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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ①
201/316

201話 暗い街

わたしは確実に誰かに抱き着いている。

自分以外の誰かの体温を感じる。

ちゃんと顔を見ていないけど、声は確かにコーディだ。

わたしはベッドで寝ているわけでもない。

わたしの足は地面についていて、わたしは立っている。

たぶん、夢じゃない。

あれ? 本当にコーディ?

不安になってきた。

すすり泣く声は未だ、わたしの耳に入ってくる。

わたしが抱き着いているのは本当にコーディなの?

急にホラーとかのシーンが浮かぶ。

「ロイ~っ! お姉様が慰めてあげるわよぉぉ!」

そんな大声がホラーのような雰囲気を引き裂いた。

間違いなく、フィーナだ。

「お姉様、落ち着いてください。迷惑になります。私はもう平気ですから」

ロイの声も聞こえる。

泣いていたのはロイだったらしい。

ロイとフィーナが無事でよかった。

ん?

二人は近くにいる。

わたしは、めちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。

そ、それに、わたしもお風呂に入ってない。

コーディは臭いなんて言わないと思うけど。

でも、本当は臭いって思ってるかもしれない。

「コーディ、わたしももう大丈夫です……」

「ああ、それなら、よかったです」

コーディがそう答えるけど、わたしを放してくれない。

わたしはどこかに行って、迷子になったりしない。

さっきはコーディと恋人同士になったような気がした。

きれいな街の夜景はないし、コーディの姿がほとんど見えないけど、雰囲気はよかったと思う。

なのに……

好きとは言えなかった……

今は心配されて放してもらえない子供の気分だ。

今すぐ、穴を掘って閉じ籠りたい。

それか、わたしがコーディの唇を奪えば、わたしを認識してもらえるんじゃあ。

でも、わたしの身長では……届かない……

何を考えているんだろう……

それより、ここがどこかとか、他の人達が無事なのかとか確認しないといけないことがあるのに。

「コーディ、ここがどこかわかりますか?」

「おそらく、僕達が元いた聖堂前の広場です」

コーディの声がすぐ上から聞こえる。

「皆、無事なんですか?」

「私達5人は少なくとも無事です。残念ながら、エリオット殿下、マデレーン王女殿下、シャーロット嬢はいらっしゃいません」

答えたのは、ジェロームだ。

「心配なのはわかるけど、メイを解放してくれるかしらぁ?」

闇の中から、メルヴァイナの声が届く。姿は見えないけど。

「その、傍にいると約束しましたから……」

コーディがわたしから腕を離し、わたしは自由になった。

近くで魔法の光が灯り、メルヴァイナとティムの姿が見えた。

コーディの姿も見える。確かに、間違いなく、コーディだ。

まだ、なんだか、恥ずかしい。

「そ、そう言えば、ここには街灯がないんですね。いつもこんなに暗いんですか?」

メルヴァイナに顔を向け、どうでもいいことを聞く。

「王都で街灯を見た覚えはないわね。王都の夜は結構、暗いのよ。つまらないわぁ」

やっぱり、わたし達は元の場所に戻ってきたらしい。

もう、あの変な空間の中じゃない。

「明日はあまり出られないんですよね? 確か、明日は喪に服する日ですよね」

「それはもう終わったわ。既に日付も変わってるわよ」

「終わった……そうですか……」 

わたしはまだ、あの不気味な屋敷に転移させられた当日だと思っていた。

実際には1日以上経ってる。

まあ、もう、あまり驚かないけど。

1か月過ぎていた、というわけではなくてよかった。

「それと、昨日、発表されたんだけど、第4王子と第2王女が亡くなったそうよ」

メルヴァイナが軽い口調で言った。

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