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前回に続きセシルの話です。
とある日、ひとつの知らせが我が家に飛び込んできた。
「レティア王女の専属侍女を募集するらしいです」
部屋で母と共に編み物をしていたときに使用人の一人が入ってきた。
「レティア王女の、ねぇ」
使用人が渡してくれた紙を母が手に取り、眺める。私は途中だった編み物を机に置き、母が持っている紙を覗きこんだ。
「応募条件...」
親族に犯罪を犯した者がいないこと、一定以上の税金を国に納めていること、等々。
「どうしたの、セシル?興味がある?」
「うん」
母の質問にコクりと頷くと、その日のうちに父に相談することになった。はじめ、私のお願いを聞くと難しそうな顔をしたが、好きなことをしなさいと許可をくれた。どうせ、このまま私が家にいても結婚相手を探すのが手間だろうし、このようにちゃっちゃか家から出てしまえば好きでもない人と政略結婚などといって無理矢理嫁ぐこともなくなるだろう。なんなら侍女になれればお金を稼ぐことができる。親孝行も十分にできるであろう。
「クロイツ家の恥にならないようにしっかりとやれよ」
「城にはきっといい男がたくさんいるはずよ!なんなら私に紹介しなさい」
兄と姉もなんの躊躇いもなく、私の選んだ道を認めてくれた。
「後は、三ヶ月後の試験に向けて頑張らなくちゃ」
せっかく自分の好きな人を間近で世話をするチャンスが回ってきたのだ。この機会を絶対に逃すまいと護身術やら料理やら政治の勉強やら...私は必死に頑張ってきた。おそらくかなりの数、応募が集まるだろう試験。合格者はたったの一人。絶対に落ちる訳にはいかなかった。
そしてついにその日はやってきた。
「これから試験を始める。まずは筆記試験。その後、面接となる。くれぐれも不審な行動はしないように」
城には私のようなまだ年が一桁であろう少女や、私のおばあちゃんかと思うほど年のいった方もいた。数はざっと100人ほど。身なりをみるに、どの人も貴族の次女、三女とかであろう。という私もクロイツ子爵家の次女、セシル・クロイツである。
筆記試験は難なく終わった。回りの人は難しそうに頭を抱えていたが、こちとら受験やらテストやらで暗記が多い世界で生きてきたのだ。これくらい余裕である。それに自分の好きな人と共に過ごすための勉強なのだ。そこらの金欲しさに働くような人とは違うのだ。
面接試験も私はあっさりと終わった。私と同い年ほどの子らは面接官からの圧迫感に耐えきれず泣き出す子もいれば、親に言われて仕方なくこんなことをやらされているのだと叫び出す子もいた。かといって齢四十、五十ほどの人だってやっぱり体力的にきついかもと投げ出す人が数人いた。
『まったくどいつもこいつもレティア様のことを考えられないような自己中心的、無能なやつらだ』心の中では愚痴まみれだ。しかし、侍女を目指しているのだ。これくらい顔に出さないくらい当然である。
それから数日後、クロイツ家に私の侍女試験合格の知らせが届いた。
いつも読んでくださりありがとうございます。
花粉症には厳しい季節になってきましたね...




