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 私の前で照れるなんて、記憶の中では初めてなような気がする…。でも、これはチャンスだ。他のことに気をとられている間に私のペースに持ち込もうとする。


「照れ方かわいいね、女の子みたい」(嘲笑)


 本職である、悪役のような意地悪な笑みを浮かべて私は言った。もちろん後ろに(嘲笑)も、もちろんつけて。


 オリヴァーお兄ちゃんをからかって悪いとは思っているし、もっと他に言うことはあったはずだが、口から出てきたのはこと言葉だった。


「私は女の子じゃない」

「女の子みたい、だから女の子とは言ってないよ」

「男は女の子みたいにと、女の子に例えられても嬉しくない」

「何?それって要は女の子は弱くてバカだからそんなのに例えられたくないと」

「違う、そうとは言っていない」

「じゃあ何?」


 少しきつい言い方になってしまったのか、オリヴァーお兄ちゃんは少しシュンとして黙ってしまった。取り返しがつかなくなってる気がする。本当は彼をここまで困らせたいわけではなかったんだが…。でも、もうあとには引けない。どうせこれからも一緒に暮らすことになるなら今ここで、少し意地悪になってもいいような気がしてきた。


「女の子を弱くてバカみたいに思ってのね。それって私も暗に役にたたないといってるのね、なんかひどいわ」

「...」


 ごめん。

 本当にごめん。

 言い過ぎた。


 でも、どうしよう。でも、今更後に引けない感がする。

 私がわちゃわちゃ頭の中で不安になっていると、クスクスっという笑い声が聞こえた。


「オリヴァー...お兄ちゃん?」


 何故か彼が私を見て笑っている。もしかして、頭の中で考えてるつもりで顔におもいっきり出ていたとか...。


「本当にこんなことで私が傷つくと思ったのか?」

「え?」

「別にレティアにあれくらい言われても何てことないさ」

「本当?本当の、本当に?」

「本当。大丈夫だよ」

「よ、よかった。ごめんね。言い過ぎて」


 オリヴァーお兄ちゃんは怒ってはいなかったようで、とりあえず一安心する。もし、本当に傷つけて、もう嫌い、出ていけと言われたら、考えただけでも恐ろしい。もしかしたら自殺でもしたかもしれない。


「そもそもレティアは私があれくらい言われたくらいで、傷つくと思ったの?そして君を嫌いになると」

「思った」


 恥ずかしいのでうつむきながら呟くようにそう言った。本当に、傷ついた、傷つかなかったに関係なく、もし嫌われたらどうしようというのが一番不安だったから。だから、嫌われてないと知って私は少し安堵した。


「とりあえず、よかった」


 心の底から安堵して、気づけばオリヴァーお兄ちゃんの胸元に顔を埋めてにぎゅっと抱きついていた。はっとしたときはもうすでに抱きついていて、今更離れられない。言葉では表せないような幸せな気持ちになっていく。いい香りもするし。


「でも、君から私の方に来てくれてよかったよ」

「...???」


 不思議に思って顔を上げると意地悪な笑みを浮かべたオリヴァーお兄ちゃんと目が合う。さっきとは立場が逆になった気が…


「え?えっ何?」


 離れようと思って彼を押そうとしたが、離れられない。気づいた時すでに遅し。私はオリヴァーお兄ちゃんにきつく抱き締められていた。端から見ればラブラブの人に見えるだろうが、私たちの間に流れてるのはそんな優しい空気ではない。


「君から来てくれたお陰で君を捕まえる手間が省けてよかったよ」

「捕まえるって...」

「さぁ、セシルから送られてきた手紙を私に見せてみな。そして、トウマって人が誰か教えてもらおうか。君がずらした話題をもとに戻さないとね」


 追い討ちでニッコリと、満面の怖い笑みで言われる。しまった。完全にオリヴァーお兄ちゃんの策にはまっていた。






いつも読んでくださりありがとうございます。

頑張って更新ペースあげていきたいと思います!

新生活など慣れないことばかりでしょうが、皆様体調にはお気をつけください。

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