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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第4章 ⑤
165/316

165話 メイとの関係

「ここにいるのは、全員、魔王国の関係者なんですね?」

デリアが僕達を見回して言う。

「その通り。私達は同じ魔王国の民よ」

メルヴァイナがデリアを迎えるように、手を広げる。

「メイ、魔王国で不自由はない?」

「今の所、特にありません。ここにも戻って来られましたし、生活にも困っていません」

メイの言うように、魔王であるメイは当然のことながら、僕達も生活には困っていない。

この村人達に対してもまた、生活は約束通り、保障されるだろう。

「それなら、よかったわ。そう言えば、あの護衛の2人がここを発つと挨拶に来たわ。彼らも魔王国の方なの?」

「あの2人は違います。この国の騎士なんです」

「そうなの? 騎士が護衛? この王国の王族や貴族は魔王国のことを知っているの? 私達は何も知らなかったわ」

「この王国の人達は知らないはずです。あの2人は理由があって知っているだけです。あの2人は王国騎士として護衛をしてくれていた訳じゃないんです」

メイがデリアに説明するが、僕もなぜあの2人がメイの護衛をしていたのかよくわからない。

兄が騎士の任務を休んでまで、ゼールス領に来ていたのは意外だ。

友人であるアーロの為ということも勿論、あるだろう。ただ、兄は騎士の責務を重視すると思っていた。

「あの2人は貴族なの?」

「次期フォレストレイ侯爵と次期ゼールス伯爵なんです」

「……そ、そう。次期侯爵に、領主様の……床で寝させてしまったわ……そんな方を護衛にして大丈夫なの……?」

デリアはさすがに驚いたのか、呆然としている。

彼女はメイが魔王、魔王国女王だと知らないので、そう思うのは当然だろう。

メイはおそらく、自分が魔王だと知られることを望んでいない。

「ま、まあ、コーディのお兄さんだから……」

弱々しい声でメイが答えている。

兄とメイが話していた姿を思い出してしまう。仲の良さそうな2人の姿を。

兄を王国騎士として尊敬している。それはずっと変わらない。兄のような騎士になりたかった。

ただ、メイといるのが、どうして僕ではないのかと考えてしまう。

メイが幸せであるなら、それでいいはずだ。メイの傍にいるのが別の誰かでも。

でも、駄目だった。相手が兄でも。

メイの態度は、僕以外には変わっていない。

迷惑に思われているんだろう。

魔獣が襲ってきた時、抱き寄せたことを怒っているのかもしれない。

彼女を護る為だったとしても、するべきではなかった。

彼女を意識するようになって、妹だと思うことはできていない。

僕はメイに軽蔑されているのかもしれない。

「コーディ」

イネスの声にはっとした。

「全く聞いていなかったわね。しっかりしてよ」

それだけ言って、何を話していたかは教えてくれない。

兄とアーロのことを話していたはずだ。その後、誰かが何か話していた気がするが、聞いていなかった。

「それじゃあ、明日、魔王国で会いましょう」

メルヴァイナがデリアに言うと、メイを連れて、家を出ていく。

後に続いて、グレンも出ていく。

「コーディ、ミア、行くわよ」

イネスに促され、僕とミアも家を出た。

「私はまだすることがあるのよ。先に帰っていいわよ。メイを頼んだわ。それじゃあね」

メルヴァイナは僕達に一方的に告げ、転移魔法でどこかへ消えた。

「帰って、といっても、どこに帰ればいいのかしら?」

「どこでもいいだろ。あいつも好きな所でいいと言っていたからな」

イネスとグレンは諦めているように、いつもの調子だ。

転移魔法を使える種族は全て、こうなのだろうか?

すぐにいなくなる。

「お、置いて行かれた……」

メイが小さく呟いていた。

せめて、メイを魔王国に送ってから、することをしてほしい。

「彼女には困ったものね。メイ、悪いけれど、魔王国に転移はできないわ。近くのウィンビルという町でいいわね。コーディ、お願いするわ」

「わかった。ウィンビルに転移する」

イネスがすればいいのではないかと思ったが、誰がしても変わらないので、言われた通り、転移魔法を発動させた。

着いた先も暗いが、確実に室内だ。踏みしめる感覚も土から木の床に変わっている。

明かりを点けると、間違いなく、ウィンビルの宿の部屋だ。

「闇魔法だけじゃなくて、転移魔法も使えるなんて、すごいです」

メイが笑顔を向けてくる。

ただ、僕と目が合うと、気まずそうに、視線を外された。

「メイ、ボクも頑張って、転移魔法が使えるようになったよ。光魔法は使えないんだけど」

「そっか、ミアもすごい」

「ボクがメイを好きな所に連れていくよ」

「うん、ミア、期待してる」

メイとミアは以前と変わらず、楽しそうだ。

「メイはどうする? ここに泊まる?」

「はい、イネス、お願いします。この部屋の床でもいいので」

「それはだめよ。ベッドを使って。コーディを床で寝させればいいわ」

「こ、ここって、コーディの部屋なんですか?」

「そのはずよ。といっても、宿の一室だから、一時的に使っているだけ」

「そのようなことは困ります。ミア、メイと同室でお願いしたい」

極力、平静を保ったつもりだ。

「休むから出て行ってほしい」

口調が少し、冷ややかになってしまった。

メイと同じ部屋で寝るなどとんでもない。

しかも、それを想像してしまった。

イネスもわかっているはずだ。まだ結婚していないにもかかわらず、メイと同室などありえない。

僕は、4人を部屋から追い出し、一人になった。

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