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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第4章 ④
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154話 神の使い

何もできず、見ているだけ、というのも辛い。

つくづく役立たずだと思ってしまう。

よくわからない不気味な敵を相手に戦っている6人を見ていることしかできない。

足止めはできているけど、決定打がない。

敵の動きは単調だと思ったけど、自己防衛機能でもあるかのように、しっかりと攻撃を防いでいるように見える。

そんな時に暗闇から知った声が聞こえて来た。

「まさかこんなことになっているとは。驚きましたよ」

姿は見えないけど、間違いなく、ルカだ。

全く驚いているように聞こえない軽やかな口調で言う。

ルカが近づいたのか、その姿を確認できる。

ルカは一人ではなく、その隣にはなぜかライナスもいた。

メルヴァイナとティムは確認できないから、来ていないんだろう。

「君達、よくやってくれた。後は私達が代わろう」

優雅な仕草にゆったりとした足取りでルカが敵に近づいていく。

それに合わせ、ライナスも歩き出す。

ルカの放つ魔法の光が周囲を照らし出す。

2人は見かけはいいので、救世主のような雰囲気が演出される。わたしだと絶対にそうはならないけど。

「私達が相手です」

ルカがそう言うと、5人の敵がぎこちない動きで首を動かし、ルカを見る。

5人の敵は相手をしていた6人から急に離れ、一斉にルカとライナスに攻撃を加えた。

ルカとライナスは手にした剣で相手の武器ごと、切り裂いた。

血が飛び散るようなことはなく、ただ、5人の敵は倒れ伏した。

辺りは静寂に包まれた。

今、おそらく、この場にいる全員がルカとライナスに注目しているだろう。

魔法の光も相まって、神でも降臨したかのようだ。

「神の御使い様……」

村人の誰かの呟くような声がした。

そう言えば、神の使いのドラゴンは金色の瞳だと言っていた。

ライナスはドラゴニュートで、金色の瞳だ。ドラゴンの姿にはなれないけど。

ただ、ここからでは金色の瞳だということはわからない。

ルカの金髪がきらきら輝き、ライナスの淡い青色の髪が映える。

しかも、二人の白の装いがより神々しく見える。

「御使い様……?」

村長が前に出る。

「残念だが、そんなものではない。どうして、神の使いがわざわざこの村に来るというのか」

ライナスは村長に向かって、きっぱりと告げる。

あれだけ演出しておいて、否定!?

「あ、いえ、しかし――」

村長がしどろもどろになってしまった。

でも、わたしは思う。魔王が神なら、ライナスやルカは神の使いと言えなくはない。

魔王がわたしだとすると、少し違う気はするけど。

ライナスの言い方はいつものことながら、ちょっときつい。

責められたような村長が可哀そうだ。

ライナスには怯まない方がいい。

「こんなことで私達が神の使いだというなら、私達のどんな命令にも従うのか?」

「……ですが、あなた様の特徴は」

「私がドラゴンだと言うのか?」

「……」

ライナスの言葉に村長は何も答えない。

わたしは心の中で、ライナスはドラゴンの姿になれないけど、ドラゴンだろうと呟く。

「この村中を騙すのは容易いのだな」

「……私達は騙されていたのだと、おっしゃりたいのでしょうか」

「それ以外にどう捉える?」

「……」

「わかったのなら、口を噤んで、大人しく暮らしておけ」

「承知致しました。助けていただき、誠に感謝しております」

村長は恭しく頭を下げた。

「ボスー!! 遅いです! 大変だったんですからっ!」

急に場違いな明るい声が響き渡る。

緊迫した場の雰囲気をこれでもかとぶち壊すようだ。

リビーは無事だったらしい。怪我を負っているようにも見えない。

「あー、聖騎士はですね……に、逃げられました……面目、ないです……」

次は、急に低く暗い沈んだ声でこの世の終わりのように言う。

ちなみに村長は数歩下がりはしたが、どうすればいいのか戸惑ったような様子だ。

「それほどの相手だと言うことだね。そこで、イーノ、君にはあの4人をより戦えるように訓練を頼むよ」

「は、はいっ! ボス! 名誉挽回します! しっかり鍛えて見せますっ!」

元気を取り戻したリビーが食いつくようにルカに迫っていた。

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