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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第4章 ④
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147話 村での調査 二

もう、別に驚くことはない。それに、少し前から、薄々、気付いていた。

「既に気付いてくださっていたのですね。光栄でございます」

いつものリーナのような優しい笑みが浮かんでいる。

「知っているの?」

「1つは聖騎士失踪の調査でございます。この村を出発したのち、彼らは行方不明となりました。魔王国でもこの件は調査しております」

可愛い声に、優雅な口調で裏リーナが言う。

「聖騎士失踪? その聖騎士って、勇者について行っていた人達なの?」

「そうでございますよ。王都には帰還していないのです。王国側がこの辺り一帯の捜索は行ったそうですが、何の手がかりも掴めなかったそうなのです」

わたしのお守りがあったから、聖騎士達が通ったのは間違いない。その後、あの人達はいなくなった……

聖騎士達は精鋭だと言っていたし、街への魔獣襲撃の時、魔獣を倒している。

道に迷うなんてことはないから、何かあったとしか思えない。

「魔法でわからないの?」

「残念ながら、わかりません。魔法が使われていたなら、しばらくその痕跡は残るかもしれませんが、時間が経ち過ぎております」

「そっか。他の理由は?」

「全滅した村との関りでございます。むしろ、あのお2人の焦点はこちらでございますね。亡くなられた妹に関わることでございますから」

全滅した村……全滅させたのはアリシア――そうは言いたくない。既にあの時、アリシアは亡くなっていた。アリシアの意思はなかったはず。

「最新の情報なのですよ。神官長を通し、ゼールス伯爵にも伝わっております。この村の者が全滅した村の者へ接触していたと。勿論、それだけであれば、問題にはならないことでございます」

裏リーナは再び、怪しく笑う。

「とある信仰。黒いドラゴンの像。そして、魔獣生成。あの女性は魔獣のように生み出されたものなのです。興味深いことでございます」

はっきり言って、繋がりがわからない。

魔獣が人工的に作り出されたということは知っている。アリシアは魔獣と同じようにされてしまったということだろう。

魔獣を作り出しているのが、全滅した村とこの村だと言いたいのか?

「ここの村人を疑っているということ?」

「どうでしょう。そこまでのことができるようには思えません。ただ、この村に秘密があるのは確かでしょう。例えば、魔力の強い人材の確保などでございます。協力ぐらいはできるでしょう。知らず、協力させられているのかもしれませんが」

「それで、ウィリアムとアーロを集会に潜入させたかったの?」

「何の変哲もない集会でしょう。期待はしておりません」

「2人に渡していた白い布は姿を見えなくするの? それなら、すごい」

透明になるようなものだろうか? そんなことが魔法で!?

「残念ながら、認識を歪めるだけでございます。よく似たものを既に魔王様もご覧になっております。ただ、魔王様や私のように魔力の高い者には効果がありません」

よく似たもの……わたしは閃いた。村の護衛の人達の頭の装備!

わたしと他の人達と認識が違う。あれはそういうことだったんだ!

ということは、むしろ、怪しいのはあの護衛の人達?

「このことを話しましたのは私の独断でございます。おそらく、私がこうすることは姉も承知していたでしょう」

悪いことをしたように、裏リーナがにいっと笑う。

わたしは単にデリアに会いに来ただけだったけど、そうは言っていられない。

一体、何が起こっているのか?

わたしだけ何も知らなかった……

わたし、単にここでお留守番していていいの!?

逆に、調べるなら、今がチャンスなんじゃあ?

これは、行くしかない!

外はもう暗いけど、ちょっと魔獣とか不安だけど。

「わたし、ちょっと、外に出て来る」

「はい、お気をつけくださいませ」

裏リーナは非常にあっさり送り出してくれる。

少しだけ、期待したけど、裏リーナはついて来てくれるつもりはなさそうだ。

もう、止めるとは言えない。

「外は暗いですから、こちらをどうぞ」

裏リーナからキャンプで使うようなランタンを渡される。

すかさず、裏リーナはドアを開ける。ほとんど、行けと言われているようだ。

仕方なく、外に出ると、ドアが閉められる。

外は――暗い。本当に暗い。街灯なんてない。

明かりがないわけではない。

一番明るいものは、きっと、教会の明かりだ。それに、家に残っている村人もいるのか、光が漏れている家もある。

後は、動いている明かりがある。

とりあえず、その動いている明かりを追う。

向こうは歩いているので、走れば追いつける。

近づくと、それは案の定、村人ではない。村の護衛の一人だ。

護衛の男の防具などで、彼が顔に傷のある声の出せない人だとわかる。

彼の頭には最初見た時とは違う例の装備。

認識を歪めるけど、わたしには効かない。

だから、わたしにはあれがおかしく見えたんだ。

彼もわたしに気付いて、わたしの方を見ている。

ど、どうすれば……

彼は話せないから、話を聞けない。

でも、ここで無視すると、不自然な気が……

「こんばんは。ちょっと、退屈で……」

とりあえず、声を掛けた。挨拶と外を歩いている訳を。怪しまれないように。

十分、怪しかった気もするけど。

彼は敵かもしれない。

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