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なれ果ての先

バッドエンドです。

読みたくなければ飛ばしてください。

ひたすらに狂ってます

 

 ゆっくりと目を瞑り顔を近づけた。本当にあと数センチの所だった。


「ッ、カッ、あ、あぁれ?」


 どさりと彼も巻き込むようにして倒れた。お腹が熱い。痛い。苦しい。


「セシルさん!あなた、一体何を!?」

「こうするしかなかったんです。こうするしか」


 私はお腹を刺された。背後から、セシルに。隠し持っていたのだろうか。トウマ君も上手く状況が飲み込めていないだろう。ようやく全て終わろうとしていたのに、この有様。最後まで彼女にも注意を払うべきだった。ファーストキスなどと舞い上がって周りをよく見れていなかった。自業自得の成れの果て。頭のどこかで確信してしまった。もう助からないと。魔王の攻撃を受けて瀕死の状態。からのトドメの一撃。ゆっくりと背後を振り返るが視界もぼやけている。


「ごめんなさい、レティア様。この後魔王も殺して私も死んで、みんなで生まれ変わりましょう。次こそ平和に。私がレティア様の伴侶として守ります」

「セ、セシ、ル」

「なんでしょうか、レティア様」


 ぼやけている視界でもはっきりとわかった。セシルは壊れているのだと。ここまで残酷な事をしておいて慈愛の笑みを私たちに向けてくる。初めて彼女を悪魔のようだと思った。怖い、逆らえない。トウマ君も後ろで固まっている。何がなんだかわからないという顔。今の状態を理解は出来るが納得が出来ない。最後にどん底に突き落とされた。


「……ッ」


 上手く話そうと思っても声を出すことすら出来ない。悔しさで涙だけはポロポロと流れ落ちてくる。


「大丈夫です。レティア様、苦しまないようにしてあげますから」

「っやめろ」


 トウマ君が後ろからセシルを怒鳴る。止めようとしてももう遅かった。振り下ろされた短剣は私の息の根を止めた。




 ※※※




 特に何も感じなかった。殺したことへの罪悪感も高揚感もない。ずっと手に入れたかった人を自分の手で葬った。一部の人は手に入れられないなら殺してやるという考えにもなるらしいが、今思うとやっぱ彼女の笑顔を見たいかもと思った。でも、もう終わらせてしまった。

 そこの放心状態でレティアの下敷きになっている魔王。愛しい存在が目の前で殺されたというのに何も変わってない。むしろ腹立たしい。

 既に事切れたレティア様をゆっくりと撫でる。まだ暖かく生きているように思う。髪はパサパサで指を通そうとしても絡まってしまう。城にいた頃は手入れを欠かさず、良いと言われるものはなんでも試してきた。絡まり知らずのサラサラ髪。いつからこんなにボサボサになってしまったのだろう。しかし、そんな姿だって愛おしい。倒れた彼女の右腕を持ち上げそっと包み込む。生前よくこうしていたっけ?懐かしい感覚にふわりと笑みが溢れる。


「な、なんでこんな酷い事を」


 トウマ。正直こいつはどうだっていい。対して役に立たなかった。この状況を見たのだから殺してしまいたい気もするが私は至って普通の人。無意味に人を殺したりはしたくない。


「何も話さないなら見逃します。どこかへ行ってください。ああ、私をどうこうしようなんて思わないでくださいね。私もレティア様の後を追うので。あなたは勝手に生きてください」

「っ…。それ、でも俺はあなたを許さない」


 一歩、一歩とこちらに近づいてくる。怒っている。今までに見たことのないような顔をしている。せっかくの綺麗な顔が台無しだ。


「それ以上近づいたら、刺しますよ?」


 ピッと短剣を向ける。本来の主人公だからって容赦はしない。邪魔をするというのなら仕方ない。逃げるか、死ぬかのどちらか。戦って勝つなんてこと、彼にはできやしない。


「さあ、死ぬか?生きるか?どうしますか?」

「、、、ッ」


 ニッと笑って見せた。今まで見たことないような不敵な笑み。効果覿面だったのだろうか。彼は震えながら数歩後退りをし、悔しそうな顔をして去っていった。これでいい。フィナーレに観客はいらない。


「魔王、、はこのままほったらかしても死にますかね?でも流石に呪いとかかけられても嫌ですし、殺しますか」


 短剣を高く上げ、躊躇いもなく彼の心臓目掛けて突き刺す。肉を深く抉る感覚。気持ちの悪い音と赤暗い血の色。

 私ってばなんて優しいのだろう。世界に仇なす魔王を倒し、愛する人の後を追わせてあげたのだから。

 次こそちゃんとした世界に生まれよう。この世界はもうダメだ。失敗してしまったから、新しい世界に期待しよう」


「次こそは一緒になりましょう。神様に祈っておきますね」


 二人に向かいゆっくりと祈ると二人を殺した短剣を自分に向ける。苦しまずに一発で死ぬのは難しいだろうけど、死ねるのなら、まあいいか。首に当てた刃はベッタリとしていて気持ちが悪い。切れ味も悪くなってそうだ。


「もう、そんな事だってどうでもいい」


 力を入れて首を切る。その後はよく覚えていない。でも、これだけは言える。もう目覚めることはなかった。




 ※※※




 ある小さな村に2人の子供がいた。可愛らしい女の子が1人とカッコいい男の子が1人。二人は結ばれる運命かのように仲が良かった。周りの人も彼らを祝福していた。しかし、一部の村の人はこう言った


「あの女の子にはねもう1人別の子がいたの」


 −もう1人の子っていうのは?


「あんまり大きい声では言えないんだけどね、可笑しい人らしいの。なんでも女の子を見た瞬間に私のレティア様って。私の伴侶!だってさ。意味わかんない事を言う人もいるんだねぇ」


 −その子は今どうなってるの?


「どこからきたのかもわからなくて、親もいなかったの。ただひたすらに運命だって言う人で。私らも不気味に思ったから村から追い出したのさ。近く通りかかった業者に乗せてもらって遠くまで連れてってもらったんだけど、、その後はよくわからないわ。とりあえず遠くまでってお願いしたんだけど。でもなんか最近また嫌気がするのよ。もしかしてまた近くまで来てたりして」




「やっと見つけた。何度でも見つける。どこにいたって追いつく。私のレティア様」


 村の外の木からこちらを窺う女性が1人。見窄らしい格好で浮浪者という言葉が相応しい。遠くで表情だってよく見えないはずなのに狂気の笑みを浮かべいるような気がした。


「神様に祈ったもの。次こそ一緒になれますようにって。邪魔者はいるけど、王子様とお姫様のハッピーエンドに悪役は必要だものね。悪役を倒して迎えに行ってあげるよお姫様」


 さあ、新しい物語をはじめようか。私が主人公のお話を








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