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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ⑤
235/316

235話 宰相への依頼

わたしは王城にいた。次に来るのは国王の誕生祭の日だと思っていた。

侯爵夫人とのお茶会の翌日。

なぜかというと、コーディが王城に呼ばれたからだ。

だからと言って、わたしが行く必要は全くない。

わたしは呼ばれていない。

それに、そもそもコーディ本人がいない。

今回は忍び込んだ訳ではなく、堂々と馬車で正面から来た。

その為にドレスを着ないといけなかった。

この国で流行しているというドレスで重くて歩きにくい。

せめて落ち着いた色にしてほしいと、ドレスは深緑になった。ただ、フリルは多い。

マナーを勉強し始めて日が浅すぎて、全然できていないと自分でも思う。

顔はヴェールで覆っている。

それでも、緊張で落ち着かない。

この展開はやっぱり、わたしのせい、なんだろう。


3日前に、わたし達の計画を宰相に伝えた。

わたしは一時的に魔王国に戻っていた。

王国に来て何もできていない今、一時的でも戻ることは躊躇ったけど、わたしから言うべきだと思う。

わたしは転移魔法が使えないし、イネスもミアもグレンも転移魔法は使えても、魔王国には転移できないらしい。

なので、メルヴァイナとライナスに協力してもらうしかない。

王城での出来事は二人も知っている。

わたしがお願いすると、愉快そうに顔を輝かせて、メルヴァイナは協力すると即答した。

ちなみにライナスはやっぱり微妙な顔をしていた。

ということで、メルヴァイナとライナスと共に魔王国に戻ったというわけだ。

今回は宰相の執務室ではなく、ソファとテーブルの置かれた豪華な部屋だ。夜だけど、煌々と明るい。

メルヴァイナとライナスは部屋の外で待っている。

わたしは王国にわたし達を含めてコーディを引き渡すように要求したいと話した。

「これまで、魔王国が王国に公式に接触したことはございません。そもそも、王国ではこちら側に国があるという認識もないでしょう」

宰相は丁寧な口調で言う。

「王国に信じてもらえないということですか?」

「平和的に使者を立てたとしても追い返されることでしょう」

「魔王だと信じてもらわないといけないんですね」

魔王の力を誇示するとか? でも、わたしは強くない。

「死んだことにした方がよろしいでしょう。他の王族もまた、死んでいるのですから」

確かにその通りだ。マデレーンやエリオットのように死んだことにすることはできるだろう。

でも、嘘でも死んだことにするのは抵抗がある。

ミアはまだ、家族に会えていないそうだし。他にも色々、まだ、王国ですることがある。

「それでも――」

「覚悟はございますか? 王国の言う魔王となることへの覚悟でございます」

王国での魔王の評判は悪逆非道だ。

「それは恐怖を味わわせるということですか?」

魔王国がしようと思えば、王国を滅ぼせる。

安易に言うべきことじゃなかった。

わたしはめちゃくちゃ怖気づいた。

「何も王国の者を殺すわけではございません。手段はいくらでもございます。勿論、お望みでしたら、都市の一つや二つ消しても差し支えございません」

「いえ、そんなことは望んでいません!」

わたしはすぐに否定した。そんなことをされては本当の悪逆な魔王になる。

「それに、これはまだ先の話です。まだ、その、フォレストレイ侯爵とほとんど会えていません」

「いいえ、十分でございます、魔王様。フォレストレイ侯爵家の方々とは親しくなられたご様子、お伺いしております。それに、もし、私の弟が黒幕であれば、魔王国が動けば、必然と向こうも動かざるを得ません」

そこで、宰相は礼をする。

「私にお任せいただけませんか、魔王様。最善の結果となるよう力を尽くしましょう」

わたしには選択肢はない。宰相に任せるしかない。

下手にわたしが何かすると、どうなるかわからない。

無関係な人達を巻き込んでしまうかもしれない。

「お願いします」

「承知致しました、魔王様」

「あの、聞きたいことがあるんです。その……コーディを……王配にすることはできるんですか? その、まだ、決まったわけじゃなくて、もしもの話なんですが」

「魔王様が望まれるのでしたら、如何様にも」

「わかりました。ありがとうございます」

宰相と話が付き、わたしは王国へと戻って、早々に寝た。

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