表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の裁定  作者: 有野 仁
第4章 ④
155/316

155話 神の使い 二

ライナスと村長、ルカとリビーのやり取りをただ、見ていた。

その4人以外のその場にいる全員がそうだっただろう。

口を出せないのか、出したくないのかよくわからない。

その4人の近くには5つの死体が転がっている。

そんな中、すぐ傍にいるリーナが4人の方へと歩き出す。

リーナがわたしにちらっと視線を送る。

一緒についてくるように言われているのだと理解したわたしはリーナを追いかけた。

「メイ、リーナ、近寄ると危ないわよ!」

デリアまで追ってくる。

わたしもあまり近づきたくはない。

「ライナスお兄様、ルカお兄様」

リーナが可愛い声を2人に掛ける。

「リーナ、遅れてすまなかった」

ライナスが優し気に言う。わたしに対しては絶対にしない口調だ。

「あの2人はリーナの兄なの?」

わたしの横に並んで、デリアがこそっとわたしに聞いてくる。

「いえ、違います。あ、でも、あの金髪の方は従兄だそうです」

「そうなのね。もう、何が何だかわからないわ。あたし達はとんでもないものに騙されていたのかもしれない……」

デリアも村の人達も、色々と疑問はあるだろう。

ライナスやルカやリビーは人間なのかとか、実際に人間じゃないけど、別に、異形になったりしたわけではない。

そういうことは多分、つつかない方が賢明だと思う。

そして、わたしにも疑問に思うことがいっぱいだ。

「私達や村の方々に犠牲は出ておりません。それよりも――」

リーナはそう言って、敵の死体に目を向ける。

「間違いなく、人間の死体です」

そう言って、ルカが転がっている死体の白い仮面を蹴る。

仮面の外れた顔は、黒ずんで、人相もよくわからない。腐敗してはいないけど、直前まで生きていた人間とも思えない。

アリシアと同じだ。

この村も全滅させられていたかもしれない。

この村を利用していて、いらなくなったから全滅させる――そんなことなのかもしれない。

やっぱり、あの聖騎士が黒幕なんだろうか。

わたしは、違うような気がする。

旅をしたのは、ほんの少しの時間だったけど、こんなことをする人達じゃなかった……

「私達はこの死体を調べてみます。お二人はどうぞ、お休み下さいませ。このようなことになり、さぞお疲れでしょう」

ルカがわたしとリーナに向かって言ってくる。

確かにわたしがここに突っ立っていても何も変わらない。

「村の方々も、本日はお休み下さい。明日、お伺いしたいことが多々ございますので」

ルカの声がよく通る。それでいて、穏やかな口調だ。

ただ、まるで、明日、詰問すると言っているようにわたしには聞こえなくもない。

この村は全くの無関係というわけではないんだろう。

「メイ、リーナ、家に戻ろう。あの二人はどうする?」

デリアはウィリアムとアーロに視線を向ける。

ウィリアムとアーロは普通の人間だ。二人も疲れているだろう。

「呼んできます」

わたしはそう言って、ウィリアムとアーロの元へ走った。

「ウィリアム、アーロ」

二人に声を掛ける。傍にいる4人の村の護衛の人達もわたしの方に顔を向ける。顔は隠しているので、表情はわからない。彼らは魔王国出身だろうから、わたしのことも聞いているかもしれない。

「あのような者を一瞬で倒すなんて、まるで格が違う。私達では歯が立たなかったよ」

アーロが困ったような顔をする。

仕方ないことだ。あの二人は人間じゃないし、魔王国でも上位種。あの二人に勝てたら、めちゃくちゃすごいと思う。

あの二人がおかしいのだ。

「あの二人は人間離れしてるから。それより、デリアがもう、家に戻ろうって。私達の護衛でもあるんだから」

二人が頷く。

村の護衛の人達に軽く会釈し、ウィリアム、アーロを連れて、デリア、リーナの元へと戻った。

村の護衛の人達とはそういえば、全く話したことはない。

ルカやリビーとは知り合いのようだった。

リビーやあの4人はルカの部下なんだろうか。

まあ、今は何も考えたくない。

また、何かが襲ってこないか不安はあるけど、ルカやライナスもいるから多分、大丈夫だろう。

後は明日、考えればいい。

もう、今日は寝る!

とそんなことを考えながら、デリアの家へと戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ