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どうやら俺の赤い糸はドラゴンに繋がっているらしい  作者: 小伽華志
第四章 隠された傷跡
87/120

87、告白






 「その女の子が首を刎ねられそうになっているところを『目』で見てしまったクオンは、その世界に干渉し、無理やり世界を繋げてしまいました。仮にもそんな荒業が出来たのは、あいつがドラゴンだったからでありんす」


 「なんでも、父上の魔力は雷になって母上の世界に落ちて、桜の樹を真っ二つに裂いたらしいよぉ。その裂け目と、こっちの世界を繋げたんだってぇ」


 二人の途方もない話に、リック達が唖然とした顔になる。ふと俺は思い当たることがあって、口を開いた。


 「それって、もしかして俺の町に伝わる伝承のことですか?」


 「え? 父上と母上のことが伝承として残ってるのぉ? うわぁ、嬉しいなぁ」


 俺の質問に、逆に聞き返した璃穏さんは、にこにこと微笑みを浮かべる。


 「ちょっと待って」


 その時、ルイーゼが割り込んできた。


 「クオンはこっちの世界と女の子の世界を繋げたんだよね? こっちの世界には、そんな伝承は伝わっていない」


 聡い彼女はそのリーフグリーンの瞳で、静かに俺を射竦める。


 「少年は、何者なの?」


 ルイーゼの問いに、俺は息を呑む。


 「俺は……」


 今まではぐらかしてきたその問いを突き付けられ、逃げ道は断たれたと察した。


 「イツキ君は、母上と同じ世界の人間だよぉ?」


 瞬間、あっけらかんと言い放った璃穏さんの言葉に、皆がギョッとしたように目を見開く。


 「……璃穏、空気を読みなんし」


 煙管を持つ指とは反対の手でエレヴィオーラさんが額を押さえ、ライナードさんが呆れたように肩を竦めた。

 いや、いいんだけどさ、出来れば自分で言いたかったなー……。


 「あれぇ? イツキ君、なんかごめんねぇ?」


 微妙な空気が漂っていることに気付いたのか、璃穏さんが首を傾げながら俺に謝ってくる。


 「いえ、大丈夫です」


 思わず俺は苦笑を滲ませた。


 「いやさー、確かにイツキって色々変だと思ってたけどー」


 「まさか、この世界の人じゃないなんて、思いもしませんでしたー」


 口々に言う双子に続いて、リックが納得したように頷く。


 「どおりで、イツキの魔力はまっさらだと思った」


 「いやいやいや、お前ら何普通に納得してんの⁉」


 突然大声を出したスカイルに、ルー達が振り返る。


 「この世界の人間じゃねぇって? バカ言うなよ! 信じられるか普通? そいつらの話を鵜呑みにしていいのかよ」


 彼の言葉に、リック達は顔を見合わせる。


 「スカイルー。イツキの服、見たことない形だと思わなかったのー?」


 「黒い髪も黒い眼もー、珍しいと思わなかったー?」


 双子の質問に、スカイルは「うぐっ」と言葉を詰まらせる。


 「それは、思ったが……」


 「イツキの核は、精霊が召喚されたときの捻じれ方と酷似していると先生が言っていた。イツキが違う世界から来たのだとしたら、その説明もつくだろうね」


 リックの言葉に、スカイルが黙り込んでしまう。


 「まあ、スカイルが疑うのも無理はない」


 その時、ミュンツェさんが口を開いた。


 「クラウン王国は他種族が生活する国だ。様々な文化が入り混じっているから、イツキの服装や髪色が紛れてしまってもおかしくはないだろうね」


 スカイルを庇うように言うミュンツェさんを、ルイーゼがジーッと猫のような何を考えているのか分からない目で見つめる。


 「……旦那様、知っていましたね?」


 彼女の確信に満ちた声に、ミュンツェさんがギクリと肩を跳ねさせる。


 「さて、なんのことかな?」


 爽やかな笑顔でルイーゼを振り返る彼の姿に、彼女はフンと鼻から息を吐き出した。


 「……ってことは、本当にイツキはこの世界の人間じゃねぇのかよ」


 沈黙していたスカイルが小さく呟き、その声にミュンツェさん達は静かになる。


 「そうだ。俺は、璃穏さんのお母さんがいた世界から来た」


 腹を括り、しっかりと言い切った俺の声に、スカイルは戸惑いを隠せない。


 「スカイル」


 刹那、ふわりとメイド服が翻り、移動したルイーゼが床に腰を下ろしてスカイルの背に寄りかかった。


 「今は無理に理解しなくていい」


 彼女の言葉に目を見開いた彼は、一言「……うるせえ」と言うと無言で仰け反る。体重をかけられたルイーゼから、「重いんだけど」と苦情が上がった。

 今まで共に生きてきたルイーゼの言葉だからこそ、スカイルも呑み込めたのだろう。


 彼は首を巡らせると、「話の腰を折って悪かった」とエレヴィオーラさんに頭を下げた。


 「お気になさらず。クオンはそうしてその女の子をこの世界に連れてきました。けれど、彼女は決して恵まれた環境に居た訳ではないことを、あちき達は目の当たりにさせられたでありんす」







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