表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ②
203/316

203話 噂

「王太子が他の王子達を殺したのではないか、という噂が囁かれているのだよ」

ルカ・メレディスはそう切り出した。

おかしな屋敷のある別の空間から抜け出せた翌日のことだった。

場所はフォレストレイ侯爵家ではない。

聖堂のある広場から程近い魔王国の拠点の1つだ。

僕とルカ・メレディスの他には、グレン、イネス、ミアがいる。

「表向きは事故となっている」

これだけ続けば、誰もそうは思わない。

噂というよりほぼ事実として語られているのだろう。

王太子も盤石ではなかった。慣例により、嫡子であった為、王太子とされたが、王としての資質はなかった。

王太子の言動に呆れている貴族は多かった。

それが今回、王位継承権上位の緑の瞳を持った王弟や王子の逝去により、王太子の次期国王の座が確実となった。

「王太子が関わっているのは事実なのか」

グレンがルカを睨む。グレンがルカを睨む理由は王太子の不名誉な噂への怒りでは無論、ない。単にルカが気に入らないだけだ。

「さあ? 関わっていないかもしれないし、関わっているかもしれないね。相手は中々、上手だよ」

ルカはグレンの態度を気にも留めず、穏やかな口調で言う。

「あの王太子に才覚はない。格上を従わせられるとは思えない」

不敬と取られかねないことをグレンは平然と言う。

この部屋は防音となっており、外には一切音が漏れないらしい。

「次期国王にひどい言い草だ。能力が劣っていても周りが何とかするだろう。国は回るよ。しばらくは」

ルカの口調はグレンを咎めるものではない。

「ある意味、あの王太子は操りやすいとも言える。あの王太子が王となることで得をする奴は大勢いるからな。本人が直接関わっているかはともかく、生き残っている以上、無関係ではないか」

「ええ、王太子は操り人形にするならもってこいの馬鹿ね」

イネスまでそんなことを言う。

少し前に僕もイネスに似たようなことを言われた気がする。魔王国は僕を王に据えて、魔王国の操り人形にするつもりじゃないかという話だ。はっきり言って、ないとは言えない。

「そもそも、今回のことを引き起こしているのは人間じゃない。王太子を操る気なのかもしれないが、先入観は持たない方がいいと思う」

魔王国を完全に信用するのは恐ろしい。元より、敵わない相手だ。それはルカ・メレディスのことも同様だ。

魔王国が敵ではないと言い切れないのだ。

「ああ、緑の瞳を持った奴や魔王を攫ったこともあるしな。第4王子と第2王女以外は無事に帰しているのも理解できない。魔王国側は何か掴んでいるのか?」

グレンは相変わらずの荒っぽい口調だ。

「残念ながら、何も。そこで、私達の出番なのだよ。私達で王太子と第3王子の周辺を探る」

「わかった。やってやる」

グレンが真っ先に手を挙げた。

「僕もだ」「やるわ」

僕とイネスが同時ぐらいに声を上げた。

「ボクにできることはあるのでしょうか……ボクは平民だから」

俯き加減のミアは自信がなさそうだ。

平民では王太子と第3王子には近づけない。下位貴族でも簡単には近づけない。

「勿論だとも。君の協力も必要だよ」

「わかりました。頑張ります!」

ミアが嬉しそうに顔を上げて、しっぽを振っている。

「快い返事だ。まあ、私の下にいる以上は、行ってもらうけれどね」

ルカがそう言い終えた時、盛大に部屋のドアが開いた。

両開きのドアが開く限界まで開いている。

何事かと思う。緊急事態でも起きたのかと。

メイに何か起きたのではと胸が騒ぐ。

だが、開いたドアからメイの姿が見えた。

ドアを開いたのはメイではなく、明らかにドアの中央に立つメルヴァイナだ。

もう一度、メイを見ると、メイと目が合った。

メイが僕に微笑んだように見えた。

案の定、すぐにメイに視線を逸らされたが……

メイが無事で本当によかった。

まだ、僕では十分にメイを護れない。

それがもどかしくてたまらない。

何度も思っている。

その時、僕の足に軽い衝撃が加わった。

イネスが僕の靴を蹴ったのだった。

そう言えば、メルヴァイナはなぜ、ここにいるのか?

しかも、メイを連れて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ