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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ⑤
239/316

239話 国王と会う 三

仮面は外し、息を吐く。

「あの、癒しの聖女って?」

「勿論、メイさまのことでしょう」

予想通りの答えがメルヴァイナから返って来る。

セイフォードでは癒しの聖女の噂は広まっていた。

ただ、王都ではそんな噂は一切、聞かない。

国王も知らないみたいだった。

セイフォードはここからかなり遠いらしいし、電話もないからそんなものなのかもしれない。

わたしには遠い実感はないけど。転移魔法なら、一瞬だから。

「気になるのは、国王が癒しの聖女を知らないことか? それとも、誰かを特定させない言い方をしたことか?」

ライナスがわたしに質問してくる。

「両方です」

「国王、それに王都の者が知らないのは、魔王国が止めているからだ。あの言い方も伯父上の判断だ」

「嫌がらせ、ですか?」

前にメルヴァイナがシンリー村跡地の大穴は嫌がらせだと言っていた。

「そんなはずがないだろう」

「あら、そう? 宰相さまから理由を聞いた訳じゃないんでしょう? それなら、そういうこともあるかもしれないじゃない。理由の1つかもしれないじゃない?」

「そうだな、理由の1つかもしれない。国王はこちらの要求通りに引き渡す考えだそうだ。ただ、すぐには引き渡せない」

ライナスはメルヴァイナに反論はしなかった。

「癒しの聖女が誰かわからないから」

まあ、誰が考えてもそう考えるだろうということを口にした。

「ああ。それに、二人の公爵が渋っている。ウォストデール公爵とドレイトン公爵だ」

ウォストデール公爵って、どこかで聞いた気がする。

どこで誰に聞いたのかは思い出せない。多分、魔王国関係だ。

「ウォストデール公爵は魔王国の関係者ですか?」

「魔王国の者ではない。ただ、協力者のようなものだ。私と面識はない」

ライナスにしては親切に教えてくれる。

これもわたしが知っておく必要があるということなんだろう。

「わかっていると思うが、王国の者の前で治癒魔法はみだりに使うな」

まあ、知っているのは、フォレストレイ侯爵家の人達とロイとフィーナと王太子ぐらいだ。

……王子は皆、わたしが治癒魔法使えるって知ってるけど……大丈夫だろうか……特に、王太子……

「王太子は知ってますけど、大丈夫でしょうか」

「あそこにいた王太子は偽物だ」

偽物……確かにやけに立派に見えた。

もしかして、偽物が国王になるのだろうか。

「あの偽王太子にはしっかりと王子としての役目を果たしてもらう」

やっぱり、そうなのか。

じゃあ、本物の王太子は、一体どうしているんだろう?

も、もしかして……消された?

「本物の王太子はいないので、ご安心ください、メイさま」

メルヴァイナがわたしに微笑みかける。

え? 王太子はもういないから安心ってこと?

微笑みが怖い。怖くて聞けない。

「そ、そう言えば、どうして、ドレイトン公爵も渋ってるんですか?」

「それは、よくわからないんですよ。特に協力者でもありませんし。想定外の行動を取られると困りますよね」

「そうですね、メル姉」

「もう俺は戻っていいか。こんな茶番に付き合わされた俺の気にもなれよ。これだけの為に呼び出されて。俺がいなくてもよかったしな」

不機嫌な顔のティムが不機嫌そうな口調で言う。

「ティ~ム~、これも仕事でしょう? いつまでも子供なんだからぁ」

メルヴァイナががばっとティムを抱き込んだ。

ティムはしっかりホールドされて逃れられないでいる。

いつかも見た光景だ。

わたしはちょっと後ろに下がった。巻き込まれないように。

「メイさま、メイさまには本当に申し訳ございませんが、ライナスと馬車でお戻り下さい」

「メイ様、お気をつけて。フォレストレイ侯爵家でお待ちしております」

リーナが可愛く微笑んでくれる。

姉のメルヴァイナの微笑みとは全然違う。

何だか頑張れそうだ。

わたしは馬車で来たから馬車で帰らないといけない。

あの悪い意味での静寂の馬車で。

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