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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ①
195/317

195話 二人の時間(ジェロームと)

結局、わたしは独りになってしまった。

独りになったのはわたしのせいだけど。

やっぱり、コーディにいてもらえばよかったかもしれない。

でも、ずっと護衛をしてもらうのも気が引ける。

長い廊下にドアが等間隔にならんでいる奇妙な光景。窓の外は明るいけど、外に出られない。

ここに閉じ込められているのが、わたし一人になったような気がする。

今出て来たドアの部屋の中にはジェロームがまだいるはずだ。

戻りづらいけど。

ここを離れれば、どこの部屋だったかわからなくなりそうだ。

独りだと、さすがに不安になってくる。

「まだいたか」

正にドアが開いて、ジェロームが出てくる。

「やはり、独りにするわけにはいかないからな。王女殿下の元まで送ろう」

正直言って、わたしは安心した。この空間に独りではなくて。

「ありがとうございます」

わたしは素直にお礼を言った。

「本当は弟がすべきなんだがな。どこに行ったのか……」

閉じ込められている同士なのに、ばらばらになってしまった。ほとんど、わたしのせいだ。

ジェロームと並んで、廊下を歩く。

「コーディが魔王国に行くのは、本当にいいんですか……」

「勿論、弟には王国にいてほしい。同じ聖騎士になってほしかった。今は……聖騎士に、とは言えないが。まあ、会えなくなるわけじゃない。譲歩して、だ」

「……」

沈黙が続く。

廊下を歩く音だけが聞こえている。

わたし達は玄関ホールの近くまで戻ってきた。

玄関ホールの一番近くの部屋がマデレーンが使っている部屋だ。

マデレーンがその部屋にいるはずだ。

ノックしてみるが、応答がない。

「王女殿下」と呼びかけるが、やっぱり応答がない。

仕方がないので、ドアが開くか確かめてみた。

ドアは開いた。

中には誰もいなかった。

「誰もいません」

ドアをそっと閉めて、ジェロームに知らせる。

「そうか。とりあえず、隣の部屋で休んでいるか?」

このまま休んでも眠れそうにない。

本当にわたし達二人以外いなくなってしまったんじゃないか。

また、不安になってくる。

「いえ、王女殿下を捜します。向こう側にいるのかもしれません」

「そうだな。全く勝手な行動ばかり」

ジェロームはそう言うが、人のことは言えない。

後、わたしの前では取り繕う気はないらしい。

姿を見なければ、立派な聖騎士という気が全然しない。

わたしを不安にさせない為? なのかはわからないけど。

「ジェロームさん、せっかくですから、ストレス解消に魔法でも打ち込んでみましょうか。テストも兼ねて」

どうせ、この屋敷はびくともしないだろう。

「それはいい。ああ、私のこともジェロームと呼んでほしい」

「あ、はい。それでは、玄関ホールに行きましょう」

その玄関ホールには、やっぱり誰もいなかった。

あの聖騎士が出て来ても嫌だけど。

「身体強化します。魔法も強くなるはずです」

身体強化の魔法は力が強くなったり、素早くなったり、その名の通り、身体が強化される。

その他に、わたしが使うと、魔法も強くなる。普通、魔法までは強くならないらしいけど、わたしが魔王だからなのかもしれない。

わたしはジェロームに身体強化の魔法を掛ける。

ジェロームは剣を抜き、2回続けて剣を振るう。そこから、衝撃波が屋敷の扉に向けて放たれる。

コーディが使っていたのと同じ風の魔法だ。

衝撃波は扉に確実に当たった。

ただ、扉は無傷だった。

扉の破壊音ももちろん、聞こえない。

うん、逆にストレス溜まりそう。

びくともしないことはわかってたけど。

もしも、という期待は儚く散った。

「予想はしていましたけど」

「まあ、そうだな」

ジェロームは剣を収める。ジェロームも予想通りと言った反応だ。

わたし達は、まあ、何事もなかったかのように反対側の通路へ向かった。

通路の一番目のエリオットのいた部屋をノックすると、

「どなたですの?」

マデレーンの声がした。

皆、消えてしまったわけじゃなくて安心した。ホラーだったら、一人ずつ消えていくような雰囲気だったから。

「メイです」

そう答えると、程なくドアが開いた。

開けたのはエリオットだ。

わたしとジェロームは部屋に入れてもらう。

マデレーンは部屋の隅にいる。匂いを気にしているのかもしれない。

「話はできたようですのね」

マデレーンはわたしとわたしの隣にいるジェローム交互に視線を向ける。

絶対に勘違いされている。

「あの、わたしが話したかったのは、ジェロームじゃありません……」

「? そうですの? それなら、そのフィニアスはどうしましたの?」

「……逃げられました」

確かに護衛は要らないとは言ったけど、早々にいなくならなくてもいいと思う。

早くわたしから解放されたかったみたいだ。

気まずい沈黙が訪れた。

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