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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第4章 ②
131/316

131話 アリシアの兄

それから3日が経った。何もない。あまりにも、何もなさすぎる。

暇で死んでしまいそうだ。

フォレストレイ侯爵家の人達はわたしに特に接触してくることはなかった。

わたしは現在、ベッドに転がっている。

カーテンを開けている窓からは青い空が見えている。

わたしの目的はなんだっけ?と思ってしまう。

他人の家で何をしているんだろう。

迷惑な滞在者以外の何者でもない。

押しかけて、居座ってる……

魔王国は何がしたいんだろう?

これまでも秘密裏にこの王国で動いていたのだろう。

それでも、今回、魔王の名前を出すのはどうなんだろう?

わたしには結構、物騒な考えが浮かぶ。

魔王国が本気で、王国を乗っ取ろうとしているとか。

それで、有力貴族を取り込もうとしているんじゃないのか。

ルカやコーディ達がどんな仕事をしているのかも教えてもらえない。

年下のミアまで働いているというのに、わたしはこんなことをしていていいのか?

よくないな……

「メイさま」

扉の外からメルヴァイナの声が届いた。

「メイさまに会いたいと、ウィリアム・カイ・フォレストレイが言ってきました。どうしますか? 会うのであれば、私も同席します」

これまで何も言ってこなかったのに、どうしたことか?

はっきり言って、気が進まない。

始めて会った時、わたしを睨むように見ていたし、雰囲気がフォレストレイ侯爵に似ていて、怖い。

でも、このまま何もしない訳にはいかない。

「わかりました。会います」

「では、そう伝えます。準備をお願いしますね」

メルヴァイナがそう言った直後、ノックの音が聞こえた。

「魔王様、お支度に参りました。入室の許可をお願い致します」

「は、はい」

わたしは反射的に返事をしてしまう。

扉を開けると、3人の女性達が入ってきた。

魔王城で王都に向う時に、わたしの着替えやメイクをしてくれた5人の内の3人だった。

用意してくれたドレスはレース付きの綺麗な白いドレスだった。

どういう意図かわからないが、全く魔王らしくない。

とっても清楚な印象だ。

準備が終わった頃にメルヴァイナが迎えに来た。

彼女は、いつものように露出の高い服だった。しかも、タイトで体の線がはっきりとわかる。

メルヴァイナとウィリアム、コーディの一番上のお兄さんが待つ部屋へと向かう。

部屋に入ると、待っていたのはウィリアム一人ではなかった。

彼の隣には赤い髪の男がいる。

素性は言われなくてもすぐにわかる。

王都にいると言っていたアリシアの兄だ。たぶん。

前と違い、ウィリアムは睨んでこない。

というより、視線を外している。

てっきり、敵意をたっぷり込めた視線を向けられると思っていた。

「……そのような服装はどうかと思います」

ウィリアムはわたしのことを言っているのではないと思う。

絶対、メルヴァイナに対してだ。

わたしもどうかと思う。

「私の国では普通よ。自由に楽しむべきよ」

メルヴァイナはそう言うが、絶対、普通じゃない。少数派だ。

ウィリアムは大きく息を吐くと、わたしに顔を向ける。

「私は貴女の言葉が嘘だとは思いません。ただ、本日はその話をする為にお会いしたのではありません」

ウィリアムははっきりと言う。

威嚇されたりしている訳ではない。

「初めに、彼のことを紹介させていただきます。彼はアーロ・ゼールス。ゼールス伯爵の嫡子です。ゼールス伯爵は我が国では新興の貴族ではありますが、黒門の最も近くに領地を持ち、その守備を任され、更には領地を発展させた手腕と富により、我が国でも影響力を持っております」

やっぱり、アリシアのお兄さんだった。思った通りだ。

瞳の色はアリシアとは違い、茶色かそれに近い色のようだ。

彼はアリシアのこと、聞いているのだろうか?

気分が重くなる。

聞いてすぐに、訪ねて来たのかもしれない。

アリシアの遺体が見つかって、もう1週間以上経っている。

最期のお別れもできなかっただろう。

わたしを責めるつもりで来たのだろうか。

アリシアの首を斬ったのはメルヴァイナだ。でも、あの時、既にアリシアは亡くなっていた。

彼が何を言って来るのか、わたしは耳をすませていた。

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