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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第4章 ③
140/316

140話 ヴァンパイアのリビー 二

町の外へ出て、すぐ。

着いた時には全て終わっていた。

僕達が見たのは、魔獣3体の死体だった。

町の警備隊が集まった人々を近寄らせないようにしていた。

倒したのは、たった4人のパーティだ。

その内の二人の名はウィリアムとアーロ。その2人の剣士と2人の少女。

魔獣退治をするにしては、奇妙だ。

2人の剣士は少女達の護衛かもしれないと思ったが、少女達も戦闘に参加していたらしい。

「私達の出番は無いようですね。ちょっと、残念ですねっ! せっかく、腕試しできましたのに!」

リビーは警備隊の隙間から魔獣の死体を観察するように見ながら言う。

警備隊の隊員はそのリビーに迷惑そうにしている。

「あの魔獣を倒した4人に心当たりはあるのですか?」

僕はそんなリビーに問う。

「残念ながら……ありません……も、もしかして、幻滅しましたか……? 赤髪でアーロという名でしたら、ここの領主の子息しか思い当たりません……」

リビーは振り向くと、不安そうに僕を窺いみる。

「いえ、幻滅なんてしません」

「俺もアーロ・ゼールスを思い浮かべた。アーロ・ゼールスはフォレストレイ侯爵家の嫡男とも親しい」

グレンはリビーではなく、僕に言う。兄から何か聞いているか、ということだろう。

「二人は王都にいるはず。このゼールス伯爵領に向かったということは聞いていない。このような所で魔獣退治をしているとは思えない。仮に王都を発っていたとしても、到着はまだのはずだ」

「ああ、そうだ。だが、俺達もここにいる」

転移魔法……

次兄はともかく、長兄は魔王と関わることに否定的な印象だった。

確かに転移魔法で来たのなら、今、このゼールス伯爵領にいても不思議ではない。

長兄も転移魔法を見ている。存在を知っている。

「私をいないものと思ってますね……泣けてきます……」

リビーが僕とグレンの間に割り込んで、悲し気な声を上げる。

「離れろ」

グレンは嫌そうに、低い声を出す。そして、結局、グレン自身が離れる。

「私を意識してくれてうれしいです! 魔獣を倒した4人に興味があるのですよねっ!? では、予定、変更ですっ! その4人、捜しに行きましょう!」

僕達の意見を聞くことなく、リビーは町へと歩き出す。

立ち去った4人は、町から離れたのではなく、町へ入って行ったのだと聞いていた。

時間に余裕が全くない訳ではなく、4人に興味があるのも事実だったので、リビーの後に続いた。

実際に会えば、4人のことがはっきりする。

少女達のことも気になる。その少女達が転移魔法を使った魔王国の民かもしれない。

ただの人間の少女に魔獣が殴り倒せるとは思えない。聞いた話では獣人でもなかった。

魔獣を退治したとはいえ、敵の恐れもある。

リビーの言っていた事件に関わる人間以外の種族。それが、その少女達の可能性もある。


引き返した町の中、僕達の耳にも十分聞こえるほど、魔獣が出たことやその魔獣を倒した4人のことは噂となっていた。

その方が4人のことを尋ねやすい。

見つけるのは容易だと思ったが、甘かった。

その4人の足取りはぷっつりと途絶えていた。

ただ、それにより、転移魔法を使ったということが濃厚なように思う。

町にある宿を回ったが、それらしい4人が宿泊している形跡はなかった。

「元気を出しましょう! こういうこともありますよ! うまくいくばかりではありません! 切り替えていきましょうっ!」

リビーは今朝と同じくらい活気のある様子だ。

というより、ほとんど、一貫して変わっていない。偶に、弱気になるくらいだ。

「それでは! 遅くなりましたが、私は用事を済ませに行きますねっ! また、絶対にお会いしましょうっ!」

言うなり、リビーは駆けて行った。

僕達を優先してくれたリビーに感謝する。彼女の用事が間に合うといい。

僕達は――

「俺達も予定通り、明日、シンリー村へ向かう。ここの町に留まっても意味がない」

僕はグレンの言葉に頷いた。

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