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後悔と決意

『私が殿を務める。』

彼女が言った。

『無茶だ!いくらお前でも1人でなんて!』

彼女が1人犠牲になって他の仲間たちを生かすつもりなのは誰が見ても明らかだった。

俺も残る。その一言がどうしても出てこない。


ここで彼女1人犠牲にして生き残るくらいだったら。

仲間を犠牲にして自分だけおめおめと逃げ帰るなんて情けない。自分も言うべきなのだ。残ると。彼女1人置いていけないと。

その言葉は喉元まで出かかっていた。その筈だった。

なら何故出てこないのか。

自分が臆病だからだ。怖いのだ。死ぬのが。

死なんて体験しようがない。

人は弱いのだ。死は未知だ。どんなに苦しいのか想像もつかない。


そんな未知への恐怖を抑えてそれに立ち向かえる者こそ勇者と呼ぶにふさわしいのだろう。

ここにいる者は皆勇者なのだ。人類の救世主。悪を滅ぼし善を行う者。

それがなんだ。自分より年下の女に任せて逃げ帰って。

勇者なんて選ばれた人間だけなのだ。本当の勇者なんていてもすぐに死んでしまう。

何故なら勇気があるから。人より1歩も2歩も前にでれるから。

きっと彼女は後悔なんてしないのだろう。


味方を守れた。誰も死んでない。そう思い『よかった』などと呟いて満足して逝くのだろう。

自分の命を命と数えずに。

そうして取り残された人間は後悔しながら

『仕方がなかった』『必要な犠牲だった』などと宣い素知らぬ顔して生きていくのだ。

いずれ自分のために命を散らした人間の名も忘れて。





歴代最強と呼ばれている勇者がいた。

彼らは、悪を滅ぼし、善を行う。本物の勇者であった。

そして遂に決戦に臨むべく、魔族の本拠地に旅立った。

旅は順調に進み、いよいよ敵の本拠地も目前という所で罠にかけられ圧倒的な人数差で包囲されてしまった…


という情報が最前線の街に流れてきた。

しかし民衆は勇者を信じていた。

彼らならその包囲を突破し、魔族の王の首を取ってくれると。


ただそんな中。1人だけ勇者を信じずに救援に向かった『勇者』がいた。


彼らは大量の魔物と魔族達に包囲され、圧倒的不利な状況にあった。

如何に彼らと言えど、この状況を突破するのは無理というものであった。


「くそ…まさかこんなにも戦力を伏せていただなんて…」

「さすがにこれ程までの数となると、広範囲魔法でもどうにもできませんわ!」

「私の魔力も底をつき始めています…」

「これは流石に万策尽きたか…」


そんな絶望的な状況の中、彼らの内の1人が声を上げる。


「ここは私に任せて、先に行ってください」

「な!?何を言ってるんだ!そんなこと出来るわけないだろう!?」

「しかしこのままでは遅かれ早かれ全滅してしまいます。私が道を切り開きますからそこから包囲を突っ切ってください!」

「…分かっ」


た。と言いかけたそのとき、戦場に轟音が響いた。

そして包囲の真ん中。勇者達の隣に1人の人間が降り立った。

「味方だ。もうすぐこちらの増援が来る。ここは俺たちに任せて行け」


その言葉と共に多くの場所で爆発が起こる。

1つ1つの爆発こそ小さいが爆発の数が多いため、包囲に穴が出来る。

その瞬間を見逃さず、勇者達は一気に包囲を突破して行った。


そしてそこに取り残されたのは人間の男と残りの一と言ってもまだまだ数は減っておらず、大軍と言っても過言ではない魔族の群れ。

当然怒りの矛先は原因を作ったと思われる男に向く。


「もう後悔しないって決めたんでな。ああそうだ魔族共!増援が来るってのはウソだ。お前らは1人の人間にまんまと騙されて!狩れる獲物を逃がしたんだ!ハハッ…どうした?かかってこいよ雑魚魔物共が!」

その言葉と共に魔物達は一斉に男にに襲いかかり一

一男は物の数分で命を落とした。


何故か?男はただの勇者という肩書きを持っていただけの人間だからだ。誰も守れず、逃げ帰ったタダの人間だからだ。


しかしその男は勇者達を救出した。


そして彼は地獄のような苦痛に苛まれ、死の間際に

一良かった。勇者たちもみんな生きてる。

そう、思った。

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