディは転移魔法も使える。簡単に転移できるはずだ。

怒りたくもなる。

「え!? コーディ様に結婚を申し込まれたの!?」

「うん。まだ、答えは言えてないけど」

「それでコーディ様は逃げてるの?」

「それは、わからないけど……」

「本当に意気地なし」

ミアに二回も言われている。

「いや、さすがに言い過ぎだろう」

カール・ブラウンという騎士が口を出してきた。

彼らがいるのを忘れていた。しかも、彼らは騎士だ。

「私は平民上がりだから、気を遣うことはない」

「騎士にはどうすればなれるんですか? コーディも目指していましたから」

「知り合いに騎士がいれば、その騎士に付いて見習いになることもできるが、今時、見習いにしてくれるような騎士がいない。今はほとんどが騎士学校に行くことになる。騎士学校に入る為には試験を突破しないといけない。これが難関なんだ。私はぎりぎりで合格した」

「じゃあ、騎士になれるのはすごいんですね。騎士学校は卒業も難しいと聞きました」

「ああ、そうだな。それより、そのコーディとは結婚するのか? どういう男なんだ? 大丈夫なのか?」

「結婚するかはわかりません。コーディはお金持ちのお坊ちゃんで末っ子だけど、すごく優しいです」

「想像できる気がするな。優しいのはいいが、末っ子なら家は継げないな」

「そうですが、それは問題ありません。わたしの所に来ることもできますし」

カールと話していると、もう一人の騎士、エヴァン・レノルズがカールの肩をがしっと掴んだ。

「ブラウン、いつまで学生の気分でいるつもりだ」

「申し訳ありません」

エヴァン・レノルズの方が先輩なんだろう。カールは素直に謝る。

気付けば、大聖堂が見えている。周りに人も歩いている。

「大聖堂はすぐそこです」

エヴァンが言う。

「ただ、今の時間は大聖堂の前には行けませんよ。女神への礼拝の時間が近いですから。中央広場までお送りしましょうか」

カールがそんなことを言うが、わたしには何のことかよくわからない。

通行止めとか立ち入り禁止になるんだろうか。

ミアに視線を送っても、ミアは小首を傾げるだけだ。

リーナに視線を送ると、

「大聖堂から先ほど訪れた聖堂へ神官長様が礼拝に赴かれます。その為、本日のその時間は大聖堂に近づけないのです」

そう答えてくれた。

それって、ロイやフィーナと見た神官や聖騎士の行列のことだろうか?

ジェロームに聞けば詳しそうだ。ジェロームは聖騎士だし。

「あの聖堂に入って大丈夫なの? 入口の辺り、かなり壊れていたけど」

「はい、おそらく」

関係ないことをリーナと話してしまっていた。

「騎士として自覚を持て。清廉の聖騎士を見たいから言っているだけだろう?」

「あ、いえ、そのようなことは……申し訳ありません」

エヴァンがまた、カールを叱っている。

「中央広場までお願いできますか。そこなら、よく知っています」

わたしは忖度することにした。

要はカールはフィーナと同じく聖騎士が見たいということなんだろう。

聖騎士はかなり人気があるらしい。王国騎士にまで。

大聖堂の近くに迎えが来てくれるそうだけど、まだ、時間があるし。

それに中央広場と大聖堂は近い。さすがに数分では着かないけど。

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