202話 侯爵邸の部屋にて
第4王子と第2王女が亡くなったと言われても、ピンとこなかった。
しばらくしてようやく、第4王子と第2王女がエリオットとマデレーンのことだとわかる。
あの2人はいなくなってしまったんだ……
どこか喪失感がある。
でも、涙が出るほどではなかった。
ただ、静まり返っていた。
「帰りましょうか。今日になったばかりだから、まだ寝られるわよ」
しんみりした雰囲気も関係ないように、メルヴァイナが明るい声で言う。
メルヴァイナは何も知らないから仕方ない。わたし達が疲れていると思って言ってくれたのかもしれない。
「あなた達はティムが送っていくわ。また会いましょう」
メルヴァイナはロイとフィーナに声を掛けるとすぐに転移魔法を使い、わたし達は転移させられた。
ロイとフィーナに何か言う時間もなかった。
転移先はフォレストレイ侯爵家だ。
「すぐに助け出せず、申し訳ありません。メイさま」
「いえ、いいんです。食事もできましたから」
「そうですか。それでは、お部屋に参りましょうか、メイさま」
メルヴァイナがわたしを促す。
「おやすみなさい」と小声でコーディとジェロームに挨拶し、部屋へと戻った。
メルヴァイナとは部屋の前で別れたので、部屋にはわたし一人だ。
メルヴァイナはわたしに何も聞いてこなかった。もう深夜だから、遠慮してくれたのかもしれない。
ただ、さっきまで寝ていたから、すぐに寝られそうにない。
わたしはソファに深々と腰を掛けた。
あのお姫様と王子様はもういないんだ……
やっぱり涙は出ないけど、胸は締め付けられるようだ。
シャーロットは無事なんだろうか。
ちょっと我儘なだけで、悪人というわけではないと思う。
殺すことなんてないのに……
エリオットとマデレーンに会わなければ、わたしは何とも思わなかったにちがいない。
亡くなったと聞かされても。
亡くなった第2王子、第5王子、王弟と同じように、そうなんだとしか思わない。
死ぬ死ぬと言っている人に限って死なないと思っていた。
だから、エリオットやマデレーンも大丈夫だと思っていた。
わたし達を閉じ込めて何がしたかったんだろう?
王族を殺していくつもりなんだろうか?
でも、あれだけの力があるなら、こんなまどろっこしいやり方をする必要はないはずだ。
何を考えているのかわからない。何がしたいのかも。
わたしでは考えてもわからない。
コーディやロイも狙われるんだろうか?
今回、二人は無事だった。
でも、今回は無事だっただけで、次はどうかわからない。
二人は王族には違いない。現国王の息子だ。
狙われる理由はある。
ロイに返事ができていない。
ロイはわたしに対して誠実に言ってくれた。だから、ちゃんと返事をしないといけない。
ロイは誤解していると思うのだ。
わたしとコーディが付き合ってるって。
そうであればいいけど、そうじゃない。
でも、わたしが好きなのはコーディだから、ロイに応えることはできない。
コーディに傍にいてほしいとか言ったと思う。
それって、前と同じで、全く進歩してない。
結局、護衛としてとか、保護者として傍にいてほしいということと変わらない。
コーディとの関係性は変わってないってことだ。
悪くなるよりはいい。
でも、わたしの決意はそんなことじゃなかった。
二人のことを考えると、縁起が悪い気がしてくる。
今、この時も無事だろうか……
不安になってくる。
早く朝になればいいのに。




