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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ③
213/316

213話 変な屋敷を出た翌日 二

部屋を出たのはいいけど、ここに来るのは初めてで、どこに何の部屋があるのかわからない。

勝手に部屋を開けていくわけにもいかない。

思わず出て来ちゃったけど、どうしよう……

部屋の前にいるというのも、おかしい。

とりあえず、1階に下りた。この建物が王都のどの辺りにあるのか確認しようと思った。

出ないように言われていたけど、外を覗くくらいならいいだろう。

もしかすると、見張りがいるかもしれない。

実際に1階に着いても、誰もいない。

玄関のドアを開けようとしたが、力を入れても全く開く気配がない。

まあ、そうだよね……

ドアをじっと見つめる。

こんなドアばっかり……

もう一度、試してみる。

押しても引いてもスライドさせてもだめだった。

諦めて、1階を探索することにする。誰もいないようだし。大きな建物でもないから、探索と言ってもすぐに終わりそうだ。

側に会った2つの部屋はどちらも応接室のようだった。

結局、入ってしまった。誰も中にいなくてよかった。

もう1つ部屋があったが、鍵が閉まっていて入れない。

その時、階段を下りてくる足音が聞こえた。

物陰に隠れて、誰が下りて来たのか、窺う。

階段を下り切ったその人物を目に留める。

「コーディ」

声が出ていた。

彼がわたしに気付いてしまう。

しかも隠れているような状態で気まずい。

「特にすることもなくて……この建物、出たくても出られませんでした」

仕方ないので、何か声を掛けないと思い、そんなどうでもいいことを言った。

コーディが試してくれるが、やっぱりドアは開かない。

その後、コーディがわたしの方を向く。

「メイ、僕は魔王国で騎士を目指します。メイ、いえ、魔王様、これまでのご無礼をお許し下さい」

コーディは真面目な様子でわたしに言った。

この王国でコーディは騎士を目指していた。魔王国でも騎士を目指すというのは当然だと思う。

ただ、魔王様なんて、呼ばないでほしい。

すごく距離が遠くなる気がする。

顔を知っているだけの知り合いみたいに。

「騎士として、魔王様の傍にいられるよう努力します」

わたしの傍にいてくれるというけど、それは護衛としてだろう。

魔王城で騎士達が警護している。その騎士達に気軽に話しかけられるかといったら、できない。

「メイ、いえ、魔王様」

コーディにそう呼んでほしくない。

「これまで通り、メイと呼んでください。あまり、魔王とは呼ばれたくないんです」

とっさに口に出していた。

「メイ様」

コーディがわたしをそう呼ぶ。

「今回の任務が終わりましたら、しばらくお会いできなくなります。これまでのような関係ではいられなくなります。僕は騎士としてあなたにお仕え致します」

わたしと親しくしたくない口実のように感じる。

わたしと会いたくないというような。

コーディは魔王であるわたしに気を遣っていただけだ。

それでも、ちゃんと、好きだと言いたい。

「コーディ……わたしは――」

好きだと言いたいのに、言葉が出てこない。

迷惑になるとわかってるから。

「……その……いつも迷惑を掛けてすみません。メル姉のところに戻ります」

わたしは急いで階段を上がった。

泣いてしまいそうだった。

わたしはメルヴァイナとライナスのいる部屋へと戻った。

二人はまだその部屋にいた。

「メル姉、すみません。体調が悪いので、今日は侯爵邸に戻ります」

魔王が体調不良になるのかという考えが頭を過ったけど。

「メイさま……わかりました。戻りましょう」

メルヴァイナはすぐにフォレストレイ侯爵邸まで転移してくれた。

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