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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第4章 ⑤
168/316

168話 シンリー村の秘密

村人はすんなりと彼らの家に戻っていく。

「今日はウィンビルに戻って休むといい。ああ、その前に、この村があった場所を見てきたまえ」

というルカの言葉に従い、シンリー村があった場所に転移した。

その瞬間、足を踏み外したように落下した。

そこには何もなくなっている。

地面毎、くり抜かれたように何もない。

僅か1日で王国にあったシンリー村は消失した。

理由はわかっていても、不思議に感じる。

広大な穴が、村がそこにあった名残りだ。

転移後、その穴に落ちることになった。

転移魔法の危険性を実感する。

骨が粉砕したのではないかと思うほど、痛む。

思わず、漏れそうになる呻き声は押し殺す。

ミアは小さな呻き声を上げる。獣人の彼女でもかなりの痛みを感じているはずだ。

起き上がることもできない。

気を失った方が遥かに楽だった。

しばらくすると、痛みが引いてくる。

このような時は再生能力があってよかったとつくづく思う。

「嫌がらせなの?」

すぐ近くからイネスの声がする。

僕と同様、イネスもグレンも声は上げないが、かなり痛かったはずだ。

微かに動く音で、誰も気を失ってはいないことはわかる。

穴の中は完全に陰になっていて暗い。

穴の外でもそろそろ日も落ち、暗闇となっていくだろう。

「同じ場所に転移するから当然か。気付くべきだった。ただ、村を転移するときは地面も転移させている。僕達が使っている転移魔法とは違うんだろうか?」

「今、冷静にそんなこと、言わないでよ」

「別の場所に転移すれば、少なくとも、ここからは脱出できる」

「それはそうだけど」

イネスがため息を吐く。

「もしかして、ルカ様に怒られますか?」

ミアが不安げなか細い声で言う。

「悪いのは、こんなことにも気付けなかった僕達だから」

ルカに会うのは、確かに気が重い。

試されていたのだとすると、僕達は間違いなく失格だ。

ただ、ルカはここを見てくるように言っていた。

それだけはしておかなければ、転移する気になれない。

僕は上体を起こし、火の魔法で周囲を照らした。

まずは、グレンとイネスとミアがいることを確認する。

グレンは不機嫌そうな顔で黙り込んでいる。

それ以外には、目立つ白い物が目に入った。

それは、骨だった。

明らかに人間の骨ではなく、安堵する。

人間の骨より大きい。家畜の骨よりも大きい。

この辺りにはこれほど大きな動物は自然には生息していない。

考えられるのは、魔獣だ。

穴の底、転移魔法で消され、土は平らになっているが、この骨はなぜか消されずに露出している。

それはここから見る限りでも、1体ではなく、複数体。

「ルカ・メレディスが見てくるように言っていたのはこれのことか」

「そのようね」

近くで見ようと、立ち上がろうとするが、まだうまくいかない。

「そんなところで何をしているのかしらぁ?」

ふいに、メルヴァイナの声が降ってきた。

骨に気を取られ、上を見てはいなかった。

見上げると、柔らかな光に包まれたメルヴァイナとメイが浮いていた。

メルヴァイナに同じ言葉を問い返したいところだ。

しかも、どうしてメイまで連れてきているのか。

僕達の返事を待たず、メルヴァイナとメイは穴の底に降り立った。

「村の下に眠っていたのはドラゴンじゃなくて、魔獣……」

メイがそんなことを呟いていた。

おそらく、メルヴァイナとメイもこの場所を、特にこの骨を確認に来たのだろう。

「目的は同じということかしら? ここではかつて、魔獣が作られていたのよ」

メルヴァイナが言う。

ただ、失態を恥じ、メイに会いづらかった。

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