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令和の乱  作者: 岡田一本杉
自治体連合
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川口攻防戦

駐屯地はある程度は燃料の備蓄があり、自家発電をしている。

食料は、出入りの業者が来なくなったので、隊員の一部が、郊外の農協に直接野菜などを仕入れに行った。

私も何回か野菜などの買い出しに付いて行った。


いつもどおり厨房で調理の手伝いをしていると、ウーとサイレンが鳴り、全員集合と放送が入った。

厨房の人は集合する義務はないのだが、隊員の家族だろう、数人が興味本位で出ていって、広場の端から覗いた。私もかれらの後に続いた。

広場で隊員が整然と並んで、連隊長が前に立った。

「県から救難要請が来た。武装グループが川口市役所を占領。重武装しており、警察だけで対応困難である。武装グループは現在南浦和あたりを北上し、県庁を目指しているとの情報がある。任務は県庁防衛と、武装グループの排除。32連隊が出動する」

ハッと全員が返答した。

みんな、テキパキと動く。

私は厨房に戻り、調理の続きを行った。

そこへ隊員が一人来て、厨房の料理長と話し込んでいた。

通信隊の一部の隊員が食料の買い出しで不在なので、代わりに誰か参加して欲しいという話だ。

その隊員は、荷物を背負うだけと言うが、厨房には私以外は高齢の料理長と、隊員の奥さんと思われる中年の女性が複数しかいなかった。

みんなの視線が私に集まる。

仕方無しに、私は分かりました、と頷いた。


荷物はランドセルほどの大きさの通信機だった。30cmくらいのアンテナが付いていて、反対側にはグルグル巻のケーブルでマイクがぶら下がっている。

歩兵小隊が作戦行動に移る際の、連絡要員だ。

私も迷彩服を着せられた。

幌付きの大型トラックに隊員たちに混じって乗せられ、トラックの前に装甲車が数台と、その後ろに戦車が付く。

車列は、大宮から南下し、何事もなく浦和の県庁付近まで来た。

「敵、武装グループと遭遇。発砲許可お願いします」

車列の最前部の装甲車から、歩兵小隊長への無線連絡が、私の背負う無線機から聞こえた。

小隊長からの発砲許可の前に、再び装甲車から無線が入る。

「ん、敵は。いえ、敵ではなく、友軍です。自衛隊の装甲車です」

無線から、混乱した隊員の声が聞こえる。

小隊長が状況を聞くが、それより先に、車列前方より、銃撃音が聞こえ始めた。

大型トラックに乗る隊員間に、どうなっているんだ?という困惑した雰囲気が広がった。

こちらからの攻撃はない。向こうは一方的に銃撃を開始し、力ずくで押してくる。

小隊長は決断に踏み切れなかった。

車列前方からの報告は、友軍の装甲車複数から銃撃を受けている、向こうはこちらを友軍と認識しているはずだ、というものだ。

誤解や相打ちではなく、明確にこちらを友軍と認識しているのになぜ?

「発砲許可を」

悲痛な声が無線から聞こえる。

しかし、状況が分からない中で判断を下すのは無謀だ。サイコロを降るようなもので、結果がどうなるか、全くの賭けだ。

銃撃音がしても、意外に私は恐怖心を感じなかった。

むしろ、小隊長がどういう判断を下すのか、興味があった。

「発砲許可。各員散開、迎撃せよ」

ついに小隊長から命令が出た。

装甲車が左右に別れ、付近の建物の影に隠れ、応戦を始めた。

戦車が前面に出て砲撃し、相手の装甲車を撃破。戦車と装甲車では全く破壊力が違う。

相手の車列は装甲車だけで、戦車はなかった。

相手は、形勢不利と判断し、車列の撤退を開始した。

私達の車列が再び動き出した。敵の追撃を始めたのだ。

そのまま、川口市役所辺りまで、敵部隊を押し返した。

市役所前に一台の装甲車が止まっている。銃撃してきたので、戦車で砲撃し撃破。

更に退却中のもう1台の装甲車を撃破。

敵装甲車列は、新荒川大橋を渡って、都内に撤退した。

私達32連隊の警備領域は埼玉県内のみであり、都内に入るには都知事からの要請が必要だ。それが無い以上、ここまでしか追撃出来ない。

私達の車列は、装甲車と戦車が新荒川大橋のふもとに陣取って防御態勢を取り、ひとまず任務完了の報告を出した。


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