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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第4章 ②
130/316

130話 王都での出会い 四

店を出ると、

「一緒に来る?」

フィーナが再度、誘ってくる。

「わ、わたしは止めておきます。コーディ、行きたいなら、行ってください」

「僕も行きません」

「そう? 残念ね」

本当に残念そうにするフィーネに悪いと思う。

それに、もう彼らに会うことはないかもしれない。

「じゃあ、行ってくるわ。ほんとにありがとう」

フィーネはロイを連れて、歩いて行こうとするが、ロイが一人、戻ってきた。

「メイさん、また、お会いできませんか?」

と、そんなうれしいことを言ってくれる。

戻ってきてまで……めちゃくちゃうれしい。

希薄な人間関係じゃない気がする。

ロイとは友達として気が合いそうな気がする。

「はい! ぜひ」

「私は、レックス・フレディ・エヴァーガンと申します。よろしければ、エヴァーガン侯爵家をお訪ねいただければ、うれしいです。場所は貴族街の衛兵にお尋ねくださればわかります。話も通しておきます」

「メイ・コームラです。あの、でも、侯爵家にわたしが行ってもいいんでしょうか?」

侯爵家だと言われ、つい、ロイに対しても口調がちょっと丁寧になる。

平民を気軽に家に招待していいんだろうか? ちょっと心配になる。

わたしはどこからどうみても、一般庶民だと思う。

コーディは……服は庶民的なものだ。その辺りを歩いている人とそう変わりはない。

「は、はい。勿論です」

照れたように笑うロイがかわいすぎる。

「メイさん、それでは」

ロイはフィーナの元に走って行った。フィーナはいい笑顔をロイに向けていた。

ロイとフィーナの姿が見えなくなり、わたし達はまた、二人になった。

癒しを与えてくれるロイと賑やかなフィーナがいなくなり、どうしたらいいのという気がしてくる。

「甘い物が好きだと聞きましたので、食べに行こうかと考えていたのですが、今は止めておきましょう。魔王国に比べると物足りないかもしれませんが、王城が綺麗に見える場所がありますので、付き合っていただけませんか」

コーディからそんな風に言われると、断れるわけがない。

わたしは頷いた。

そもそも、一部とかなら見たけど、ちゃんと王城を見れていない。ちょうどいい機会だ。

コーディと並んで歩く。

せっかくだから、コーディに疑問に思っていたことを聞いてみる。

「あの、コーディ、聖騎士と王国騎士はどう違うんですか? 聖騎士の方が身分が高いんですか?」

「聖騎士は教会所属の騎士です。剣を捧げる主は神となります。実際には教皇ですが。王国騎士は、王国所属の騎士で、主は国王となります。どちらかの身分が高いということはありません」

よく考えると、普通にコーディと話している。

コーディは嫌がる様子は見せず、応えてくれる。

コーディは……わたしが嫌いなんだろうか? 実際のところ、どうなんだろう? 無理して、付き合ってくれているんだろうか?

グレンやイネスやミアには変わらず接しているのに、わたしだけ違う。

本当に距離が遠くなった。避けられている気がする。

いっそのこと、嫌なら嫌だとはっきり言ってほしい。

もう、そのことで頭の中はいっぱいになった。

「コーディ、わたしのこと、どう思っていますか? はっきりと言ってほしいです。前の本契約の時のわたしの態度は悪かったと思います。わたしが嫌いなら、嫌いだと言ってほしいです」

「い、いえ! 嫌いではありません! 僕の方こそ、嫌われているのかと……あなたを妹のように思っていてよろしいでしょうか」

「はい! できれば、兄として、傍にいてほしいです」

「わかりました。あなたの傍にいます」

久しぶりにコーディの優しい声が聞こえた。

コーディの言葉が嘘だとは思えない。

好きになってくれなくても、せめて、嫌われたり恨まれたりしていなくてよかった。

嫌ってないけど、恨んでいるなんてことはないと思う。

かなり迷惑を掛けている事実はあるのだ。

「メイ、ロイに会いに行くのですか?」

コーディがぽつりと言う。

「わかりません。できれば行ってみたいとは思いますけど、相手は侯爵家ですし、行きづらいというのはあります。コーディは、あの二人、ロイとフィーナさんのこと、知っているんですか?」

「ロイとは幼い頃に、僕が4歳の頃に別れたきりです。体が弱く、ほとんど、屋敷からは出ていないと聞いています。フィーナ嬢とは直接会ったことはありません。兄からも特には聞いていません」

「体が弱いという印象はありませんでしたけど?」

「そうですね。僕もずっと会っていませんでしたので、近況はわかりません」

コーディは、ロイのことをかなり気にしている。

ロイと仲良くしたいのか、それにしては、口調が厳しかった気もする。

体が弱かったということで気に掛けているのかもしれない。

それに、別れたということはそれまで一緒にいたということだろうか?

わたしの顔に疑問が浮かんでいたんだろうか、

「調べればすぐにわかることだと思います。僕とは似ていませんが、ロイは僕の実の弟です。母が亡くなった後、別々に引き取られたのです」

コーディがあっさりと言う。

「ロイに言わなくてよかったんですか? それとも、もしかして、気付いてたんでしょうか?」

「それは、わかりません。ただ、ロイの言っていた緑の瞳の兄というのは、僕のことでしょう。エヴァーガン侯爵家には、緑の瞳を持った方はいませんので」

「そうですか……」

「お互い、知らなくてもいいことです。僕の家族はフォレストレイ家の人々ですし、ロイの家族はエヴァーガン侯爵家の方々です」

「それなら、機会があれば、一緒にロイを訪ねましょう。兄弟だと知らなくてもいいかもしれませんが、別に仲良くしてもいいと思います」

「確かにそうですね。一緒に行きます」

わたし達は並んで歩く。

橋の上からは綺麗に王城が見えていた。

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