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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第4章 ②
125/316

125話 フォレストレイ侯爵邸での滞在

ルカとメルヴァイナはその話に乗り、話を進めてしまった為、ルカを除く、わたし達の滞在先は、ここフォレストレイ侯爵邸となった。

コーディは自宅だから当然として、グレン、イネス、ミアも一緒だ。

拠点の確保に成功した。そういう目的じゃなかったけど。

きっと、わたし達を野放しにはできないとか、そんな理由だろう。

病んでるとか思われていても嫌だ。

自分が魔王だと言い出す人を普通、信じられない。

むしろ、そんなことを言った自分が恥ずかしくなってくる。

そして、状況は、滞在先が決まっただけで変わっていない。

もう一つ、わたしの隣にずっといる偽魔王を消してくれないだろうか。

侯爵への威嚇のつもりかもしれないが、落ち着かない。

「フォレストレイ侯爵、行方知れずになった者達を捜しているのは本当です。私達も捜索しますが、何かわかりましたら、彼らに伝えていただければ、私の耳にも入ります。私はそろそろ帰ることに致します」

ルカは、そう言うと、わたし達の傍を離れ、部屋の端まで移動すると、転移魔法を使い、消え失せた。

まだ、行かないでよー、と心の中で叫びをあげる。

「消えた?」

コーディの兄と思われる男がルカが消えた場所を凝視して、呟く。

王国には、転移魔法もない。闇魔法に続き、この転移魔法を見るのも、初めてだと思う。

ここで転移魔法を使ったのは、見せつける意味があったのだろう。早く家に帰りたいというのもあった気がする。

強硬手段に出られるより、はるかにいい。

「自宅に移動しただけです。転移魔法ですね」

メルヴァイナが説明する。

「便利だな」

小さく、声が聞こえた。わたしもそう思う。

そこで、侯爵が咳払いをした。

問い質されたりするのかと思ったが、

「ゆっくりとしていくといい」

侯爵はそう言うと、退出していった。

まるで、コーディの友達が泊まりに来たような対応だ。


侯爵がいなくなってから、とりあえず、紹介し合うと、その後は重苦しい沈黙があった。

侯爵もいないし、いたとしても、今は話したくない。疲労感がすごい。

ようやく、そこから出て、偽魔王も消え、泊る部屋へと案内されている途中、

「君は本当に魔王?」

好奇心旺盛な子供のような表情で、コーディの兄が話しかけてくる。

魔王と接するにしては、馴れ馴れしいように思う。

もし、わたしが凶悪な魔王なら、即、殺されていそうだ。

ついてくる必要はないが、なぜかついてきた、ジェロームというコーディの次兄。

もう一人の兄、長兄のウィリアムはついてきていないし、もちろん、侯爵もついてきていない。

自分の部屋のあるコーディは、今もいる。

「そうは見えないと思いますが、そうです」

わたしの方を向いたまま、ずっと待っていそうなジェロームに答えた。

「ああ、本当に魔王には見えない」

「見えたものが全てではありません」

わたしは前を向いたまま、そっけなく答える。

「確かにそうだね。だからこそ、君のことがとても気になっているよ」

最初、わたしにかなりの敵意を向けていたはずだが、今は敵意を感じない。

「そうですか」

「つれないなあ。これから、俺の部屋でも来ない?」

さっき、このジェロームは聖騎士だと紹介を受けたが、前にわたしの会った聖騎士達とはすごい違いだ。プライベートではこんなものなんだろうか?

ウィリアムは王国騎士という話だった。そう言えば、聖騎士と王国騎士はどう違うんだろう?

ジェロームの話は聞き流していたが、

「兄様! 他国の王に失礼ではありませんか!」

コーディが割って入ってきた。

わたしはちょっと鬱陶しかっただけで、気にはしていなかった。それではだめだったんだろうか? 多分、魔王として、だめだったんだろう。

コーディがわたしを庇うように立つ。

「あ、ああ……悪かった。それでは、お客人、お寛ぎください」

そう言うと、ジェロームは元来た廊下を引き返していった。

わたし達に探りでも入れるつもりだったんだろうか。

わたしがしっかりしないから、コーディから兄に対して、あんなことを言わせてしまった。

コーディがいて、ジェロームの表情は見えなかったが、逆に悪いことをしてしまった気がした。

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