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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ①
179/316

179話 ロイとの再会 二

コーディがどういうつもりかわからない。

単に負の感情が表情に出ないだけ?

わたしはコーディの顔を見ていられない。顔を下げる。急に暑くなってきた気がする。

何だか、既視感がある。

でも、頭がよく回らない。

今、傍にいるのは、コーディだ。

傍というか……

わたしが動けないのは、コーディに腕を回されているから。

わたしを締め上げる訳ではない。

それでも、これ以上、耐えられる気がしない。痛いんじゃなくて、暑くて倒れそう。恥ずかしくて、もう、耐えられないかもしれない。

「メイさまに怪我がなくてよかったわぁ。レックス王子に会えなくなると困るから行くわよ」

わたしの背後からぬっと現れたメルヴァイナがコーディを見据えている。

ようやく解放されたわたしはふらついて、メルヴァイナに凭れ掛かる。

「メル姉」

と呼べば、メルヴァイナが抱き締めてくれた。

「大丈夫ですか、メイさま」

「大丈夫です……」

やっぱり、大丈夫じゃないかもしれない。

メルヴァイナはコーディを見て、これ見よがしに、大げさに、ため息を吐く。

コーディが悪い訳ではない。わたしが悪いんだけど。

やっぱり、人間関係に疲れた……

人の気持ちがわからない。

皆がわたしをどう思っているのか――

本当はわたしに付き合いたくなんてないのかもしれない。

言ってくれないとわからない……

優しく声を掛けてくれるメルヴァイナもどう思っているかわからない。

「わたしは迷惑ですか?」

「ですから、私はいつも、楽しいですよ。私は嫌ならはっきり言いますよ、メイさま」

「メル姉……」

「メイさま」

メルヴァイナにぎゅっと更に抱き締められる。

わたしは思いっきり、メルヴァイナの胸に突っ込むことになった。

「あの子に見せつけてる場合じゃなくて、さすがに行かないといけません」

わたしを抱き締めたままの状態でメルヴァイナが言う。

行くなら先にわたしを放してほしい。

「では、行きましょう」

そう、メルヴァイナが言った後、メルヴァイナの腕から抜け出せた。

コーディとティムを見ると、二人とも複雑そうな顔をしている。

羨ましいとか、そんな表情じゃない。

自分じゃなくてよかったとか、思ってそうだ。

何にしても、今日はロイに会うために出てきたことを再認識する。

前の魔王のように、元の世界に戻れず、孤独に何十年も生きないといけなくなったらどうしようという想いは先送りにする。

「もう、広場ですよ」

身軽なメルヴァイナが大げさな観光案内のように、広場を指し示す。

あの手土産はティムが持っている。というより、持たされているのだろう。

「ここに来るはずです。視力には自信がありますので、お任せください。見逃しません」

どこからの情報なのかは聞けていない。聞いてはいけない気がする。知らない方がいいことのような気がする。

広場は特に何かあるわけではない。観光として来ても、面白味は感じない。

何か歴史的な事件があったのかもしれないけど、そんなものを知ってるわけがない。

広場を横切っていく人がいたり、何かわからないけど集まっている人がいたり。

そんな光景が広がっている。

その中、することがあるわけでもなく、手持ち無沙汰だ。

わたしもロイを捜しては見たが、来ていないのか見つからない。

わたしが捜す必要なんてなく、身体能力の高いヴァンパイアであるメルヴァイナの方が確実に見つけられるだろう。

だけど、広場に突っ立ってるだけなのは居心地が悪い。

まだ、何かしている方がいい。

多分、15分くらいは待ったと思う。実際にはもう少し、短いかもしれない。

「来ました、メイさま」

メルヴァイナが声を上げる。

メルヴァイナの向いている方を見ると、確かに金髪の男性が見える。おそらく、ロイだ。その横には髪が短めの女性。フィーナだ。

どう声を掛ければいいんだろう?

考えていると、ロイと目が合った。

ロイは満面の笑みを向けてきた。

わたしより背は高いけど、笑顔はやっぱり可愛い。

向こうからわたし達の方に来てくれた。

「メイさん、またお会いできてうれしく思います」

ロイは前に会った時より、少し痩せたようだった。

幼さも少し薄れた気がするが、穏やかそうな印象は変わっていない。

「本当にまた会えてよかったわ」

フィーナも笑みを浮かべ、うれしそうに言ってくれる。

フィーナは全く変わっていない。

「あなた達も聖騎士を見に来たの? 今日は神官様がここを通られるから、聖騎士がその護衛として付き添うの」

本当に変わっていない。今日も聖騎士を、というか、多分、ジェロームを見に来たんだろう。

「ええ、そうなのよ! 楽しみだわぁ」

それには、メルヴァイナが弾んだ声で答えた。

そう言えば、魔王国でもメルヴァイナは騎士を見に行っていたことを思い出した。

「じゃあ、一緒に見ましょうよ! 私はフィーナ。それと、弟のロイよ。かわいい弟でしょう! 自慢の弟なんだから!」

「勿論よ。私はメルヴァイナ。メイの姉のようなものよ。後、弟のようにかわいがってるティムよ」

わたし達を置き去りに、メルヴァイナとフィーナが話し始めてしまった。

今日の目的は聖騎士じゃなく、ロイに会う為じゃなかったんだろうか。

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