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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ③
221/317

221話 王城の死体 二

死体は王太子の目の前に落ちる。

まさに衝撃的だった。

ぶつかってはいないから王太子に怪我はないだろう。

王太子は足を止め、全く動かず、死体を見つめていた。

護衛の人達が慌てて、王太子を下がらせ、警戒する。

彼らはわたし達の方にも視線を向けたが、わたし達に気付く様子はない。

「何の反応もないようです」

ルカは何でもないように言う。死体を投げ落としたのは、間違いなくルカだ。

全く知らない人でも投げ落とすのはあんまりだと思う。酷いと思う。死者の冒涜だと思う。

さすがに何の理由もなくしたわけではなさそうだ。

でも、あんまりだと思う。

「王太子殿下」

聞き覚えのある声が響く。コーディの声だ。

コーディは王太子に駆け寄る。コーディの後ろには知らない男がいる。

「何があったのですか」

コーディは死体のある方を見る。

コーディは落ち着いているように見える。

死体に気付かないわけはないだろう。

さらに、コーディはわたし達のいる方にも視線を向ける。

コーディと目が合った。

わたし達のことはすでに気付いていたようだ。

コーディにわたし達が関わっていると知られた。軽蔑されたかもしれない。

色々、衝撃的なことがあっても、コーディに嫌われる方がいやだ。

王太子は護衛に連れられて、建物の中に入っていったようだ。

死体には誰かの上着が被せられているが、そのまま置かれている。

コーディは王太子に付き添って行ってしまった。

「もう、ここに用はありません。ここにも調査が入るでしょうから、戻りましょうか。ああ、その前に、コーディとアーリンを回収しなくては」

ルカはバルコニーから部屋の中へと入っていく。

わたしはまた、メルヴァイナに抱き上げられ、いつの間にか部屋の中にいた。

やっぱり、わたしはかなりのお荷物である。

わたしがいなければ、もっと楽に仕事ができるのかもしれない。

ただ、彼らのやり方も強引だ。

わたしにどうにかできるかはわからないけど、犠牲者は少ない方がいい。

魔王国が裏でどう動いているのか、わたしは全く知らない。

それでいいのかと思う。

わたしは魔王、魔王国の王のはずなのに。

魔王国がこの王国をどうしたいのか。

何も知らない。

魔王国にとって、わたしは単なる発電機。それでも発電機は大事だから、護っている。

だからこそ、わたしも魔王国を利用しようと思った。

わたしにはそれも思うようにできていない。

魔王国の裏をかくとか、すごい策略は凡人のわたしにはできない。

それでも、わたしにもできることをやっていくしかない。

わたし達はルカに案内され、部屋を離れた。

「メイ様、せっかくですから、挨拶をしていきましょうか」

ルカはわたしに声を掛けて来た。

誰に挨拶するというのだろうか?

もちろん、わたしには嫌な予感しかしていない。

多分、王太子に挨拶するのだ。

「わたし達が疑われませんか?」

「心配には及びません。逆方向に移動致しますから」

「わたしは挨拶のマナーを知りません」

「気にされる必要はありません。女性には優しい方ですから」

多分、断ることはできたと思う。

ただ、こんなことを思うのはなんだけど、会うのが王太子なら、利用価値があると思う。

何に必要かはわからないけど。

わたしは大人しくルカに従った。

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