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どうやら俺の赤い糸はドラゴンに繋がっているらしい  作者: 小伽華志
第四章 隠された傷跡
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81、おさらい







 我、汝を愛する者。

 いかなるときも、永遠なる愛を汝に捧げることを誓う。


 我、汝を愛する者。

 いかなるときも、久遠に等しい時間の中で汝のみを愛すると誓う。



========================================



 リーフグリーンの髪の少女に抱えられたティーポットから紅茶が注がれ、水色の髪の少年の手によってカップが運ばれる。

 全員にお茶が行き渡ったのを確認して、ミュンツェさんが口を開いた。


 「それじゃあ、これから話し合いを始めようか」


 風の間に集められた人は、全員で六人。

 ソファーの片側には俺、メリア、コーが腰掛け、反対側のソファーにはミュンツェさんが座っている。その後ろにはメイド服のルイーゼと執事服のスカイルが静かに待機していた。


 俺達はルーを見つける手を話し合う為に、集められたのだ。


 「まずは二人に説明する意味でも、振り返りをしよう」


 チラッと背後のスカイル達に視線を送り、ミュンツェさんが指を組む。


 「事の始まりは、レティーがお嬢さんを襲ったことからだ」


 「はいはーい、レティーって誰すか?」


 彼が話し始めた途端に、スカイルが話の腰を折る。ミュンツェさんは苦笑を浮かべた。


 「本名はテネレッツァ。森に住んでいたエルフの少女だよ」


 「え! エルフってまだ残ってたのか⁉」


 ミュンツェさんの言葉に、スカイルが驚いたように目を見開いた。


 「ああ。話を戻すよ。レティーはお嬢さんを襲い、その際に死神と黒のローブの人物が乱入。ルーを攫って逃亡した。そして現在レティーは行方不明となり、王から指名手配されている」


 「指名手配⁉」


 勢いよくリックが立ち上がり、カップから紅茶が少し飛び散る。


 「どういうことですか、領主様! 先生が指名手配って、何でですか⁉」


 リックだけではなく、コーも初めて聞いた話に目を丸くしていた。


 「そうか、すまなかったこれは伝えていなかった私が悪い。アレストレイル王は、強大な力を振るって行方をくらませたレティーを危険人物と認めたようだ」


 「そんな……」


 国王の言っていた言葉に、リックが呆然とソファーに座り込む。


 「ただ、処刑を命じたわけではないと言っていたからね。そんなに気に病まないほうがいい」


 彼女を気遣うように声をかけ、ミュンツェさんは「話を続けるよ」と言った。


 「そして先日、屋敷を襲撃した死神はルーが誰かに連れ攫われたと言っていた。スカイル、ルイーゼ、二人はギルドでルーを見なかったかい?」


 彼の問いかけに、二人は顔を見合わせる。


 「オレ達もずっとゼスに引っ付いてた訳じゃねぇからな。コレルに言われるまで、ゼスがルコレを攫ってきたことすら知らなかったぜ」


 「右に同じく」


 ルイーゼがスカイルの言葉に同意を示す。二人の答えに、ミュンツェさんが考え込むような仕草をした。


 「仮に、ゼスの言葉が嘘だとする。その場合、ルーはまだギルドに捕らえられている可能性が高い。ただ、ゼスの言葉が本当だとしたら、私達は手掛かりを失ったことになる」


 彼の言葉に、部屋の中に沈黙が降りる。それを破ったのは、スカイルだった。


 「もしギルドに捕まってんなら、ルコレはまだ殺されてねーと思うぜ」


 「何でそう思うんだ?」


 俺が聞き返すと、彼は肩を竦めた。


 「ギルドは裏切り者には制裁を下すことになってる。その裏切り者に家族がいた場合は、先に目の前で家族を殺されてから嬲られて、殺されていく。ギルドはコレルを捕まえてから二人一緒に殺すつもりだと思うぜ」


 予想外に血生臭い話に、リックやミュンツェさんが顔を顰める。俺の顔も恐らく引き攣っていただろう。


 「だとすると、ゼスの話が嘘だったのならば、ルーはまだギルドに捕らえられていて生きている、と」


 「でも、本当だったのなら……」


 ミュンツェさんが話を整理する。リックが語尾を濁し、再び部屋の中に沈黙が降りた。


 「本題に関係ないんだけど、一つ聞いてもいい?」


 その時、意外にもルイーゼが口を開いた。


 「レティーって人は少女を襲ったって話だったけど、何で襲われたの?」


 少女というのは、ルイーゼがメリアを呼ぶときに使っている呼称だ。ちなみに俺は何故か少年と呼ばれている。


 「……先生は昔、ドラゴンに里も家族も燃やされたらしいんだ。ドラゴンに恨みがあった先生は、だからメリアさんを襲ったということらしい」


 ルイーゼの質問に、リックが感情を殺した声で答える。その言葉に、ルイーゼは無表情で首を傾げた。


 「少女って、本当にドラゴンなの?」


 彼女の問いに、空気が凍りつく。

 俺もそれらしい返事をもらったことはあったが、ちゃんとドラゴンだと言われたわけじゃなかったからな。


 その場の全員の視線を集め、紅茶に口を付けていたメリアがソーサーにカップを戻す。

 彼女の唇が開かれ、言葉が紡がれようとした瞬間。


 「彼女は正真正銘ドラゴン、アルストロメリアだよぉ」


 聞き覚えのない声が割り込み、俺の心臓が驚愕に飛び跳ねた。


 「誰だ⁉」


 ミュンツェさんの厳しい声が飛び、声の聞こえた方を振り返る。


 刹那、視界が歪み引きずり込まれるような感覚に襲われる。

 それが何故か、俺には憶えがあるような気がした。







四章に入りました。

これからも、よろしくお願いします。

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