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あれから、外で立ち話もなんなので私達は城へと帰ったわけですが...。いかんせん、先程の事で少々空気が重いです。トウマのキラキラした好奇心のある瞳。オリヴァーお兄ちゃんは嫉妬、怒りが混ざった瞳。対称的な二つの瞳が私のことを見ています。
「え、えっとまずはなんで抱きついてきたのか聞いてもいい?別に抱きつかなくても良かったんじゃ...」
「すみません、嬉しくって」
そう言ってにこりと笑う。か、可愛い...。トウマってこんな可愛いキャラだっけ?ああ、ふわりとした可愛い笑顔、尊い。ルチアみたい。
まぁ、こんなことを考えてるだろうと察したオリヴァーお兄ちゃんは隣からめっさ睨んできてますが。オリヴァーお兄ちゃんよ、私は笑顔が尊い方が好きだ。睨む人は好きにはなれないよ。と言っても、もう彼から逃げない、逃げられないことを彼が一番わかっているでしょうが。
「あ、改めまして僕は日本という場所から来た坂本斗真です。セシルさんからお二人のことは聞いております。どうぞよろしくお願いします」
「...」
「よ、よろしく...?」
せっかく彼が自己紹介してくれたのに、オリヴァーお兄ちゃんは無口のままです。返さないわけにもいかないので返しましたけど...これ、セーフですよね?さっきの質問にしても、返しにしてもこれくらいは許してくらますよね...?
「で、すみません。余り詳しいことはセシルさんからは聞けてなくて...。レティアさんから聞くように言われてて...。僕はあの、ここで何をすればいいのでしょうか?」
「き、聞いてないの?」
「詳しいことは二人が知ってるから、二人から聞いた方が早いとセシルさんが」
...。時間なかったのかなぁ?確かに色々注文をつけられたことは手紙に書いたはずなんだけどなぁ。まぁ、セシルにちゃんとしたこと教えてないから。うん。誰が悪いわけでもないけど...。どう説明しよう。
「えーっと、トウマさんにはあることを手伝って貰いたくて」
「はい、運動部だったんで力には自信があります」
「あ、陸上部でしたよね」
「え?なんで知って...」
「私はセシルの主人ですよ」
「そ、そうでしたよね...?」
あ、危ない所だった。うっかり、ついぽろっと言ってしまった。でも、大丈夫大丈夫。怪しまれてない...はず。
「そ、それで何を手伝えば...」
「...」
何を?何をだろう。私もよくわかんない。だって呼ばれたのに、『あ、やっぱり君の助けなんていらない』なんて言われたらショックだろうし、どうなるかわからない。助けを求めようかとちらりとオリヴァーお兄ちゃんの方を向くが無言。こっちを見てくれもしない。いや、好きな人が困ってるんだよ!?助けてよ!!!
「て、敵を倒す...的な?」
「スライムとかですか」
「う、うん。あ、この世界ではね10年に一度魔物の大群が攻めてくるんだけど、今年そろそろ来そうで、それの協力にと...」
まぁ、がっっっつり嘘ですけど。
「大変だ!僕で良ければ何でもします」
「ありがとうございます」
優しいねぇ。こんな嘘も信じてくれるなんて。素直でいい奴じゃないか。なんでしゃべっちゃダメなんだろう。少しくらいおしゃべりしたい。
「でもいつ来るかわからないので、それまではうちでゆっくりしていってください」
「ありがとうございます」
トウマは笑顔で返す。かわいい。ゲームでは勇ましい感じだったけどこれはこれであり。尊い。推したい。
「さぁ、そろそろお開きにしましょう。ルシアン、彼を部屋に案内して」
「了解しました」
扉の外に控えていたルシアンに彼の案内を頼み、ようやく二人きりになったところで一息つく。
「つ、疲れた~」
「お疲れ様」
「なんだ、喋れるんじゃん」
「いつ喋れなくなったなんて言った?」
「さっき。目で語ったのに。少しぐらいフォローしてよ。しゃべるなって約束破るよ」
まぁ、もうすでに破ってる気もするけど。これは仕方ない。不可抗力だ。
「とりあえず、レティアも一旦休みな」
「今日の練習は?」
「一日くらいサボってもいいだろう」
それ、コーチが言うことですか?なんて思ってると自分の部屋に飛ばされた。相変わらずのチート。そう思いながらもソファに軽く横たわったら心地よい眠気がくる。よっぽど緊張してたのだろうか?いつの間にか私は眠ってしまっていた。
いつも読んでくださりありがとうございます。
外出してない、家で筋トレしてない。体力落ちてそうだなと感じています。




