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本日2話目の投稿です。
読む順番にはお気をつけください
いよいよ当日だと言うのに何故か、実感がわかない。それに少し嫌な予感もする。心の中に何かもやがある。
練習で使っていたレイピアを撫でながら過去の事を少し振り返る。思えばまだここに来てから数ヶ月しか経っていない。長いようで、短いような。
「楽しかったなぁ」
ふと目を閉じ、家族みたいな友達みたいな、仲間と過ごした充実した日々を振り返る。
「この戦いが終わったらまたもとの日常に戻るよね」
期待を込めてそう呟くと目を開き私はソファから立ち上がる。しかしどうも嫌な予感は消えてくれない。心なしかさらに嫌な予感が強くなっている気がする。
「一応、持ってっておくか」
引き出しからあるものを取り出す。前にオリヴァーお兄ちゃんから一応ともらっていたものだった。結局今日まで使わずに引き出しにずっとしまっていた。それをポケットに滑り込ませると、私は自分の部屋を後にした。
―――――――
「おはよう、レティアさん」
食堂にはトウマ君しかおらず、机の上には私が食べる用の朝食が用意してある。既にトウマ君は食べ終わっているようだ。
「2人はどこに行ったの?」
席に座り、朝食をとりながらトウマ君に聞いてみる。
「オリヴァーさんは朝会って、先に行ってるって。ルシアンさんは、オリヴァーさんいわく戦況を確認しにいったんだとか」
「そっか」
いつも通りの朝食を食べ終わるとほっと一息つく。
「そうだ、紅茶飲みますか?」
「え?」
「この前しっかりと習いましたし。もう大丈夫だと思いますよ」
席を立ち上がろうとした所で話しかけてくる。時間はまだ十分あるので、部屋に戻って作戦を練ろうとしていたが、ここで紅茶でも飲みながらゆっくり決めてもいいかもしれない。
「少しだけ貰おうかな?」
「わかりました、直ぐに淹れてきますね」
彼は笑顔で厨房の方に向かって行く。一人きりになった食堂で少し考えてみる。私とトウマ君はリックの連れた部下を倒していく。ボスのリックはオリヴァーお兄ちゃんと一対一で戦うと、そう決めていた。私とトウマ君は部下をある程度蹴散らせたら、オリヴァーお兄ちゃんの援護をするつもりだ。彼が一体、いくらの部下を連れてくるかが、今の私の問題である。
どうしようか考えていると、彼が淹れたての紅茶を運んでくる。
「さ、どうぞ」
「ありがとう」
とてもこの間まで渋すぎる紅茶をいれた人とは思わないほどいい香りがする。香りを体いっぱいに吸い込むと少し落ち着く気がした。しかし何故か飲む気が起こらない。この間までの紅茶がひどすぎたからだろうか。
「?飲まないんですか。味はルシアンさんに大丈夫と言われたんで本当に大丈夫だと思うんですけど...」
不安そうに私の顔を見てくる。しかし、どうもいつもと違う。こういう勘は好く当たる。女の勘だからだろうか。慎重にいくべきだ。だから私は少し嘘をついてみた。
「ううん。何でもない。香りもいいしこの間までの紅茶とは違うなって」
「良かった。さぁどうぞ」
「それよりもトウマ君の両親も今頃元気にしてるかな?私も早く家族に会いたいな」
一瞬、彼の顔がひきつったような気がした。が、直ぐにもとの顔に戻り、
「そうですね。僕の両親も弟も元気にしてると思います。レティアさんのご家族もきっと無事だと思いますよ」
フニャッと笑って言うが、もう嫌な予感な正体はわかった気がした。だから
ガチャン
「あら、手が滑っちゃった」
「大丈夫ですか?」
私は何が入っているかわからない紅茶をわざとこぼした。
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