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目を閉じていたのはどれくらいの時間だっただろうか?ほんの数分にも長い数時間にも感じられる。ほとんど光りも入ってこないため、現在の時間もどれくらいかわからない。ただ、目を開けた先の光景に驚いた。
「セ、シル?」
「レティア様、ご無事で、、、」
セシルがいる。喉がカラカラで上手く声が出ない。扉は何かで壊されたのかボロボロである。外はそこまで眩しくない。明るさに目を慣らしつつもセシルが拘束を解こうとしてくれる。
「はやく、解いて、助けに行かないと」
「すみません、なかなかこの鎖が切れなくて」
このようにてこずっていては助けにいけない。外で戦っているであろうオリヴァーお兄ちゃんの無事を祈ることしかできない。必死に鎖を切ろうとしてくれてはいるが、どうもその手つきはのんびりしているように見える。力を込めすぎて私の手まで傷つけないようにしているだけかもしれないが、焦りが募る。少しイライラしながらもしばし待つとようやくほどけたのか手がすっきりした感じがする。
「すぐに足の方も切りますね」
「お願い」
またしばらく待つと足の鎖も切れたのか、じゃらりと音をたてて落ちる。しばらく足に重いものがあった状態で座っていたため足が痺れているが、そんなこと今はどうだっていい。
「ごめん、なさい。まさかこんなことになるなんて、、、」
「そんなことは今はいいよ。それより、2人は、、、」
「ふざけるな!!!」
リックは私を見張っていたはずだが、セシルと共にオリヴァーお兄ちゃんも来たのだろう。今頃戦っているはずだろうか?聞こうとしたと同時に外から怒声が聞こえる。この声はおそらくオリヴァーお兄ちゃんの方だ。驚きはね上がり、もつれるようにして外へと飛び出す。外の段差に躓き、倒れそうになるが、それをギリギリでトウマ君が受け止めてくれる。
「っっっ!」
「大丈夫ですか?」
「ありがとう、トウマ君」
「それより、向こうを」
トウマ君に言われた方を見て私は目を見開く。その光景を思わず凝視してしまう。
「オリヴァー、、、お兄ちゃん?」
特にやられたという風には見えない。フラフラと立っているが、しかし彼の回りの黒いオーラは何だ。まさかと思い背筋がぞわりとする。ゲームのムービーでも見た光景。ラスボス登場と言わんばかりのBGMも流れ、まさにという雰囲気であったシーン。現実でそうならないようにずっと頑張ってきたのに、無駄であったのだろうか?
「あ、あぁ」
絶望が心を埋め尽くしている。黒く濁っていく。私が捕まってなかったら、もっとうまく動けていれば。セシルがもう少しはやく鎖を切ってくれたのなら。
トウマ君を突き放し、オリヴァーお兄ちゃんの元へと急ぐ。
「ね、ねぇ、しっかりして?私がわかる?ねぇ、ねぇ?」
彼の元へとたどり着くと服の裾をつかみ、思い切り揺らす。背伸びをして自分より高い位置にある顔を両手で包み込みこちらを向かせるが、目の焦点が合わずにフラフラとしている。いくら声をかけようとも、気持ち悪くさせるぐらい揺らしても私の顔をその瞳には写してくれない。
「っめろ、めてくれ、」
「オリヴァー、お兄ちゃん?」
「やめろぉぉぉぉぉ!!!!!」
叫ぶと同時に回りの黒いモヤが彼を覆い隠していく。私は弾き出され、数メートル後ろへと吹っ飛ばされる。
そして次に見た光景に私は息を飲んだ。




