表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ④
231/318

231話 揺らぐ決意と魔獣退治

宿の自分に割り当てられた部屋の前。

今日一日、新たな仕事のことを考えて過ごしていた。

このままでいい訳がない。

メイに結婚を申し込んだ。

ただ……答えは聞くことができていない。

僕は王都の自室に転移した。

昨日のことが思い出される。

メイに会って、はっきりさせたい。

このままでは夢で終わってしまいそうだ。

夜に訪ねるというのは非常識ではあるが……

メイの部屋は知っている。おそらく、そこにいるだろう。

僕はメイの部屋へと向かう。

「帰ってきたのね。ルカお兄さまの仕事を手伝うと聞いていたけど」

「お前も大変だな。ヴァンパイアは軽くあしらえ」

背後から声を掛けてきたのはメルヴァイナとライナスだ。

今の今まで背後に気配はなかったはずだ。

こういう所でも、まだまだ彼らに及ばないのだと実感する。

ただ、今はそのことは置いておく。

「メイはいますか?」

「メイさまならご自分のお部屋にいらっしゃるわよ。でも、今から行くべきではないわ。それぐらいのこと、わかってるはずでしょう?」

わかった上で来ている。

「承知しています。それでも、メイに会わせてもらえませんか」

「許可してあげたいけど、だめよ。勘違いしているかもしれないから、言うわ。メイとの婚約は実際にする訳ではないのよ。婚約者のふりでいいの。暴走しないでね」

婚約者のふり……

あれは、婚約者のふりをする為だったのか?

いや、それはない、はず……

決意が揺らぐ。

僕はどうかしている。

メルヴァイナの言うように、暴走しているのかもしれない。

正確な判断ができなくなっている。

僕はメイを抱き締めてキスをしてしまった。

メイに嫌悪されたかもしれない。

イネスとミアからの罵倒は正しかったのかもしれない。

メイに酷いことをしてしまった。

今、メルヴァイナとライナスが立ち塞がるのは、メイが僕に会いたくないと拒んでいるのか。

血の気が引く。

「部屋に戻って、寝るといいわ」

「わかりました」

僕は無意識に近い状態で、宿の部屋に戻った。


それから、5日が過ぎた。

その間、一度も王都には戻っていない。

王太子の周辺はどうなっているのか気になる。

王太子が不在ということは知られているのか。

町では王太子が行方不明だというような噂は聞かない。

今回の目的は、王太子を王都から遠ざけることではないか?

今、王都にいる王位継承権も持つ王族は第7王子のレックスだけだ。

後は全員、死んでいるか、ここにいるかのどちらかだ。

とは言っても、魔獣退治も嘘ではないだろう。僕達の訓練という意味合いもあるかもしれない。

王太子もエリオット、マデレーンも魔獣退治において、様にはなってきた。

勿論、剣術の腕が上がった訳ではない。闇魔法は中級習得中だ。戦いの中での上級の闇魔法の習得は無理だった。

森の中で幾度か、魔獣に遭遇した。

頻度としては確かに多すぎる。

町の人に危害が及びかねない。

この日も、森の中で魔獣を探索中だった。

昨日から天気が悪い。降ってくる雨にマデレーンが文句を言っている。

普段は口を出してこないアーリンが僕達に近づいてきた。

「町に戻りましょう。町に続く街道で魔獣が出たようです」

アーリンの言葉で即座に町の近くに転移する。

魔獣はすぐに見つかった。

町の入口の目と鼻の先だ。

町の警備隊と魔獣退治人が既に対峙していた。

服装が違うのですぐにわかる。

町の近くの後方に警備隊三人、実際に戦っているのは、魔獣退治人の六人だ。その内の三人は獣人。

これまでの魔獣ならば、十分な戦力だ。

だが、今は苦戦を強いられている。

魔獣は2頭。四足歩行の肉食獣型。僕達が森で戦った魔獣より一回り大きい。

丁度、戦っていた二人が魔獣に弾き飛ばされる。

魔獣の内の1頭が魔法を使おうとしている。

魔獣は魔法を放つまでに時間を要する。なので、それまでに決着をつけるのが普通だ。

ただ、今の魔獣は魔法を使わなくても脅威だ。

「これは私達の出番だな!」

王太子は言うや否や、飛び出した。

僕がアーリンに目を向けると、彼は軽く頭を下げる。よろしくとでも言うように。

王太子を放っては置けない。

エリオット、マデレーンに視線を送ると、王太子を追った。エリオット、マデレーンも僕について来る。

王太子は躊躇いなく、魔獣目掛けて大剣を振るう。

僕はそれを闇魔法で支援する。

王太子の大剣は勢いと重量を得て、魔獣に傷を負わせる。

傍から見ると、魔法を使っているとは気付かないだろう。

それにより、魔獣の魔法を阻止する。

そこへ僕達三人も加わる。

魔獣は多少大きいが、戦い方は同じだ。

ただ、唯一、違うのは闇魔法を大っぴらに使えないことだ。

魔獣を倒した時には、返り血と跳ねた泥で酷い姿になった。

他の魔獣退治人も泥だらけだった。

「助かった」

獣人の一人が僕達に言う。

倒れた二人は助け起こされていて、意識もあるようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ