4
「ずいぶんと遅かったな」
「すみません。どこにあるかわからずに迷ってました」
「ごめんね~、教えるのすっかり忘れてた」
城の中をいろいろ探索する事およそ10分。正直、この城のことを甘く見てた。広すぎる。私のもといたサヴィニアの城と広さはさほど変わらない気がする。
「それより、何故オリヴァー様がいるのですか?」
「いたら悪かったか?」
「悪くありません。変なこと言ってすみませんでした」
「いちいち謝る必要はない。とりあえず座れ」
そう言われて、椅子に腰かけるがどうもオリヴァー様がいるだけで周りの空気がなんか、こう、暗くなる感じがする。
「あ、そうそうレシピだよね。これ、あげるよ」
「!!!」
渡されたのは少しぶ厚めのノートだった。ペラペラとめくると材料、調理方法はもちろん、栄養素や綺麗な盛り付けの仕方まで事細かに丁寧にかかれていた。
「こんな...受けとれません」
「いや、いいよ。明日から料理係、君になるんだし」
「それでも...」
「じゃあ、代わりに君が知ってるレシピ、教えてよ。それでおあいこ。いいでしょ?」
「わかりました。そういうことなら」
「明日からの料理、期待しとくね」
「はい」
あんなに豪華な料理を作った人に期待してると言われたら緊張する。もし、私の作る料理がショボくて追い出されたらどうしよう。今から断ろうにも、こんなレシピ本もらっといて何言っとるんだボケ!と怒られてしまうだろう。怒りはしないけど、私に対して嫌な感情がわくだろう。
「そういえば、食材はどこで買えますか?」
大事なことを聞くの忘れていた。このままじゃ明日の夕食、何もなしになるところだった。それか城でネズミでも捕まえるか。それは私が食べられない。そもそも捕まえられない、いや、見つからないだろう。
「毎日、朝の十時に商人が来る。そのときに買え。金は私が後でまとめて払うから気にするな」
「そういえば、思ったんですけど...」
「何がだ?」
「お金ってどうやって稼いでるんですか?」
魔王だから、どこぞの貴族からでもかっさらってるかと思ったが多分、この人はそんなことするような人じゃないだろう。
いや、してたら怖い。
「あー、それ、稼いでるの僕なんだよね」
「そうなんですね。『大体予想はつきましたけど...』どこで働いているんですか?」
「ちょうど君がもといたサヴィニア国のレジャータ商会の経理として働いてまーす」
「レジャータ商会の!!!」
「知ってるでしょ」
「ええ。私も昔、お世話になりました」
「だよね。結構、貴族の人向けのものだからね」
知らなかった。まさかルシアンがサヴィニア国で働いているだなんて。それもサヴィニアの王族も御用達のレジャータ商会で働いていただなんて。もしかして、昔一度会ってたり...。
「明日も仕事あるんだよね」
「頑張ってください」
「ううっ。そうだ!明日、一緒に行こうよ」
「ほぇっ!?」
うん、変な声でた...。
「だって服とか全然ないだろうし。いろいろ必要なものあるでしょう。だから」
「よろしいのでしょうか?」
「全然大丈夫。ね、オリヴァー?」
「わかった。では私も一緒に行こう」
「え、オリヴァーは誘ってない」
「なんか言ったか?」
「いいや、何も言ってません」
「次、下手なこと言ったら首と胴体を引きちぎってやるからな」
ちょちょ、怖い怖い。首と胴体引きちぎるって...。でも言われたルシアンはヘラヘラと笑っている。大丈夫なのだろうか。少し不安になるがルシアンからしてみればいつもの冗談みたいなものだろう。
「ルシアン。明日のために朝、馬車を用意しとけ」
「へいへい、わかりましたよ」
「ではレティア。そういうことでいいな?」
「わかりました」
「あと、明日、必ず帽子をかぶれ。そのプラチナブロンドの髪では目立ってしまうからな」
このプラチナブロンド色の髪では王族だと、一目でばれるだろう。それを言ったらオリヴァー様の黒髪も相当珍しいと思うが。まぁそこは魔王だ。なんとかするだろう。
「では明日、9時にここを出発だ」
「え?食材は...」
「町で買えばよいだろう」
「待って、僕が誘ったはずなのに何で二人でそんな町デートみたいなことしようとしてるの?」
「仕事があるんだろう。お前は仕事優先だ」
「ひどい!最低!魔王のバーカ」
「さ、今日はもう疲れただろう。ゆっくり寝たまえ」
「はぁ、わかりました」
「ではおやすみ、レティア」
そういうと転移魔法でフッと部屋まで転移させられた。相変わらず魔法はすごい。部屋につくと緊張がスッとほぐれる。すると眠気が少しずつやってくる。『今日はいろいろありすぎた...』着替えてベッドに倒れると私はそのまま眠ってしまった。
※※※
「ひどいよ、オリヴァー。僕を差し置いて二人でデートだなんて。」
「知らん。それよりあれはどうなったんだ?」
オリヴァーがふと真面目な顔で話し出す。
「さあね。僕にも詳しいことはよくわからない。明日、また探りをいれてみるよ」
「頼んだぞ」
「へいへい」
「私はもう寝る。お前も早く寝ろ」
「わかったよ。おやすみ」
「ああ」
そう言ってフッと消えてしまう。
「さーってと。どう対処するかなぁ」
考えつつも、部屋を片付けると僕も自分の部屋に帰ることにした。
ブックマークなどありがとうございます。
これからも更新頑張りますので、よろしくお願いします。