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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第4章 ②
117/316

117話 王国王都へ

「え!? わたし、そんなこと一言も聞いてないんですけど!?」

わたしはイスから立ち上がり、思わず、大声を張り上げていた。

わたしは、こんな感じじゃなかった気がする。全て、メルヴァイナのせいだと思う。

そんなわたしの状況でも、メルヴァイナはお茶とお菓子を楽しんでいる。

大きな窓からは、穏やかな日の光が入ってきている。別の時間が流れているようだ。

メルヴァイナから正しく今日の朝、コーディ達四人が王国に向かったと聞いた午後の一時。

「魔王であるメイさまが気にされることではありませんよ。彼らは仕事で王国へ向かったのですから。その内、戻ってきます」

「どういう仕事なんですか?」

「詳しくは聞いていませんね。今回は、私の従兄が任されておりますから」

「……」

メルヴァイナにそう言われてしまえば、黙るしかない。

メルヴァイナは関わっていないから、ここでこうしているのだろう。

私の仕事はまだ、”勉強”だ。

大それたことは任せてなんてもらえない。

我儘を言える立場じゃないだろう。

魔王だから、許されるのかもしれないけど、魔王についてもわかっているとは言えない。

戦えないというのもある。

そんな状態で下手に動くのは得策じゃない。

でも、そうは思うけど、納得できない。

わたしも行きたかった……

完全に仲間外れにされた気分だ。

何だか悲しい、寂しい。

元々、仲間ではなかったかぁ……

コーディには会いにくい。わたしは、逃げてしまった。

なぜ、あんなふうに言ってしまったのか?

かなりきつく言ってしまったように思う。

なぜ、コーディとイネスを祝福できないのか?

そうすると決めたはずなのに。

王国のことも気になる。

中途半端なまま、この魔王国に戻ってしまった。

王国に向かったのなら、アリシアのことを調べに行ったのかもしれない。

アリシアのことはわたしも気になっている。

アリシアを恨む気にはならない。

はっきりしたこともわからない。

彼女がわたしの誘拐を指示したと聞いたけど、そう聞いただけだ。

本当なのかはわからない。

「メイさま、考え込んでも仕方ありませんよ。彼らは仕事を終えれば、帰ってきます。何か言いたいのであれば、その時に言えばいいのです。メイさまにはメイさまの役目があります。今は、甘い物でも食べて、落ち着いてください」

優雅にお茶を飲むメルヴァイナを見ると、呆れてくる。

わたしは、とりあえず、イスに座り直した。

「それに、コーディのことはそっとしておいてあげればいいですよ。フラれて落ち込んでるだけなんですから。働いていた方が、気が紛れるでしょう」

ん?

メルヴァイナの言葉に耳をそばだてた。

コーディがフラれた? イネスに?

イネスが相手だから、わたしはコーディを諦めた。

でも……

いやいや、何を思っているんだろう。

そんな、弱みに付け込む様なことを。

そもそも、相手にされないかもしれないけど。

「あの、メル姉、その、少しだけ、相談したいことが……」

相談は、コーディを振り向かせる方法とかではない。

「何でも言ってください、メイさま。私にできることなら、協力しますよ」

メルヴァイナはカップを置き、わたしを見つめてくる。

「わたしも王国に行きたいんです」

「王国に、ですか?」

メルヴァイナは少しだけ、困ったような表情をした。

「何か、方法はありませんか?」

魔王が簡単に国を出てはいけないのだろう。メルヴァイナでも難しいかもしれない。

「では、宰相さまに頼みましょう。私も王国について行きますね」

それでいいのだろうかと思わなくもないが、勝手に魔王国を出ていく方が問題だろう。

「わかりました。そうします」

わたしはメルヴァイナの言うことを受け入れた。

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