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 寝心地のよいベッドで寝返りをうつ。暖かい布団が私を優しく包み込んだ。『なかなか起きれない...』 かれこれ10分ほど布団の上でごろごろしてる。いや、私は悪くない。この寝心地のよいベッドが悪い。時計を見ると7時を少し過ぎた頃。朝のはずなのに空は薄暗い。今日の天気は曇りだろうか?私は大きく伸びをして、布団からでる。


「さっむ!」


 そういえばもうすぐ冬だろうか。いつもならセシルが部屋をあらかじめ温かくした状態で起こしてくれるのに、今は私を世話をしてくれる人は一人もいない。

 とりあえず、暖炉に火をつけ、着替えをする。身だしなみを整えると、私は朝食を食べに食堂へ向かった。


「おはよう、昨日はよく眠れた?」


 食堂に入るとちょうどルシアンも朝食の準備を終えた頃だった。


「おはようございます。昨日はとてもよく眠れました」


「それなら良かった」


 ルシアンと話していると、オリヴァー様が入ってくる。


「おはようございます。オリヴァー様」


「おはよう、オリヴァー」


「.....ん」


 さてはオリヴァー様、朝に弱いのでしょう。だって目がぱっちりと開いてないですし。『これはこれでとてもイケメンだけど』そして髪も少し乱れてる。少しかわいいと思ってしまった。なんだろう、これはギャップ萌えとか言うやつだろうか。


「さ、じゃあ食べようか」


「はい」


「「「いただきます」」」


 朝食もなかなかクオリティが高かった。今日はさすがにクマやウサギはいなかった。食べやすいけど、少し悲しくも思ってしまった。




「ごちそうさまでした」


「お粗末様でした」


 食べ終わると私は一度部屋に帰って、すぐに行ける用意をする。今日はセシルがいないので一人で支度をするが、今までどれだけセシルや他の侍女に頼って生活していたかがよくわかる。『一人で、着替えるのは大変だ』前世の私は遠慮がちな性格だったので、着替えを手伝いますなんて言われて手伝われていたら、軽く発狂してたかも知れない。それなのに、まぁよく他の人に着替えを手伝わせていたわ。これこそ悪役か?

 着替えに手間取りつつもなんとか行く準備を終えるとすでに8時50分。早めに用意をしておいて正解だった...。前世の感覚では10分前集合は当たり前だったため、私は帽子を持ち、急いで部屋から出た。


「すみません、お待たせしました」


 エントランスで、すでに二人とも待っていた。一体彼らは何分前集合をしているのだろうか。


「いいや、全然待ってないよ。むしろ、君こそ早いね。元王族だからもっと時間ぴったりか、少し遅れてくるかと思ったのに」


「居候させてもらってる身ですから」


「いいね、そういう謙虚な所。ずっと他の国の王族ってもっとわがままなものかと思ってた」


 うーん、地味にグサリとくる。私ら王族のことをそんなわがままばかりする人かと思っていただなんて。まぁ前世の私も王族とか貴族といったら金遣い荒くて、人を駒のように使って、わがままばっかりで、好き嫌い多くて...そんな人かと思ってた。まぁ実際、ゲームの中のレティアはそんなキャラでしたけどね。


「思った以上に、服があってたようで良かったよ。なんかこのワンピースを着ている子を見ると、()()()()ちゃんを思い出すね」


「...」


()()()()ちゃん?」


「ああ、いや、何でもない」


『ロゼッタ...どこかで聞いたことある名前だなぁ』


 そうこうしているうちに、馬車が来た。


「さぁ、行こう」


「ええ」


 私たちは馬車に乗り込み、城をあとにした。




 会話のきっかけを作るためにと、とりあえず何かしゃべってみる。


「あの、カーテンは開けてはダメですか?」


「眠いから、カーテンは開けないで欲しい」


 せっかく外の景色見て、『わぁすごい』みたいなことをやりたかったんですけど。


「でも、外も暗いですよ?」


「開けるなと言ったら、開けてはダメだ」


 怒られた。少しわがままを言ってしまったかも知れない。


「すみません」


「いや、こちらも少しきつく言ってしまった。すまない」


 せっかく馬車のなかでいろいろおしゃべりをしようかと思ったが、想像以上に空気が重苦しくなったので、とりあえず黙りこむ。どれくらい走っただろうか。二人が寝ている間にすこーしカーテンをめくって、外を見てみる。


「えっ」


 廃墟だった。ボロボロになった家がたくさん立ち並んでいた。これなら、外がかなり暗くても仕方がないかもしれない。だって、電気なんてどこの家にもついていないのだし。


『これを見られたくないから、カーテンを開けるなと言っていたのね』


 これ以上見るのも辛いので、私はカーテンをそっと閉じる。幸い、二人にはばれていないようだった。


 でもこの時はまだ知らなかった。ここが、あの悲惨な事故が起こったシーネスト国だったなんて。



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