表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ①
197/316

197話 強情な彼女

まだ廊下の果てには着かない。

ただ、わたしやジェロームの足音とは違う音がどこかから聞こえて来た。

立ち止まって耳を澄ます。

もう音は聞こえない。1回きりだった。

「どこから?」

わたしは独り言を言ってしまう。

「わからないな。ドアを開けていくしかないんじゃないか?」

独り言にジェロームが答えてくれる。

まあ、それしかないだろう。

おそらく、コーディかロイかフィーナだ。危険なことはない。

適当な近くのドアを思い切って開ける。

最初で当たりだった。

そこにはコーディがいた。

振り向いたコーディと目が合う。

「コーディ、こんな所にいたのか。彼女を置いて、どういうつもりだ?」

ジェロームがわたしの後ろから声を掛ける。

わたしはジェロームに場所を譲ろうと、少し避ける。

それなのに、わたしを押し出すように部屋に入れられ、ジェロームもまた部屋に入る。ジェロームはドアを閉めてしまう。

「どなたですのぉ~」と甘ったるい声が聞こえて来た。

部屋にいたのはコーディだけじゃなかった。

その甘ったるい声の主はベッドの上に座り込んでいた。

ふわっふわの金髪に緑の瞳の美少女だ。

何より驚いたのは、その美少女が下着姿だったことだ。上に布を羽織ってはいるけど。

彼女は全く気にする様子はない。

彼女はコーディの腕に抱き着いていた。

彼女の胸が当たっていると思う。

コーディの妹……? 王女殿下……?

わたしは、固まっていた。

コーディの恋人? 彼女がコーディの好きな女性?

「離れてくれ」

コーディの口調は好きな女性に言うにしては冷たい。

コーディが彼女にデレデレしている様子もない。

彼女は誰!? しかも、どうして、そんな恰好してる!?

どうしたらいいの!?

助けを求めるようにジェロームに視線を送るが、ジェロームは呆然としていて、わたしと目も合わない。

美少女はコーディに冷たくされても、やっぱり気にした様子はない。

少しは気にしようよ……

わたしはここから立ち去るべきなんだろうか?

部屋を出て、ドアを閉めればいい。それだけ。

でも……それはいや。

ここは引いてはいけない。

わたしが何とかしないといけない。

「コーディはわたしの護衛です」

コーディのもう片方の腕に抱き着いた。

そんな行動をしてから――

張り合っちゃだめだった……

彼女と同じことしてる。

一番、嫌われそうなことだ。

なんてことをしたんだろう……

さっきのコーディの言葉が頭の中で響く。

こういう場面を見たことがある。どちらも嫌われて、いいことなんて1つもないじゃない……

変な汗が出てくる。

ちゃんと考えて、行動しないといけなかった。わたしのばか……

頭の中のわたしが項垂れる。

「わたくしのお父様は公爵ですの。王族の次に身分が高いんですの。フィニアス様に相応しいのはわたくしですの」

美少女が何か言っている。

相手にしてはだめだということはわかる。

わたし達が喧嘩を始めてしまったら、余計に状況が悪くなる。

コーディの腕を放さないといけないと思う。思うんだけど……

わたしはコーディの腕を放していない。

居たたまれない。

もちろん、コーディの顔なんて、見れない。見るのが怖い。

後で、しっかり謝ろう。

「一度、わたしの護衛を引き受けたんです。だから、やり通すべきです。行きましょう、コーディ」

誤魔化すように、正当そうな理由を言う。

「それがどうしたと言うんですの? 遠慮してほしいですの」

美少女は怒るでもなく、にこにこしながら言う。

「彼は騎士を目指していたんです。最後までやり遂げるべきだと思います。騎士が簡単に裏切っていいんですか」

「わたくしにはそんなこと、どうでもいいんですの。フィニアス様から離れてほしいですの」

話してもだめそうだ。

かなり強情そうな彼女をコーディから引き離すのはわたしにはむりかもしれない……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ