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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第4章 ②
127/316

127話 王都での出会い

朝、起きて、見慣れない天井そして、部屋。

「あれ? ここどこ?」と、寝ぼけたことを言ってしまった。

今は、フォレストレイ侯爵邸、コーディの家にいるんだった。

剣術の鍛錬はどうしたらいいんだろう?

勝手に人の家の庭を使うわけにはいかないし、部屋で武器を振り回すのも気が引ける。

完全に言い訳だけど。明日は必ずしよう。

今日は、外に出掛けるんだ。

王都を見ておくというのは、いいかもしれない。

王都に着いてから、ほぼ、建物の中だった。

宰相からの指令はかなり難易度が高い。

もう、すでに頓挫しているんじゃないかと思う。

だからといって、たった1日で諦めるのもいやだ。

まずは敵情視察。敵になっては困るんだけど。

朝食より前にイネスが一人でわたしの部屋を訪ねてきた。

部屋に入ってもらうと、イネスはすぐに口を開いた。

「コーディとは幼馴染でしかないわ。結婚なんて考えられない。父からの言いつけであるなら、従ったかもしれないけれど、もう、侯爵令嬢ではないわ。気にすることは何一つないから。あなたが思うようにして」

イネスがそう言った。

もしかして、イネスにバレていた? わたしが、その、コーディのことをす、すきだって。

だから、一人のときに言いに来てくれたのかもしれない。というより、それしか、考えられない。

イネスは応援してくれるということだろう。

「ありがとうございます」

答えに迷ったが、とりあえず、お礼を言っておく。

「いいのよ。コーディには、はっきり言いたいことを言うといいわ」

「で、できれば……」

それは、コーディに好きだと告白しろということだろうか。

正直言って、かなり、告白はしづらい。

コーディがイネスにフラれて、すぐにわたしが好きだと言ったところで、答えてくれる望みはない。絶対、むりだ。

「気付いていなくて、悪かったわ。そういう事だから。それだけ言いに来たのよ。また、後で。案内と護衛は頼んでおいたから」

悶々とするわたしを残し、イネスは部屋を出て行った。


朝食を取った後、いつでも、出掛けられる準備をして待っていた。

今日の服装は、簡素なワンピースだ。昨日のドレスと違って、動きやすい。

再度、イネスが訪ねて来た。

案内と護衛はイネスなのかと思ったが、

「仕事があって、行けないから。コーディに行ってもらうわ」

イネスはそんなことを言った。

イネスの後ろには、コーディがいた。

「イネス、やはり、僕じゃない方がいいんじゃないか」

「何言っているのよ」

二人がそんなやり取りをしている。

イネスはまだしも、コーディはフラれたとは思えない。

まだ、諦めていないということだろうか。

それなら、わたしに望みは全くない。

「コーディ、しっかり、案内と護衛をするのよ」

イネスに見送られ、わたしはコーディと二人で、侯爵家の馬車に乗り、外出することになった。

屋敷の中で会ったメルヴァイナもついてくることはなく、用事があるとどこかへ行ってしまった。

せめて、ミアに一緒に来てもらいたかった。

しかも、かわいいわんこが傍にいてくれたら、犬嫌いでなければ、最高の癒しだと思う。

誰でもいいから、一緒に行ってほしい。

一体、何を話せばいいのかわからない。

馬車の中で二人きりだ。

実際には聞くことはある。というより、聞かないといけないことが。

コーディの家族のことだ。

彼らのことを知らないと、取り込むとか、むりだと思う。知っても、むりだと思うけど。

そもそも、昨日、何も知らないで、侯爵の前に連れ出されたのは、ひどいと思う。

魔王って、何なんだろう……

「メイ、本契約の件は、申し訳ありませんでした」

コーディが沈黙を破って、そう切り出してきた。

「コーディが謝ることは何もありません」

悪いのは、わたしの方だ。

好きだと言う以前の問題だ。

前よりも、コーディと距離がある気がする。

そのことを突きつけられたようで、胸が痛い。

コーディの顔が見れない。

目の前にコーディがいるのに。

とんでもなく、遠くにいるような。

コーディに抱き着きたい。

それじゃあ、変態だ。冷たい目で軽蔑される。

今は、無難にやり過ごすしかない。

でも、つらい。

「あの、コーディ、できればでいいんですけど、前と同じように接してくれませんか?」

わたしが嫌いかもしれない。わたしを恨んでいるかもしれない。

そんな人に言うことじゃないかもしれない。

内心ではびくびくしながら、答えを待つ。

「わかりました……努力します」

冷たい言葉を言われるか、無視されるかと思ったが、そうではなかった。

うれしい答えでもない気がするけど。

やがて、馬車が停車する。

馬車のドアが開かれ、コーディが先に降りる。わたしが降りるときには、コーディが手を差し出してくれる。

こういうところは変わっていない。

わたし達二人を降ろすと、馬車は帰って行った。

しばらく、二人で歩いていく。

わたし達は、一体、どこへ向かっているんだろう。

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