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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ①
188/316

188話 第4王子

食事は大満足だった。お姫様の言う通り、絶品だった。

しかも、デザートまで用意されていた。けっこう、親切だ。

コーディは転移できないと言っていたけど、向こうからこっちには転移できるらしい。そう言えば、わたし達も転移させられて来たんだった。

片付ける場合はどうしているのか?

お姫様が片付けているとは思えない。

転移させているなら、わたし達も一緒に転移できないんだろうか。

デザートを食べ終えて、まったりしながら、考えている。

お腹がいっぱいで、危機感がどこかに行ってしまいそうだ。

食事中、歓談なんてなく、食事の音だけが聞こえているような状況でも。

「エリオット殿下とはご一緒されないのですか」

ようやく、フィーナが口を開いた。しかも、お姫様に向かって。

「しませんわ。こちら側にはいらっしゃらないように忠告しております」

「戦力は多い方がよろしいのではありませんか」

「兄は戦力になりませんわ。勿論、私も、剣を握ったこともありませんわ。戦いたいのでしたら、私を巻き込まないでいただきたいですわね」

「失礼致しました、王女殿下」

「兄にはお会いにならない方がよろしいですわよ」

会わない方がいいというのは、どういうことなんだろう? 気になる。第4王子は以前のグレンよりも横暴だとか? 無慈悲で冷酷だとか?

「それでも、どうしてもとおっしゃるなら、仕方がありませんので、私が取り次ぎますわ」

高笑いでもしそうなマデレーンは、顔を背けながらも、ちらちらとフィーナとわたしの様子を窺っている。

「いえ、申し訳ございません。出しゃばり過ぎました」

フィーナはすぐに引き下がってしまった。まあ、マデレーンはわたし達にどうしても会いたいと言ってほしそうだ。

マデレーンの表情が暗くなった気がする。

「あの、わたしはお会いしたいです」

わたしが言う羽目になった。会ってみたいとは思っていた。

本当にどんな人なんだろう?

「そうですの? 本当に仕方ないですわね」

マデレーンは席を軽やかに立つ。

「参りますわよ」

これから、すぐに行くらしい。

わたしは空になった食器がどうなるのか見たかったけど、仕方ない。

わたしも席を立った。

振り返らず、歩いていくマデレーンを追いかける。

階段を下り、1階へ戻る。

振り返ると、フィーナやコーディ、ロイ、ジェロームも追いかけてきていた。

マデレーンがいた部屋とは逆の方向へ進む。マデレーンは最初の部屋のドアの前に立った。ノックもせずにドアを開ける。

鍵は掛かってなかったみたいだ。マデレーンの部屋もそうだったから、そもそも、鍵はないのかもしれない。

「エリオットお兄様!」

マデレーンは結構、きつい口調で言い放つ。

「ああ、マデレーン。来てくれたんだね」

部屋の中からはマデレーンとは対照的な優し気な声が聞こえてくる。

「来たくて来た訳ではありませんわ。お兄様にお会いしたいという方を連れて来ましたの」

「私達の他にも人がいたのかい?」

「ええ、いたのですわ。連れて来られたところのようですけれど」

「そうかい……可哀そうに……私達はもう……」

「エリオットお兄様、何をめそめそしているんですの。恥ずかしいですわ。弟達の前だというのに」

「弟?」

「ええ、第6王子と第7王子、それにその親しい方々ですわ」

「ああ、それでこのような所に……臣下したようなものだけれど、まだ、王位継承権があるから……可哀そうに……」

「そうですわね。ですが、王族は王族ですわ」

「私は王位なんて就かなくていい。王位を狙ってなどいない。なのに、なぜ、こんなことに……」

「お兄様、私達は王族なのですから、最期まで誇りをもって下さいませ」

「わかっているよ。私達は王族だ」

第4王子エリオットが部屋を出て来て、私達の前に立った。

かなり明るい茶色の髪に緑の瞳の王子だ。中性的な顔立ちで華奢だ。線も細い。確かに戦力になりそうもない。

そう、声や話し方とは違って、実はめちゃくちゃ筋骨隆々、ということはなかった。

「私の兄ですわ。母も同じですのよ」

「第4王子エリオットだ。このような牢獄のような場所で弟と会うことになるとは思わなかった。フィニアス、君とは何度か会っているね。レックス、一度、会いたいと思っていたよ」

エリオットは、コーディとジェロームに向かって言う。

「お兄様、違いますわ。弟はこちらですわよ」

「そうなのかい? この二人の方が似ている気がしたんだが」

「違いますわ」

マデレーンが小さくため息を吐くと、丁寧に兄エリオットに説明し始めた。

「兄に幻滅しまして? まだ王位を狙う野心家の方がましですわ。”王子”に幻想を抱いているのでしたら、きっぱり捨てるべきですわよ」

説明を終えたマデレーンがわたし達に言った。

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