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どうやら俺の赤い糸はドラゴンに繋がっているらしい  作者: 小伽華志
第三章 双璧の死神
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75、廊下の戦闘






 「おいおいおいおい、メインが自分から来てどうする⁉」


 メリアの姿を見た途端に慌てだしたスカイルを、彼女はじろりと睨みつけると俺達を背に彼らと向かい合う。

 次の瞬間、振り払われた手から瞬時にドライアイスが生成され放たれた。


 次々に発射される塊をスカイルが切り払い、彼の背後に隠れたルイーゼに叫ぶ。


 「お前っ、オレの後ろに隠れてんじゃねぇよ!」


 「こういう時は盾が護るべき」


 「今オレのこと盾っつったか⁉」


 わめくスカイルの背中から顔を覗かせたルイーゼは、メリアに向かって鎖のついた鎌を投擲とうてきする。


 「お嬢様! 攻撃を止めて下さい!」


 その時コーが飛び出し、彼女の声に魔法を停止したメリアに襲い掛かった鎖鎌を、短剣で跳ね返した。


 「この二人は魔法が使えないはずですー。遠距離はルイーゼの鎖だけを警戒していてくださいー」


 「分かりましたわ」


 メリアが頷くと同時に、コーが飛び出す。


 「やっぱ昔馴染むかしなじみがいるとやりづれぇなあ!」


 突撃した彼女の攻撃をスカイルの大鎌が受け止め、一瞬拮抗する。


 「昔はスカイル達が羨ましかったよー。いつもコー達は二人と比べられては役立たずだって殴られてた」


 軽く押されながら、コーは昔を思い出すように呟いた。


 「でもね、コー達は間違ってなかった。あんな組織、逃げ出して正解だったよー」


 「あぁ?」


 コーの言葉に、スカイルが眉を顰める。

 その瞬間、コーの影からメリアが飛び出す。


 コーが跳躍し、二人を飛び越えてスカイルの背に隠れていたルイーゼと向き合った。


 「久しぶり、コレル」


 「久しぶり、ルイーゼ」


 「貴方の相手はわたくしがいたしますわ」


 「うっわ、最悪」


 スカイルとルイーゼは背を向け合い、お互いの敵を睨みつける。

 次の瞬間、両者が飛び出した。


 メリアが魔力を膨らませ、振り払った手から塊を発射しながら特攻する。

 目の前の塊を払っていたスカイルは、肉薄されたメリアの蹴りを横っ腹に受け、派手に吹き飛んだ。


 壁に打ち付けられ、ともすればそのまま意識を失ってしまいそうな衝撃を受けた彼は、しかし立ち上がり再び大鎌を構える。

 その様子に眉をひそめ、メリアは残っていた全ての弾丸をスカイルに注ぎ込んだ。


 避けようのない広範囲の攻撃に、彼はなんと防御を捨て大鎌を振り上げたまま駆け出す。

 身体の至る所に塊が着弾し、白い蒸気が上がるがスカイルは気にもせず大振りに刃を振るった。


 その大鎌をメリアは素手で掴み、彼の身動きを封じる。


 「まさかとは思いましたが、貴方もしかして……」


 「お前が何考えてんのか知らねぇが、教えてやるよ」


 メリアの呟きに、スカイルが唇を舐めニッと唇の片側を吊り上げた。


 「オレはな、馬鹿みてぇに痛みに強いんだ。ぶっちゃけ、下手な攻撃なら痛いって感覚が分からねぇ。それと同じように、寒さにも熱さにも強い。ガキの頃は火の中に手ぇ突っ込んだり、雪の中を真っ裸で飛び出して散々叱られたぜ」


 圧倒的に不利な筈の状況で、彼は笑った。

 その笑みを見て、メリアが掴んでいた大鎌を壁に叩きつける。


 壁にヒビが入るほどの衝撃を受けても、スカイルはへらへらと笑いながら起き上がった。


 「だからな、オレには終わりがない。殴られても、蹴られても、斬られても、潰されても、いつまでも戦い続ける。それが双璧の死神、スカイルの戦い方ってやつだ!」


 メリアに向かって吼える彼の後ろで、コーは苦戦していた。

 短剣は近接型。それに対してルイーゼは鎖鎌を投擲とうてきして牽制けんせいし、コーを近付けないようにしている。


 「どうしたの? 昔みたいに、投げて攻撃しないの?」


 鎌を引き戻り、振り回しながらルイーゼは無表情でコーに問う。


 「ああ、そっか。ルコレがいないから投げられないんだ」


 彼女の言葉に、コーがヒュッと息を吸い込む。


 「拾ってくれる人がいないと、投げられないんだね。ルコレがいないから、昔みたいに戦えないんだ」


 ルイーゼは首を傾げ、ゆっくりと唇を動かした。


 「それって、なんか、可哀想」


 その瞬間、コレルの姿が掻き消え、咄嗟にルイーゼが振り上げた鎌と短剣が火花を散らす。


 「それはルイーゼの見方ってだけで、コーは可哀想なんかじゃない!」


 鎌をいなし、短剣を突き入れるコーの攻撃を鎖を絡めることで止めたルイーゼは、「だって」と続けた。


 「戦えない人生に、何の意味があるの? 戦えなくなったら、そこで終わりじゃん」


 さも当然という風に言った彼女の言葉に、コーが目を見開く。


 「それ、本気で言ってるの?」


 「そうだよ。ボクはいつでも本気だ。生まれて此の方、冗談なんて一度も言ったことないほどだ」


 無表情ながら真面目な顔をするルイーゼが鎖を振り回し、片方の短剣を飛ばされてしまったコーが苦い顔をして飛び退る。


 「ルイーゼ、あなたは狂ってる」


 「心外だなぁ」


 吐き捨てたコーの言葉に、ルイーゼは表情が欠落した顔で肩を竦めた。

 いや、欠落しているのは感情か。


 「おーおー、こりゃ派手にやってんなぁ」


 四人の戦闘を夢中で見入っていた俺とリックは背後に迫る気配に気付かず、突然耳元で聞こえたしわがれた声に全身の鳥肌が立った。


 「うわぁっ!」


 あまりにも予想外からかけられた声に俺は振り向きざまに足をもつれさせ、尻餅をついてしまう。

 その拍子に、ベネから預かってポケットに入れていた三日月のペンダントが床の上に転がり落ちてしまった。


 ゼスはそれに気が付くと、片眉かたまゆを上げてペンダントを拾い上げる。


 「お? おい、これどっちの落としもんだ?」


 戦闘を続ける四人にゼスが声を張り上げると、スカイルとルイーゼが「「ゼス!」」と顔を明るくさせ、コーが青い顔をした。


 「あ、多分それボクの!」


 床に鎖を叩きつけて威嚇をすると、ルイーゼがメリア達を飛び越えてゼスの隣に立った。


 「おいおい、折角人がよこしたもん失くすなよ。そこの小僧が持ってたぜ」


 二人が話している内にじりじりと後ろに下がっていた俺達を、ひょいっとゼスが指差す。

 ギョッと顔を引き攣らせた俺達を見つめたルイーゼは、ゼスからペンダントを受け取り不意に頭を下げた。


 「拾ってくれてありがとう。探してたんだ」


 あまりにも状況にそぐわないお礼に、俺達は思わず唖然としてしまう。

 え? ルイーゼって意外といい人? いや、でも屋敷を襲ってきてるし?


 「お前、真面目かよ」


 混乱する俺の前で彼女を笑ったゼスの姿が掻き消え、次の瞬間スカイルに振り下ろされていたメリアの蹴りを彼の鎌が弾いた。

 その隙を逃さずルイーゼの隣に飛び退いたスカイルの横に、同じく瞬時にメリアから距離を取ったゼスが並ぶ。


 「ゼス、用事ってのは済んだのか?」


 「ああ。それで、今度はこっちの用事を済ませようと思ってな」


 そう言うとゼスは笑みを浮かべて鎌を振り上げ。

 傍に居たスカイルの肩を切り裂いた。







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