200話 言いたい言葉 二
わたしは何もなかったように振舞うしかない。
食堂に向おうと、踏み出した瞬間、目の前が真っ黒になった。
明かりが完全に消えたのか、わたしの目が見えなくなったのか判断ができない。
何が起こったのか、全くわからない。
「コーディ、ジェローム」
すぐ傍にいたはずの二人を呼ぶけれど、応答がない。
何も見えない。
手を伸ばして辺りを探ろうとする。
壁があるはずなのに、何も触れない。
「コーディ、ジェローム、誰か」
もう一度、呼んでみる。結果は同じだった。
この暗闇の空間にわたしだけ閉じ込められた!?
「誰か!」
鼓動が速くなっているのが自分でもよくわかる。
息苦しい気もする。
「どうして、誰もいないの!?」
さっきまですぐ傍にコーディとジェロームがいたのに。
誰もいない。
わたしにはこれがお似合いだと言われているよう。
嫌なことばかりが浮かんでくる。
あんなことしなければよかった……
あんなこと言わなければよかった……
本当は皆、わたしを嫌ってる……
わたしはやっぱり、この世界の異物だ。
捨てられたのかもしれない。
それなら、元の世界に戻してくれればいいのに。
呑気に朝食を食べに行こうなんて、言わなければよかった。
こんな時に何を言ってるんだとか思われたかもしれない。
全然姿の見えないロイやフィーナを捜さずに、何をやってる?
マデレーンやエリオットは? シャーロットは?
ふと気付くと、離れた場所にいくつかのうすぼんやりした光が見えた。
目を凝らすと、見えた光は建物から漏れる光だった。
暗いことに変わりはない。でも、いつの間にか真っ暗闇ではなくなっていた。
夜の町にいるのだと思う。
近くに明かりはなく、見上げると無数の星が視界いっぱいに見える。
「メイ!」
コーディの声が聞こえる。
喜びそうになって、幻聴かもしれないと自分を落ち着かせる。
こういう場合、よくない想定をしておく方がいい。
「メイ」
すぐ近くで、もう一度、わたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。
「コーディ」
声のする方を向いて、声を掛ける。
「メイ、無事でよかった――」
優しい声がした。
暗くて、コーディの姿ははっきりとは見えない。
「あの、傍にいて、もらえますか?」
コーディに言った。ちょっとぎこちないような言い方になった。
「勿論です」
コーディが即座に答えてくれる。
わたしはコーディに突進した。
抱き着くのは思い留まった。
それでも、結局、シャーロットと同じことをしてると後悔するのだ。
そんなわたしをコーディが抱き締めてくれる。
物として運搬する為ではなく、地面に激突する寸前というわけでもなく。
コーディにしてみれば、不安で泣きそうな子供をあやすようなものかもしれない。
冷たく突き放されれば、本当に泣きそうだけど。
わたしもコーディの背に腕を回した。
夢の中のようだった。
本当はまで起きていなくて、あの不気味な屋敷のベッドの上にいるんじゃないかと思えてきた。
そうしていると、どこからともなく、微かにすすり泣く声が聞こえてきた。




