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「うまくいったと思っていたのに」

「セシル...」


 驚きと恐怖が頭の中で渦巻いている。リックだってルシアンだってただただセシルに利用されていただけだったと気づいた。トウマ君がこの世界に転移するとき、ゲームの内容を知っているリックなら絶対彼を殺すか、どこかに閉じ込めたりすると思っていた。でもそうならなかったのは全て彼がセシルに言われた通りに動いていたから。彼はゲームの内容なんて知らなかったんだ。ようやく色々なことに少し納得がいく。


 『あれ?でも、それって私がセシルに好かれちゃったせい?前世の記憶があるから、セシルなんて頼らなかったら幸せになれてた?シーネスト国だって滅ぼされてなかった?』


「全ての元凶って私だったりする?」


 小さくポツリと呟いただけだったが二人には聞こえていたらしい。


「そんなことない!」

「そんなことはないです!」


 二人して頭を抱える私を心配そうに見る。二人とも私を好きだってことは変わらない。そうだ、最初からこうやって彼女の好意に気づいていればよかったのに...。元はと言えば私が専属侍女欲しいなんて言わなかったらよかったのでは?

 もしかしたら私が悪いのかもと頭の中でぐるぐる渦巻く。自分はあまり悩まない楽観的な性格と思っていたがそうでもなかったらしい。今はなぜか自分が悪いとしか思えない。


「だって、私が専属侍女欲しいって言ったんだよ?私が留学にきたオリヴァーお兄ちゃんを好きになったからセシルはシーネスト国を滅ぼしたんだよ。これって全部私のせいじゃない?」

「い、いえそんなこと...全ては私が悪くて」

「そうだ、全てこの女のせいだ」

「ち、違、そうだけど、そうじゃなくて...あれ?私、何かおかしい」


 考えても考えても私が悪いとしか思えなくなる。自分でも言っていることがわからなくなってくる。わからずにいるからか瞳からは涙があふれでてくる。情緒不安定。きっと色んなことが次々起こりすぎて混乱しているだけだろう。


「少し、一人にさせて」


 そう言って二人から少し距離をとる。追いかけては来なかった。ただ、ふらふらと二人から離れる私を心配そうに見つめるだけだった。


 どれくらい歩いただろうか?振り返っても二人の姿は見えない。だいぶ歩いたのだろう。無心で歩いていたため、自分の気持ちはスッキリしないまま。でも、おかげで冷静になれた。


「少し、休もう」


 今日1日、本当に予測の斜め上を行っていた。常に頭はフル回転。一部、爆弾発言とかで思考停止はあったが。とりあえず、数回深呼吸を繰り返す。冷たい空気が頭の中をクリアにする。


「セシルが私を…そっか、ずっと好きだったんだね」


 彼女の気持ちに気づけていれば結果は変わったのだろうか?どのみち真実を知ってしまった以上、このまま平穏に終わるはずがない。もっと早くに知っていたら、話し合いとかできたかもしれない。でも、もう無理だ。


「どうしよう…」


 私は倒れるように地面に座り込んだ。






お久しぶりです。生きてます。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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