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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第4章 ⑤
170/316

170話 ”神の御使い様”の正体

「メイ、”神の御使い様”を捜すつもりなの?」

イネスはメイを見据えて言う。

「できれば……前の魔王のことも聞いてみたいから」

メイがそう言うなら、僕もそれを手伝いたい。

それにこの件は、きっと、聖騎士の失踪にも関わってくる。

ただ、メイが言ったように死なない訳ではない。それはメイも同じだ。

メイに危険なことをしてほしくない。安全な場所にいてほしい。

怪我でさえ、負ってほしくない。

それでも、彼女の自由を奪うことはしたくない。

ドラゴニュートが強いことは十分、理解している。

僕達が村で戦ったものの比ではないくらいに、強い。

「と言う訳で、私達は明日、もう一度、ここに来た後、王都に行くつもりなのよ。ここはもう、捨てられた場所だから、”神の御使い様”はいないわ」

「それなら、どうしてもう一度来るつもりなの?」

「ふふ。気になるなら、明日来るといいわ。それより、いつまでもこんな穴の底にいるのは嫌だから、とりあえず、上に行きましょう。気が滅入りそうよ。上に行っても、もう真っ暗だけど」

もっと、早くに上に行けばよかったと、メルヴァイナが小さな声で付け足している。

「メル姉、ここは埋め直さないんですか?」

「いいのですよ。王国への嫌がらせにもなります」

本気かどうかわからないメルヴァイナの言葉にため息が出る。

メルヴァイナの魔法で、僕達の体が浮かび上がる。

僕達ではまだ、転移するしかこの穴の底から抜け出す手段がない。

僅かな時間で穴の縁へ着く。

光が届かない場所は暗く、全く見えない。穴の中は闇しかない。底などないように、限りなく深い気がする。

闇に吸い込まれてしまいそうな恐ろしさがある。

「なぜ村の下でそんなことを? この周りには森も多い。そこでする方が遥かにいいように思うわ」

イネスが穴を覗き込みながら、メルヴァイナに尋ねる。

「それは違うわ。元々、この施設の方が先にあって、後でその上に村ができたのよ。村をつくったと言ってもいいかもしれないわ。しかも、村人は魔王信仰よ。そう仕向けられたんでしょう」

「その人物は魔王を神と定めているなら、魔王国と敵対するつもりはないのではない?」

「どうかしら? 魔王さまを敬っていたとしても、魔王国に対してはわからないわよ。現に魔王国は本格的にこの件に介入し出したのよ。魔王国は引きずり出されたようなものよ。面倒なことに巻き込まれて怒っている訳ではないわよ。多少の不満はあるけど」

「村人は加担していたの?」

「村の人達は何も知らず、利用されていただけでしょう。私は別行動していたんだけど、その調査を手伝わされていたと言う訳なのよ」

「まあ、そうね。”神の御使い様”を信じていたようだから」

「それは前の魔王の為なんでしょうか。前の魔王が自殺したのは100年くらい前で、宰相の弟の失踪もそれぐらいみたいです」

メイが思わずといったように、メルヴァイナとイネスの会話に口を挟む。

「メイさま、それはその宰相さまの弟に聞くしかありません。宰相さまの弟を早く捕まえないといけませんね」

「アリシアさんや聖騎士のことも――このままだと納得できません。聖騎士が黒幕だとは思えません」

「ええ、宰相さまによると、気が済むまで、王国に滞在してかまわないとのことです。勿論、メイさまに協力を惜しみません。あの子達もそうでしょう」

その通りだと、心の中でメルヴァイナに同意する。

「”神の御使い様”は王都にいると思うの?」

イネスはメルヴァイナに問いかける。

「おそらく。というより、王都に呼び寄せられていると言った方がいいわね。魔王国の力を使い、王国の中枢に影響を及ぼす方が、魔王国をより引きずり出すには効果的よ」

「王国は巻き添えを受けるのね」

「そうかもしれないわね。影響を最小限に抑えるしかないわ」

僕が口を出せないまま、3人の会話は進んでいく。

メイに声を掛けられないという個人的な理由のせいだ。

イネスがほとんど聞きたいことを言ってくれるから、甘えていた。

メイに嫌われたくない。

そんな自分勝手な理由だった。

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