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 あれからオリヴァーお兄ちゃんに連れてこられたのは、さほど城から離れていない丘の上。特に何もなし。あ、やっぱりここで精神と時の部屋みたいなのを魔法で作り出したり....。遠い目をして、心の中で苦笑いをすることしかできない。今日は空がきれいですねー(棒)いや、本当にそうだった場合、マジで笑えない。ただでさえ自分が強くなることに恐怖を覚えていると言うのに。オリヴァーお兄ちゃんは大丈夫だと思うが、私が鍛えすぎてゴリラになっても嫌いになったりしないだろうか?


「何か勘違いでもしてるのか?」

「え?」

「遠い目をしている」

「ああ、オリヴァー何も言わなかったんだね。多分変な修行でもつけられるんじゃないかって思ってるんじゃない?」

「そ、そうなのか?」


 彼は私の顔を覗きこんでくる。ええ、ルシアンさん正解です。何故わかったのか?


「精神と時の部屋みたいな所に突っ込まれるかと思ってました」

「なんだ?それ?」

「国民的漫画ドラ◯ンボールのやつです」

「サヴィニアで流行っているのか?」

「いいえ、ここから遠いどこぞの星です」

「.....」

「忘れてください」


 不振なことを言うべきではない。オリヴァーお兄ちゃんは特に何も突っ込んでこないかも知れないけど、ルシアンさんにめっちゃ怪しまれそう。今度から言うのはやめよう。


『いい漫画なのになぁ...』(ぼそっ)


「え、えっとそれでここには何があるんですか?」


 気を取り直して質問をする。一旦精神と時の部屋は忘れよう。


「ここは....」

「ここは?」


 オリヴァーお兄ちゃんが急に口ごもる。やっぱり精神ととk...ブルブル考えない考えない。


 しばらく沈黙が流れる。ふわりと風が私たちの間に吹く。数分黙ったのち、重々しく口を開いた。


「ここに、亡くなった国民、私の家族が眠っている」

「国民と家族って...」


『眠っている』そう言われるとさすがにわかる。そうか、お墓参りみたいなものか。精神と時の部屋じゃなくてよかった...。


 オリヴァーお兄ちゃんは小さな石がおいてある場所にいくと、懐から小さな茶色い粒をいくつか出し、土に埋めた。


「それは...何?」

「バーベナの種だ」

「バーベナ?」


 バーベナ、聞いたことはあるような気がするがどんな花だったか?考えていると後ろからルシアンが説明をしてくれた。


「ロゼッタちゃんが好きだった花なんだ。そして花言葉は...」

「家族愛」

「家族...愛」


 自分の頼れる国民、家族、すべてを一瞬にして失った悲しみはどれ程のものか。想像もつかない。


「父上、母上、ロゼッタ、そしてみんな。私たちのことを見守っていてください」


 オリヴァーお兄ちゃんはしゃがみ、手をあわせて祈る。私も真似をする。前世ではお墓参りはこうやってしたなぁ。何か私がお供えできそうなものはあるか?そう考えようとし、ふと腕をさわった。


『ああ、これだ』


 サヴィニアで一時、流行していた。願いが叶うというブレスレット。本当かどうかわからないが、ルチアがお揃いにしようと言って私の分まで買ったのだった。まだブレスレットに願いをこめたことなんてなかった(叶うかわからないけど)がとりあえずブレスレットに祈りを捧げ、石の前におく。


「それは..」

「サヴィニアで流行してたブレスレット。何でも願いが叶うんだって。信じられないけどね」

「いいのか、そんな大切そうな物」

「大丈夫、また返してもらうつもりだから」

「返して...もらう?」

「そう、あのリックをぶっ飛ばしてからまた取りに帰ってくるから」


 ガッツポーズをして見せる。そうするとオリヴァーお兄ちゃんはフフフと笑いだした。


「え?何?」

「いいや、何でもない」

「何それぇ」

「きっと...願いは叶うだろうな」


 そう言うと彼はニコリと笑った。久しぶりに見た。オリヴァーお兄ちゃんの満面の笑み。先程までお墓参りみたいな重苦しいものだったのが一変。空気が少し明るくなる。


 そうだ。絶対にリックを倒してここに帰ってこよう。そう決意が芽生え、しばらくして私たちは城へと帰っていった。





読んでくださりありがとうございます。

いつもいつも更新遅くて申し訳ございません。

まだまだ寒い日が続きそうですね、風邪も流行っているので皆様もお気をつけください。

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