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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ③
219/316

219話 王城に行きたいわたし

「あなた達はルカお兄さまに引き渡すわ。その実力ではしばらく王城には行かない方がいいわね」

メルヴァイナがマデレーンとエリオットに向き直って言う。

「そのようですわね。ところで、ジャンお兄様を殺す理由は何でしょう。私はお兄様が本当に殺されるとは思っておりませんでしたわ」

「わからないわ。王族に恨みでもあるんじゃないの? あなた達にはもう、関係のないことでしょう」

「確かに、もう、関係ありませんわね。王女の私は死んだことになってしまいましたから。ジャンお兄様のことも悲しむ程、親しかった訳ではありませんもの。ルカ・メレディス様の元に戻りますわ」

「君も気を付けて」

エリオットがわたしに声を掛けて、マデレーンと共に去っていく。

「寄り道をしてしまい、申し訳ございません。フォレストレイ侯爵邸に帰りましょう」

「コーディは王城から帰っているんですか?」

「まだだと思いますよ」

コーディは大丈夫だろうか。

コーディは強いし、再生能力もあるけど。同行者は頼りなさそうなアーリンっていう男だ。

「メル姉。メル姉はわたしを送った後、王城に行くつもりなんですか?」

わたしがいても足手纏いなのはわかってる。

「そう、ですね……第3王子のことは気になります。ルカお兄さまにはあの二人から伝わりますので、ルカお兄さまも動くと思いますし。不本意ですが、ライナスも連れて行きます」

「……その、第3王子ではない方の人は人間なんですか?」

引き延ばすように、メルヴァイナと会話を続ける。

このまま、わたしだけ帰る?

でも、わたしがいても、役に立たない。

むしろ、死なないにしても、痛い思いをするかもしれない。

「おそらく、ただの人間だと思います。詳しく調べないと断定はできませんが」

「そ、そうなんですね………………それで、あの、セイフォードの神官長は無関係なんですか? 何か、神官長が独自に調べているとか」

わたしは侯爵邸に帰るべきなんだろうか。

もちろん、メルヴァイナへの質問は知りたいことではあるけど、判断を先延ばしにしたいだけだ。

「申し訳ありませんが、私は知りません。彼とは数回、情報のやり取りをしたぐらいなのです。指揮命令系統が異なりますので、ほとんど関わりがないのです」

神官長が何をしているのかは一切、わからないということだ。宰相に聞けば、教えてもらえるのかもしれない。

「宰相に聞いて、他の情報も合わせた方がいいんじゃないですか」

「……そう、ですね……」

メルヴァイナはどうも歯切れの悪い返事をする。

種族が違うから、色々あるのかもしれない。

そもそも、わたしの護衛が主な仕事だからなのかもしれない。それはメルヴァイナのしたいことではないのかもしれない。

「魔王国にはしばらく戻らないんでした。それで、えーっと――」

「メイさま、フォレストレイ侯爵邸に帰りたくないのですか?」

次の質問を探している時、メルヴァイナに核心を突かれた。

「えーと、その……」

メルヴァイナにはバレていた。

わたしは帰るか帰らないか迷っていた。

ただ、その割合は帰らないという方が高い。

帰りたくないから迷っていたのだ。

一人、除け者になるのが嫌だとか、コーディがいるからとか、帰る決断ができない。

「わたしがいた方が、囮というか、あの聖騎士も現れるかもしれません……だから……」

「わかりました。確かにメイさま一人にしておく方がリスクがあります。ひとまず、ライナスを呼びます」

メルヴァイナがわたしに言った直後、

「メル、まだここにいたのかい?」

ルカの声が聞こえて来た。

ルカが姿を見せ、その後ろにマデレーンとエリオットもいた。少し遅れて、ライナスもやってきた。

「もしかして、また、王城に行くつもりなのかい?」

「どうでしょう。お兄さまには関係ないでしょう? 出掛けるのなら、どうぞ」

「私にはメル、君が大人しく帰るとは思えないのだよ」

ルカの見立ては正しい。

メルヴァイナが興味を持っていないはずがないのだ。

「勝手をされるくらいなら、私達と行こう」

ルカが促してくる。

「仕方ないわね、お兄さま。一緒に行くわ」

ルカが強引に誘ってきたかのようにメルヴァイナが答えた。

わたし達は六人で再び、王城に行くことになった。

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