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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ①
200/316

200話 言いたい言葉 二

わたしは何もなかったように振舞うしかない。

食堂に向おうと、踏み出した瞬間、目の前が真っ黒になった。

明かりが完全に消えたのか、わたしの目が見えなくなったのか判断ができない。

何が起こったのか、全くわからない。

「コーディ、ジェローム」

すぐ傍にいたはずの二人を呼ぶけれど、応答がない。

何も見えない。

手を伸ばして辺りを探ろうとする。

壁があるはずなのに、何も触れない。

「コーディ、ジェローム、誰か」

もう一度、呼んでみる。結果は同じだった。

この暗闇の空間にわたしだけ閉じ込められた!?

「誰か!」

鼓動が速くなっているのが自分でもよくわかる。

息苦しい気もする。

「どうして、誰もいないの!?」

さっきまですぐ傍にコーディとジェロームがいたのに。

誰もいない。

わたしにはこれがお似合いだと言われているよう。

嫌なことばかりが浮かんでくる。

あんなことしなければよかった……

あんなこと言わなければよかった……

本当は皆、わたしを嫌ってる……

わたしはやっぱり、この世界の異物だ。

捨てられたのかもしれない。

それなら、元の世界に戻してくれればいいのに。

呑気に朝食を食べに行こうなんて、言わなければよかった。

こんな時に何を言ってるんだとか思われたかもしれない。

全然姿の見えないロイやフィーナを捜さずに、何をやってる?

マデレーンやエリオットは? シャーロットは?

ふと気付くと、離れた場所にいくつかのうすぼんやりした光が見えた。

目を凝らすと、見えた光は建物から漏れる光だった。

暗いことに変わりはない。でも、いつの間にか真っ暗闇ではなくなっていた。

夜の町にいるのだと思う。

近くに明かりはなく、見上げると無数の星が視界いっぱいに見える。

「メイ!」

コーディの声が聞こえる。

喜びそうになって、幻聴かもしれないと自分を落ち着かせる。

こういう場合、よくない想定をしておく方がいい。

「メイ」

すぐ近くで、もう一度、わたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。

「コーディ」

声のする方を向いて、声を掛ける。

「メイ、無事でよかった――」

優しい声がした。

暗くて、コーディの姿ははっきりとは見えない。

「あの、傍にいて、もらえますか?」

コーディに言った。ちょっとぎこちないような言い方になった。

「勿論です」

コーディが即座に答えてくれる。

わたしはコーディに突進した。

抱き着くのは思い留まった。

それでも、結局、シャーロットと同じことをしてると後悔するのだ。

そんなわたしをコーディが抱き締めてくれる。

物として運搬する為ではなく、地面に激突する寸前というわけでもなく。

コーディにしてみれば、不安で泣きそうな子供をあやすようなものかもしれない。

冷たく突き放されれば、本当に泣きそうだけど。

わたしもコーディの背に腕を回した。

夢の中のようだった。

本当はまで起きていなくて、あの不気味な屋敷のベッドの上にいるんじゃないかと思えてきた。

そうしていると、どこからともなく、微かにすすり泣く声が聞こえてきた。

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