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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ④
228/316

228話 王太子の実力

嫌な予感はしていたので、受け入れるしかない。

ただ、初級からまともに習得していない僕が全く闇魔法の使えない状態の王太子に教えることは可能なのか。

王太子に再生能力があるのかもわからない。

万が一、何かあった時のことを考える。

「そう、不安になることはありません。私は用があるので付き添うことはできませんが、アーリンを補助につけます」

ルカ・メレディスは僕に丁寧な口調で言う。

今は、僕をこの国の王子として接しているということだ。魔獣退治は王子の仕事ではないが。

どうしてこうなっているのか?

「私もそれぐらいのこと、すぐにできるだろう。早く教えるといい。魔獣など、すぐに倒してやろう」

王太子が片腕を腰に当て、僕を見据える。

僕は王太子とは全く関わってこなかった。

なので、その実力は全くわからない。

実は剣術や魔法はかなりの腕なのだろうか。

「王太子殿下もあのようにおっしゃっています。あなた方でしたら、全く問題ございません。私はこれにて、失礼致します」

そう言い残し、ルカ・メレディスは早々にいなくなってしまった。

僕はアーリンに視線を向ける。

アーリンはただ無言で頭を下げてくる。

僕がしなければならないかと思ったが、

「ええ、これくらい簡単ですわ。このように、できると思えばできるのですわ」

マデレーンは両手の手のひらを上に向け、手のひらの上に小さく黒い霧を発生させる。

「なるほど」

王太子が同じように手のひらを上に向ける。

すぐに消えてしまったが、そこに微かに黒いものが見えた。

確かに闇魔法だ。

ということは、王太子は普通の人間ではないということだ。

「素晴らしいですわ」

マデレーンが手放しで王太子を褒めている。

魔王国はこの王太子を国王にするつもりはないのかもしれない。

殺されていないだけましだ。

現状、魔王国の庇護下にはあるのだろう。

ルカ・メレディスは王太子に何と言ってここに誘ったのか。

それから程なく、王太子は初級の闇魔法を習得した。意外と筋がいい。

「さすがですわ、セルウィンお兄様!」

「これほど早く習得できるなんて、さすがです! 私はもっと時間が掛かりました」

森の中、騒ぐ声が響いている。

後の問題は攻撃手段だ。

闇魔法で攻撃するのはどの段階なのだろうか。

「早速、魔獣を退治しに行くか」

すっかり煽てられた王太子が張り切った様子で森の奥に向おうとする。

「お待ちください。攻撃は――」

僕は慌てて引き留めに掛かる。

「何を言っている。この闇魔法を使い、この剣で斬り捨てる」

王太子の言っていることは正しくはある。本当に剣で斬れたなら。

いきなり、魔獣相手に実戦ということになる。

かなり危うい。

アーリンは少し離れ、傍観しているのみだ。

せめて、それぞれの実力は把握しておきたい。

「僕はそのような戦い方には不慣れです。最近、戦う機会もありませんでした。わずかな時間で構いませんので訓練をさせていただけませんか?」

「仕方ない」

「有難く存じます」

王太子の了承をもらうと、僕はまず、エリオットに狙いを定める。

「エリオットお兄様、相手をしていただけませんか?」

王子なら、自衛も兼ねて、多少は剣術を学んでいるだろうとは思う。

「いや、私は争いを好まないのでね……」

これから、魔獣退治だというのにそのようなことを言われても困る。

「争いではなく、体が鈍っておりますので、体を動かしたいだけなのですが」

「それなら、私が相手になろう」

王太子が大剣を構える。

大剣はかなりの重さがありそうだが、王太子はよろめいたりしていない。

むしろ、軽々と持っている。

王太子の体型ではそんなことはありえない。

大剣は見た目に反して、重量がないということだろう。

僕は王太子と剣を合わせる。

やはり、王太子の剣に重さはない。

剣を打ち合うが、王太子の実力はそこそこだった。初心者ではないが、騎士になれるほどの実力もない。

実力を隠しているとは思えない。

はっきり言って、魔獣を相手にできる実力はない。

エリオットも似たようなものだろう。

鍛えている体ではない。

剣主体の戦い方は厳しいだろう。

「先ほどの魔法が初級とのことですが、それ以上はどういった魔法なのかご存じでしょうか?」

答えてくれそうなマデレーンに向けて言う。

「勿論、伺っておりますわ、フィニアス。中級で静止する物体が作れますわ。そして、上級ともなると、その物体を操れますのよ。さらに、その上もあるそうですが、習得が困難な上に使いどころが限られるとのことで教えていただけませんでしたわ」

マデレーンの話によれば、遠距離攻撃となると、上級ということになる。

短期間で上級……僕達もできたのだから、できなくはない。

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