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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第4章 ⑥
171/316

171話 亡命前のデリアと

シンリー村の人達の魔王国への亡命。

その話が進んでいると聞いて、メルヴァイナと一緒に村へ戻った。

宰相から出された条件もクリアできそうな状況らしい。

それを教えてくれたのは、宰相本人だった。

村でわたし達が向かったのは、デリアの家だ。

デリアがわたし達を迎えてくれる。

メルヴァイナとは初対面だから、デリアにはリーナの姉だと紹介した。

デリアはわたし達が魔王国と関係があることを既に知っているんだろうか?

デリアの様子からはわからない。

わたしがデリアの様子を伺っていたことに気付いていたのか、デリアの方からこの話題を振ってくれた。

「魔王国のことは聞いたわ。フォレストレイ様を始め、他の村の護衛をしていた人達、リーナの従兄と言っていた金髪の男、彼らが村長を説得したのだと。あなた達が無関係な訳はないのよね」

デリアが気付いていることを予想はしていた。

この村で起きた色々なことは明らかにおかしい。

わたしも完全に関わっていることはもう、明白である。

「……その通りです。わたしは魔王国へ行きました。魔王国は思っていたような国ではありませんでした。すごく暮らしやすい国です。人間も大勢います。だから、魔王国で暮らすことにしたんです。今は魔王国の国民ということになります」

デリアがやっぱり魔王国に行きたくないなんて言わないようにしないといけない。

これから行ったことのない国に急に行くことになったのだ。

不安がない訳じゃないと思う。

「メイ、あたし達は大丈夫よ。これからはその魔王国でなんとかやっていくわ。魔獣が出たり、よくわからないものに襲撃されたり、ここには住んでいられないわ。あたし達にとって、ちょうどいい提案だったと思うのよ。これから、同じ魔王国に住む同士、よろしくね」

「はい! こちらこそよろしくお願いします!」

どうやら、わたしが魔王だと言うことまでは知られていないらしい。

デリアも魔王信仰だ。こんな魔王では幻滅必至。

「ただ、次にフォレストレイ様に会った時、ちゃんと釘は刺しておくわ。確かに魔王国に危険はなかったかもしれないけど、それは結果論でしょう。彼と行かなければ、魔王国に行くことはなかったはずでしょう? 魔王様は生贄を求めていない。だから、魔王様を怒らせることになるかもしれなかったわ」

最初に魔王国に行ったのは、彼らがいたからに違いない。ただ、彼らがいなくても、きっと行くことにはなった気がする。魔王と呼ばれるくらいだから。

それにしても、デリアはコーディに厳しい。コーディは貴族令息で、王位継承権まであって、王国ではかなりの地位だ。

わたしは曖昧に濁した。

次にデリアがコーディと会うのはいつかわからない。もう会わないかもしれない。

「あなたやリーナはどうして魔王国に?」

デリアはメルヴァイナへと視線を移す。

「私とリーナは元々、魔王国で生まれたのよ。メイとは魔王国で会ったの」

「そう。魔王国の人達は割と自由に王国に来られるの?」

「言っておくわ。私は魔王国では貴族に値するほどの身分よ」

どういう意図かわからないけど、牽制するようにメルヴァイナが言う。

ライナスには結構言っているけど、それ以外ではメルヴァイナが地位に固辞することはなかったと思う。

「わかったわ」

要は、あまり詳細は聞くなと言うことだろうか。

「ああ、ちょっと待っていて」

突然、メルヴァイナがそう言うと、家を出ていく。

一体どこに行ったのかと、デリアと顔を見合わせる。

割とすぐにメルヴァイナは戻ってきた。

「メル姉、急に出て行ってどうしたんですか?」

メルヴァイナは、

「この子達を連れて来たのです」

そう言って、ドアを開け放つ。

わたしにとっては期待に反して、デリアはコーディとすぐに会うことになった。

同時に、わたしもコーディと会うことになった。会うつもりはなかったのに。しかも、こんなにすぐに。

コーディはわたしに声を掛けてはくれなかった。

当然だけど。

無理やり、眷属なんかにさせられて、王国でこれまでのように暮らせなくなってしまった。

わたしを恨んで当然だ。

その前にも、魔王のせいで、王国で騎士になる夢も絶たれた。

わたしに好かれる要素がない。何度、考えても、酷い話だ。

むしろ、これまでと変わらず接してくれるイネスやミア、後、グレンも、彼らの方が変わっているぐらいだ。本当は思うところはあるのかもしれないけど。

コーディもまたわたしを助けてくれた。わたしが魔王だから仕方なくだとしても、うれしかった。

ああ、駄目だ。また、忘れようとしてるのに、コーディのことを考えていた。

しかも、コーディに目を向けてしまう。

コーディと視線が合ってしまい、すぐに目を逸らす。

メルヴァイナとデリアの話に集中した。

ウィリアムとアーロの話にもなり、その話で気を紛らわせた。

「今、結構忙しいのよ。嫌だわ。この後もまだすることがあるのよね。本当に嫌だわ。と言う訳で、そろそろ帰らないといけないのよ」

メルヴァイナがそう言いだす。

確かにもう夜だ。これ以上、居座るとデリアに迷惑が掛かる。

デリアの家を出て、すぐ、メルヴァイナが転移魔法でいなくなった。わたしを置いて。

「お、置いて行かれた……」

思わず、口に出していた。

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