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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ①
199/316

199話 言いたい言葉

「わたしはもう寝ます。おやすみなさい」

わたしはマデレーンの部屋のすぐ隣の部屋に駆け込んだ。

残念ながら、鍵はないようなので、掛けられない。

今日は本当にもう無理だ。

もう寝る時間だ。

ずっと窓の外は明るいから、本当は時間なんてわからない。

でも、たぶん、深夜だと思う。

ちなみにトイレは問題ない。

ちゃんと、それぞれの部屋にあった。しかも、水洗で清潔。魔王国と同様に。

どうせなら、お風呂もつけておいてほしい。

わたしはベッドに横になる。

さっきまでの騒ぎは嘘のように静かになった。

鍵は掛かってないけど、誰も部屋には入ってこない。

入ってきてもいやだけど。

起きると誰もいないんじゃないかとか、目を覚ませば串刺しにされているとか、いやな想像が頭を過る。

シャーロットのことはわからないでもない。

コーディに傍にいてほしかっただけなのかもしれない。

あの人も強がっていただけで不安なのかもしれない。

よく考えると、わたしもシャーロットと同じようなことをしてる……

やっぱり、魔王のわたしの方が質が悪いかもしれない。

自分の行動に後悔しかない。

どうしたらいいの~

わたし、本当に何してるの~

ベッドの上で顔を隠すように丸くなる。

眠りたかったけど、ベッドに入ると、明るさもあって寝付けない。

コーディとジェロームはわたしのことを話しているかもしれない。よくない話を。

最悪な女だとか言われていたらどうしよう……


わたしは寝てしまっていたらしい。

どれくらい寝たのかはよくわからない。今何時なのかもわからない。

窓の外は相変わらず明るい。寝る前と同じだ。

たぶん、朝じゃないかと思う。

部屋の中は変わってないし、誰もいないし、わたしの体に剣が突き刺さっていることもない。

ベッドから下りて、小さすぎる洗面台で顔を洗って、髪を整える。

恐る恐る、袖の匂いを嗅いでしまう。た、たぶん、大丈夫だと思う。

マデレーンの気持ちがよくわかる……

よく寝たけど、状況は変わってない。

誰に会うにしても、気まずい気がする。

ただ、わたし一人になっていないか確認したい気もする。

ロイとフィーナが無事かも気になる。

行くぞと気合を入れて、部屋を出る。

そこには、コーディがいた。

傍には、壁に凭れて寝ているジェロームもいる。

「メイ、嫌な思いをさせてしまって、本当に申し訳ございませんでした」

「わ、わたしの方こそ、申し訳ありません……」

わたしの方がコーディに嫌な思いをさせたかもしれない。

「あなたが謝ることはありません。悪いのは、僕ですから」

「もしかして、ずっとここにいてくれたんですか? ちゃんと眠れたんですか?」

「兄が代わってくれましたので、眠りました」

「それはよかったです。あの、シャーロットさんはもしかして、グレンの妹ですか?」

「その通りです」

あ、やっぱり。

というより、何を聞いているんだろう。

はっきりと言えるシャーロットが羨ましい。

コーディ、好きです。

と言ってしまえればいいのに。

言うと決めたはずなのに、未だに言えていない。

言う状況じゃないけど。

いや、むしろ、本当に死ぬかもしれないから言うべきなんだろうか?

言い訳を探して、後回しにしているだけ。

本人を前にすると、どうしても言えない。

ロイやシャーロットはすごいと思う。

こんなにハードルが高いとは思わなかった。言うだけなのに。

「メイ」

「コーディ、あ、あの、朝食でも食べに行きましょうか」

「そ、そうですね。行きましょうか」

この微妙な会話、なんだろう。

朝食に誘う前に、他に何か言うことがあるんじゃないの!

と自分に怒る。

でも、言葉が出てこない。

「コーディ、それでいいのか?」

いつの間にか、ジェロームが起きていた。

「はい、問題はありません。異常もありませんでした」

「そうか。それなら、食べに行くか」

ジェロームは複雑な表情を浮かべていた。

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