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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ②
208/316

208話 僕の決意

「特にすることもなくて……この建物、出たくても出られませんでした」

こじんまりとした玄関ホールには、今、僕とメイしかいない。

「出るつもりだったのですか?」

メイは答えなかった。

僕は外へと通じるはずのドアの前まで移動し、ドアを開けようとした。

ドアは鍵のようなものはなさそうなのに、びくともしない。

昨日までいた屋敷と同じだ。ただ、違うのは上階から人の往来が見えていたことだ。

ドアが開かないだけではないかと思う。

ただ、僕もこのドアから出入りはしていない。

ルカ・メレディスの転移魔法でここに来たのだ。

つくづく魔王国のことはわからない。まだまだ、わからないことが多すぎる。

それでも、僕達は魔王国で生きていかなければならない。

その魔王国でメイを護っていく。

「メイ、僕は魔王国で騎士を目指します。メイ、いえ、魔王様、これまでのご無礼をお許し下さい」

「……はい」

小さな消え入りそうな返事があった。

「騎士として、魔王様の傍にいられるよう努力します」

「……あの……」

メイは何かを言い掛ける。何を言われるのか、臆病になる。

僕がいるのは迷惑だろうか。

「……」

メイは僕を見つめたまま、黙ってしまった。

「メイ、いえ、魔王様」

「これまで通り、メイと呼んでください。あまり、魔王とは呼ばれたくないんです」

メイの声が僕を突き放すように感じる。

「承知致しました、メイ様」

メイが僕から視線を外す。

「今回の任務が終わりましたら、しばらくお会いできなくなります。これまでのような関係ではいられなくなります。僕は騎士としてあなたにお仕え致します」

これでいい。

言葉に出してしまえば、もう引き返せない。

「コーディ……わたしは――」

言い掛けて、言葉が続かない。歯切れが悪い。

「……その……いつも迷惑を掛けてすみません。メル姉のところに戻ります」

メイと視線が合うことなく、メイは階段を上がって行った。

他に誰もいないかのように静かだ。

全ての部屋に防音の対策がされているのかもしれない。

1階は特に使用していないのか、誰も来ない。

1階のドアを使って出入りすることがほぼないのかもしれない。

「コーディ、ここにいたのか。食事に行く。お前も来い」

グレンが階上から声を掛けて来た。

階段を上がると、グレンの他にイネスやミアも揃っている。

「俺達は食事の後、訓練だ。コーディ、お前はどうなんだ?」

「まだ決まっていない」

「確かに変わった人だったものね。大丈夫なのかしら」

イネスが独り言のように言う。

「それは僕にもわからない。午後から打ち合わせる予定だ」

「今まで何をしてたんだ? 外にでも出ていたのか?」

「いや、メイと少し話を……僕はメイと距離を置く。メイにも伝えた。僕は魔王様の近衛騎士を目指す」

「そう。とてもいいと思うわ」

「お二人とも、騎士になるんですね。ボクは……」

ミアは焦るように考え込んでしまう。

「好きにするといいわ。同じにする必要はないもの。すぐに決めなくてもいいのよ。なりたいものがあるなら、協力するわ、ミア」

「俺も好きにする。俺は騎士にはならない」

「あら、そうなの? グレン、あなたは騎士になると思っていたけれど」

「俺の自由だろ」

「ええ、そうね」

「早く食べに行くぞ」

グレンが歩き出したので、僕達も後に続いた。

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