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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ③
225/317

225話 わたしの婚約者?

「実は、先ほど――」

コーディはさっきあった話を彼らにした。

はぐらかすのにちょうどよかったのかもしれない。

さっきというのは、もちろん、わたしとのキスの話ではなく、王太子への襲撃と王太子のわたしへの求婚の話だ。

「だから、コーディに婚約者になってもらうつもりなんです」

わたしがそう付け足した。

付け足しておいてなんだけど、実際にはコーディとそんな話はしていない。

コーディに否定はされなかった。

「そういうことなら、わかったわ」

多少、疑問に思ってそうだけど、イネスは一応、納得してくれた。

「メイ、王太子様って、どんな人?」

ミアが興味津々で聞いてくる。

「えーっと、コーディと同じ緑の瞳で、見た目はすごくよかったよ。でも、怪我を治したのは事実だけど、わたしのことを女神なんて言う人は、信じられない」

「そうかな? ボクも怪我を治してもらってうれしかったよ。聖女で女神かと思うぐらい」

「ありがとう。ミアに言われるとうれしい」

「ルカ・メレディスもその場にはいたのよね。何も言われなかった?」

イネスが心配そうに聞いてくる。

おそらく、王太子と結婚するように言われたりしていないかということなんだろう。

「特には何も言われていません」

「そう……」

「大丈夫です。わたしが魔王だと言うなら、それを利用します」

「必要なら言って。協力するわ」

イネスの口調はやっぱり単調だ。

でも、なんだか、前の関係に戻ったような気がする。

気のせいでも、わたしの勘違いでも、ちょっとうれしかった。

「メイ、ただ、気を付けて。男の私室に一人で入るなんて。しかも、下心がある男の。コーディはメイが嫌がることはしないと思うけど、さっきは考えが揺らいだわ」

イネスにも注意されてしまった。

むしろ、襲ったのはわたしだけど。

「すみません。どうしても二人で話したくて」

「メイとコーディは婚約しているということにしておけばいいのね」

「調べれば、正式に婚約してないことがバレるだろ」

グレンに鼻で笑われる。

「まだ、内々での婚約だと言うことにしておくしかないかしら」

「メイとコーディは愛し合ってるから、メイは王太子様と結婚できないということでいいとボクは思います」

「まあ、王太子がそれで納得するなら、いいのだけど」

皆に色々言われている。

「それは、わたしが何とかします……」

ひとまず、その話はもう十分だ。

わたしが耐えられそうにない。色々、恥ずかしすぎて。

「どうせ、何も考えてないだろう。考えているなら、具体的な計画は?」

グレンからの指摘は図星だ。何も考えてない。ノープランだ。

「魔王がコーディを魔王国に連れ去ればいいと思います」

とっさに適当なことを言った。

グレンがわたしを睨んでくる。考えてなかったのがバレてそうだ。

「……確かに、悪い話じゃない。魔王が治癒術師のメイとフィニアス王子を要求する。それに、俺も。王国の滞在が難しくなるが、変装するなり何とでもなる」

グレンに怒られるかと思ったが、逆にわたしの言葉を肯定した。

「それなら、ボク達みんな、連れ去ってよ、メイ」

ミアはきらきらな笑顔で言う。

イネスはわたしを見ると頷いてみせる。

「本当にそれでいいなら、宰相に話してみます。本当にいいんですか? 宰相に駄目だと言われるかもしれませんが」

「そうしてくれ。コーディ、お前もそれでいいな」

グレンは相変わらず、不愛想だ。でも、大分、温厚になったような気がする。

「勿論です、メイ」

「それなら、婚約についても誤魔化せそうね。魔王からの要求の話題の方が大きくなるもの。婚約の話も出なくなるわ。だから、婚約者のふりをする必要もなくなるわ」

イネスはそう言うけど……

コーディにプロポーズされたけど、わたし、何て答えた? あれ? 答えてない?

わたしとコーディは今、どういう関係なんだろう?

恋人? 付き合ってる?

すごく曖昧だ。

だから、イネスにも婚約者のふりとか言われるし、それに言い返せない。

すごくもやもやする。

コーディの正式な婚約者になれば、何か変わるんだろうか?

それに、少し落ち着くと、本当にそうなっていいのかと思う。もし、元の世界に帰る方法が見つかった時にどうするのか。

コーディに別の世界から来たことを言った方がいいんだろうか。

「フィニアス、伝言がありますの」

悩んでいるわたしの耳に良く響く女性の声が聞こえてきた。

幻聴ではなく、開いたままのドアの向こうにマデレーンとエリオットが立っていた。

そう言えば、王城には一緒に行っていた。どこからいなかったのか、定かじゃない。王太子に会った時にはいなかったと思う。

「生きていたのですか」

コーディが落ち着いた口調で言う。

コーディは二人が生きていることをまだ知らなかったんだろう。それなのに、特に感慨などはなさそうだ。

「ええ、死にませんでしたわ」

マデレーンはなぜか胸を張って言う。

「それで、伝言とは?」

「ルカ・メレディス様からの伝言ですわ。明日、フィニアス、あなたと私とエリオットお兄様でとある場所に参りますわ」

「とある場所というのは?」

コーディはそう聞くが、答えてくれるのだろうかと思う。

「王都の東にある町の近くの森だそうですわ」

「森に?」

「ええ、そうですわ。森ですわ。なぜ、そのような場所に行くのかはわかりませんわ」

コーディとマデレーンの二人だけで会話が進む。

コーディは明日も忙しいらしい。

「明日、迎えがくるそうですわ。それでは、明日会いましょう」

マデレーンと穏やかな笑顔のエリオットは去って行った。どこに行ったかは謎だけど。

その後、わたしは、というと、イネスとミアと一緒にいた。

コーディと二人で話す時間は取れなかった。

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