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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第4章 ③
139/316

139話 ヴァンパイアのリビー

翌朝、朝食を取った後、とりあえず、ルカの部屋へと行く。何時にどこに行けばいいのか、聞いていない。

ノックすると、ルカの入室を許可する声がした。

部屋に入ると、ルカの他に、女性が一人いる。

ルカと同じ色合いの長い金髪の快活そうな女性だ。

服装は派手で独特ではあるが、メルヴァイナのように露出が高い訳ではない。それでも、王国では溶け込むことはできないだろう。

服装の点では、ルカは時と場所を弁えている。

部屋の様子を見るに、ルカがこの部屋に泊まっているようには思えない。

単に転移する為の部屋として使っているのではないかと思う。

おそらく、僕達が訪ねると、ルカに通知されるような仕組みがあると推察される。

「彼女が昨日言った私の部下のリビー・イーノだ。私と同じく、ヴァンパイアなのだよ。彼女がキースという町まで送る」

「はいっ! 私、リビー・イーノが皆さんをお送りします! 気軽に、リビーと呼んで下さいねっ! わからないことがあれば、私に、何でも、質問して下さいね!」

リビーは満面の笑みを浮かべている。

「ここ1、2週間の話なのだが、ゼールス領にて魔獣の出現が多い。それも大型の魔獣だ。君達なら死ぬことはないだろうが、気を付けてくれたまえ」

リビーが続けて何か言おうとしたようだったが、それを無視して、ルカが話し始める。

「ああ、それと、コーディ、君はシンリー村の村人に顔を知られているのだろう? ある程度親しくなっていると、懐にも入れるだろうが、そうでなければ、警戒される恐れもある。しっかり見極めることだ」

リビーはあからさまに拗ねた表情を浮かべている。

「イーノ、彼らをしっかり送り届けるように」

「わっかりましたっ! ボス! お任せを!」

漸く、ルカに構われ、リビーの表情がぱっと輝く。

「しっかり、任されましたから、すぐにキースへお連れします!」

リビーはそう言うと、本当にすぐに魔法を発動させた。

次の瞬間には、ルカの姿は見えなくなり、別の部屋の中にいた。

おそらく、キースにある宿だろう。

キースは、前に一度、メイと二人で訪れたことのある町だ。

宿は前に宿泊した宿ではなかった。

街道沿いにある町で、セイフォードへ行く場合、この町で宿泊することが多い。その為、宿も多くある。

「はいっ、到着です! この宿に二部屋取っています。適当に使ってください。転移のポイントは忘れずに、作成しておいてくださいね!」

リビーの気分は高揚したままだ。

「魔獣が出現するとのことですが、この辺りでもいるのですか?」

僕は早速、リビーに質問した。セイフォードに出た魔獣と同じような魔獣が出れば、かなり被害が出てしまう。

セイフォードの時、かなり苦労したことが思い出される。

前とは違い、闇魔法は使えるが、街中で使うのは躊躇われる。

「勿論ですよっ! 私も何匹か、この周辺で魔獣を狩ったのですけど、困ったものです。出現は不自然ですし。元々、魔獣は作り出されたものですが。あぁ、間違いなく、人間以外が関わってます。本当に、困ったものですね」

色々と引っかかることをリビーが口にする。

「魔獣が作り出された? 誰かが意図的に作ったということ?」

イネスが僅かに険しい表情でリビーに詰め寄る。

「そうですよっ! 魔獣は自然にはいません。魔王国には魔獣なんていませんから!」

生き生きとうれしそうに返答がある。

「このゼールス領にいた魔獣は、俺達が知る魔獣とは違っている。明らかに強くなっている。原因はわかっているのか?」

次は、グレンがリビーに詰め寄る。

「それは……残念ながら、調査中ですね。どこで作られているのかも」

「それに、人間以外の種族が関わっているんだな?」

「人間には使えない魔法が使われていますからね。しかも、おそらく、上位種か最上位種ですね。手強いですよー。といっても、私も最上位種なんですけどね」

「わかった。俺達は街で情報を集める。シンリー村へは明日、向かうつもりだ」

「私も街に用があります。しばらく、ご一緒しましょうっ!」

リビーと共に、宿を出て、通りを行く。

「ありゃ~。また、魔獣が出たそうですよ。大変ですね」

リビーが急に声を上げる。

周りを見回すが、特に変わりはない。魔獣の姿は見えない。

「私は皆さんより耳がいいんですよ。この町のすぐ近くで商人が襲われたらしいです。もしかすると、その魔獣がこの町に来るかもしれないそうですよ」

「それは、大変じゃないですか!!」

ミアが慌てたように言う。

「はい、大変です! では、さくっと倒しに行きましょうか!」

リビーの声と共に、僕達は町の外へと急いだ。

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